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ちょうちんわん公がゆく  作者: イズクラジエイ
第三章 星の海と炎の海
20/63

#019 『巨大イカは語る』



 思い出した。


 海水につかって冷えたせいか頭がハッキリしてきたよ。


 今の俺の状況は「犬になって異世界で生き残りを賭けた冒険サバイバル」の最中だったんだ。


 エクレアもそうだ、見た感じ泣いている兎型の小動物だが、トラベラーの話では「魔獣にされた女の子」のはずだ。


 今はその鳴き声すらせず身を潜めているようだが、それでいい。



「はわーー! わんこびしょぬれー。おもしろいでしょうよー!」



(おもしろくないよ? 笑う所じゃないよここ)



 相変わらずの天然っぷりを発揮しているコスプレみたいな格好の〈ポラリスの魔女〉。


 俺のこの状態を何とかする鍵を握っていそうだが、残念ながらまともに話が通じる系の人物ではない。


 俺たち〈高位の魔獣〉と融合された【造られし禁断の魔獣(フォビドゥン)】だか何だか知らないが、このバグってる世界ではちょっと変わった犬と兎、程度の生き物だ。


 周りはもっと凶悪な化け物がうようよしているという事実に、あのバウムが何をもって俺たちを〈高位〉としたのかさっぱり分からない。


 動物の本能からすれば、隣にクラーケン?大王イカ?この世界でどう呼ばれているか知らないが、巨大な赤黒いイカみたいな生物に睨まれ、海水でびしょびしょの俺はチート魔法少女に笑われている、そんな状況なのだ。



「シューーッ」



 イカ特有の10本もあるうねる触手が動き出した。


 その丸い吸盤ひとつひとつが、俺の体とさして変わらないサイズがある。


 もしも、あれに吸い付かれたら逃げられそうもない。


 広い浜辺に力なく横たわる本体だけで30メートル級の巨大イカが、ロボットが再起動するかのように薄い軟体の体の中が光り、立ち上がろうとしている。


 しかも、その無駄に巨大な目はしっかりとこちらを見つめていた。



(まーずいなぁこれは)



 イカの眼は人間と同じ構造をしている。


 さっき見たカニとかは複眼で虫とかと同じ広範囲を同時に認識する能力に長けているが、イカは違う。


 レンズでピントを合わせ、対象物を正確に認識し捉えられるのだ。


 地球のイカと同じ構造なら心臓が3つあるはずだ。


 主食は小魚やさっきのカニ等の甲殻類だが、犬はどうだろう?


 あのサイズなら他の海の魚と変わらないか。



(これはイカん。食べられるわ……)



 イカは〈食べるもの〉だとばかり思っていたが、今は完全に立場が逆転してしまっていた――









 ★ ★ ★ ★ ★










 巨大イカの眼に睨まれ、疲労でここから逃げきる体力も残っておらず、萎縮しきっていた俺だったが、ついにイカの触手がこの体へと伸びてくる。



(くるなーーーー!)



 その時だった。



「ワタシ ノ ナハ ジャーベット」



(なんだ?)



「オマエ アングラー ト オナジチカラ カンジル」



(何だ何だ!? こいつ喋っているぞ。イカのくせに知能があるのか!?)



「コタエロ ソノチョウチン ハ シンカイノテイオウ ノ モノダ ナニガアッタ」



(何があった? それは俺が知りたいつーの)



 巨大イカは俺に向けて片言ではあるが、亡霊やチート魔法少女より、よっぽど知性的で冷静に俺に語りかける。



「シンカイノテイオウ ジュミョウ イナクナッタ」



 どうやら、いきなり食べられるという事態ではなさそうだが、俺は下手に返事をせず様子を見たほうが得策と考えた。



「シンカイノテイオウ アングラー ハ セカイノ キンコウ ヲ タモツソンザイ」



(こいつの言っている奴は多分あれだ、俺と融合した化け物の事を言っているようだ)



「アングラー シンダ オマエ ソレ ウケツイダ」



(何かわからんが、コイツも俺の何かを知っているようだ)



「ジャーベット アングラー ト ナカマ ダッタ……」







 どうもこの自らを「ジャーベット」と名乗る巨大イカの魔獣は俺と融合したアンコウとお仲間さんだったようだ。


 あのバウムから聞いていた深海の帝王インペリアル・アングラーと関係があったとみて間違いない。


 それが、このインチキ魔法少女に呼び寄せられてここへ飛ばされたという訳か。


 なんという偶然。


 いや、こうなるともう、偶然じゃないのかも?


 〈トラベラ-〉がココへ来たのも〈ポラリスの魔女〉が来たのも理由と因果性があったんじゃ……


 そうだとすると〈ジャーベット〉とかいう魔獣がココへ現れたのも意味があるんじゃないか。


 変だ。


 何かが、おかしい気がする。





「はわーー! 何こいつーきもちわるいでしょうよー! どっかいけー」



(この娘、ひどい言いようだ。自分の魔法で呼び寄せておいてそれは無いんじゃ……)



「ナンダ コノ コムスメ」



「はわ! なんか言ってるきもいきもいでしょうよー! ヤバイ。ヤババー」



「ムスメ ソノ ヒスイ ノ メ マサカ……」



(新緑の目? そういえばこいつの目は翡翠色(ヒスイ)の綺麗な透き通った目をしている。カラコンじゃないのか)



「はわ! ティピカに寄るなー! あっち行けって言ってるでしょうよー!」



「ソノ マリョク ポラリスノマジョ カ ドウリデ……」



 はやりこいつがトラベラーの言っていいた〈ポラリスの魔女〉で間違いないようだ。




「はわーー! アポーーーツッ!」



 そういってティピカとか言う魔女は再びその強大な魔法を行使して、巨大イカを一瞬で何処か光の彼方へ消し飛ばしたのであった。



(無茶苦茶やこいつ……好き放題しやがる)




「ふーすっきりした。はわ! こんな事してる場合じゃないでしょうよ! こう見えてもティピカ忙しいでしょうよー。ヤバイヤバイ、ヤババー!」



 そう言って〈ポラリスの魔女〉自身もその転送魔法アポーツでどこかへと消えていった――




【ジャーベット】

ティピカのアポーツで呼び寄せられた30m級の巨大イカ型魔獣。

赤黒い体躯が特徴でイカ特有の吸盤を備えた10本の触手を持つ。

片言だが知能を持ち意思疎通が可能。

なにかレイトの持つ力の秘密を知っていそうだが謎につつまれている。


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感想も待ってます、上みたいに登場人物、生物?紹介入れようと思うんだけどいる?

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