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ちょうちんわん公がゆく  作者: イズクラジエイ
第三章 星の海と炎の海
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#014 『浜辺の亡霊 前編』


 暗くなってきた為、やむを得ない選択だが野宿をしないといけない。


 こんな何もない浜辺で睡眠をとって大丈夫なのだろうか?


 さっきのサメみたいな猛獣の類が何処かにいるかもしれないというのに……




「トラベラー。あんたはこれからどうするんだ?」


「いやはや、私のことはいいのだよ。レイト君、キミこそこれからどうするんだね?」




 そう、トラベラーに聞かれて一瞬考えたが、いくつか案は決まっていた。



「このエクレアが向かっている方へ行こうと思う、ちょうどあの飛行船が堕ちたほうの方角だからな」


「いやはや、そうか今日は〈リーズンフォーゲル〉が堕ちた日なのだな」



「リーズンフォーゲル?」


 俺はその単語がわからずトラベラーにまた問う。



「いやはや、〈リーズンフォーゲル〉とはだな。ロブスタ軍が誇る〈トランスギア飛行船〉だ。〈トランスギア〉は~……なんと言ったかな。確かキミの世界でわかる表現だと〈魔力で動く機械〉と解釈したおったな」


「魔力で動く機械だって!?」



(どうりで、プロペラも熱気球も無しで飛んでられるわけだ)


 どうやら、この世界の科学文明は俺の知る物とは違っていた。


 動力源からして既に俺の知らない未知のエネルギーって事だ。



「いやはや、レイト君達は星海の方から来たのだな。やはり歴史は少しずつ変わってしまっているようだ。〈リーズンフォーゲル〉が堕ちたという事は、もうあまり時間がないという事だが、いやはや……」


「あれには俺と同じ魔獣フォビドゥンが乗っていんだ。確かめないといけない事がある」



 俺は同類の梟の魔獣バウムの安否が気になっていた。


 それにバウムにはまだ聞きたいことが沢山あるんだ。


 あんな惨事だったけど、彼の持つ情報は必要不可欠。


 生きていてもらわないと困るんだ……








「ピエー!」


(エクレア!? 今度は何だ!?)



 またカニの襲撃かと思ったが、どうやら違う。


 暗くなってきて今まで気づかなかったが、浜辺に居たカニも、遠くにちらほらと見えていた鳥たちも全て居なくなっていた。



(何か様子がおかしいぞ、しかし他に何か近くに居るような匂いはしない……何だ?)



「ピエェーピエェー!」



 さっきからエクレアが何かを訴えている。


 何かを感じ取っているようだが……?




「いやはや、レイト君。まずいぞ」


「何がまずいんだ?」



「いやはや、アイボリーゴーストだよ。既に囲まれている」


「アイボリーゴースト? なんだよそれ」



 そのフレーズからして嫌な予感しかしない。



「アイボリーゴーストは死んだ人間の魂の残骸なのだよ。彼らは月明かりのある水場や夜の篝火に集まる。浜辺では珍しくもない」


「まじかよ。ゴーストってこの世界そんなにメジャーなのかよ」



 それを聞いてなぜ集まってきたのかは察しがついた。



「このちょうちんのせいか!」


「いやはや、そうだろうな……」


「ピエーーー!」



 まただ、サメの次は幽霊に囲まれるってか。


 職業柄いろんな事を調べてきたが、〈オカルト〉は専門外である。


 そもそも存在を信じてすらいなかったから。


 UFOは居るだろう、宇宙人もいる。


 魔法は――解釈の違いって事もあるが……



 過去、SF作家アーサー・C・クラークはこう言った。


   『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない』と。



 俺も、それはそうだと思う。


 人間の知識の不足は簡単に誤解を招く。


 俺にも、うっすらと見えてきた。


 淡く黄色がかった薄い煙のようなモヤが人型に固まって移動している。


 あれだ。


 どっかで見た稲川淳二の番組のイメージ映像。


 完全に幽霊そのものだ。


 問題は目の前のこいつら〈アイボリーゴースト〉が俺たち害をなすのか?って事だ。



「どうすればいい? トラベラーこいつら、危ないのか」


「いやはや、私もこんなに囲まれたのは初めてなのだよ。噂では、彼らアイボリーゴーストは精気を奪うとも聞く」


「最悪じゃねーかよ」



 アイボリーゴーストは俺たち、いや〈俺の光るちょうちん〉目掛けてにじり寄ってくる。



(つーか、このちょうちん光消せないのかよ)


 頑張ってちょうちんに意識を集中してみたが、思い通りにいかない。



 もしも、丸腰で自爆魔法しか使えないキャラが居たとする。


 その魔法が勝手に発動して道中いきなりピンチになるゲームがあったとしたらどうだ?


 そうだ〈クソゲー〉だ。


 俺はまごうことなきクソゲーを今、強制的にやらされている。


 諦めたらもちろん、ゲームオーバーだ。


 俺の人生がな。




 サメとの死闘に続いてヤケクソモード突入だ。


 このクソゲー、実況はちょうちんわん公ことレイトさんがお送りします。



 そのパーティは犬、ウサギ、じじいのスリーマンセルだ!


 敵との遭遇は幽霊の大群。


 数は分かりません。


 最初のターン!



「ピエーーーーー!」



 素早さに定評のあるウサギのエクレアさん全力での逃走。


 しかし、これは想定内。


 安定の泣き虫ぶり。



 相手方のゴーストはゆっくりとこちらへ近づき、クリーム色の煙の塊から何やら声を発している。


(ぶつぶつ……ぶつぶつ……)


 さっぱり聞き取れない。



 ここでレイトさんの得意技、【分析アナライズ】!


 困惑しつつも相手の様子をうかがっている。


 さぁ、面白くなってまいりました!




「いやはや、レイト君。こんな状況で悪いのだが……」


(ん、なんだ?)



 脳内ヤケクソになっている俺に対し、トラベラーは何かを伝えたがっている。



「いやはや、私はここで時間ぎれのようだ。すまない。本当にすまな――」



 最後まで喋ること無く、唐突にトラベラーはスッと消えてしまった。


 まさしく幽霊のように。


【次回予告】


俺たちはタイムトラベラーから新たな情報を得るも、暗闇が訪れた浜辺で幽霊に囲まれてしまう。


「次回! ちょうちんわん公がゆく 第15話『浜辺の亡霊 中編』 今度も甘くないぜ」

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