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第33話Side北風真美

「んッん!ま〜みお母さん!こっちみてクマ!」


 ?荒木くんの方を向くとカミラを顔のところまで上げて声を高くして喋っている。本当にカミラが喋っているみたいだ。


「辛いことがあるなら、友達と共有するクマ!お母さんにはそういう友達がいるクマ!その友達ならきっと負担に思わず共有してくれるクマ!後悔していることがあるなら、誰かに助けて貰ってそれに立ち向かえばいいクマ!お母さんが教えてくれたことクマ!」


「何…してるの…荒木くん。」


「荒木神楽じゃない。カミラだ。」


 ふふっ。荒木くんは私を励まそうとしてくれてるのかな?


「なぁ、北風。お前も後悔…してることあるんだろ?ならさ、それを逃げずに向き合ってみないか?俺もひとりじゃ無理だった。今度は俺が北風を支えてやるから。」


 支えてくれるの?こんな私と荒木くんが一緒にいていいのかなぁ?


「それに、ここ誰もいないし俺も聞かなかったことにしてやるからさ?とりあえず我慢するのはやめたらどうだ?ちょっとは気が楽になると思うけど?」


 我慢しなくていいの?この恋を諦めなくていいのかなぁ?かーくんを好きのままで…、一緒にいていいのかな?


「あらぎぐん。いいの?」


「いいんじゃねぇの?張り詰めた状態でいたって辛いだけだ。俺が慰めてやるよ。ほら、今日だけとはいえ俺は北風の彼氏だし。」


「う…う…うわぁぁーん!!


「あ〜、ほら、こっちこい。」


 荒木くんに言われるまま私は荒木くんの胸に顔を埋めた。


「…頑張ったな。偉いぞ、北風。」


「…私、頑張ったかなぁ?」


 もっと頑張ったらミクとも仲直り出来たんじゃないの?


「あぁ。頑張った。俺が保証する。」


 そのまま泣いてしまった。荒木くんは文化祭の時と同じく嫌な顔もせずに私のそばにいてくれた。


「もう…大丈夫…。」


「そうか。」


 私はやっぱり荒木くんが好きだ。絶対に諦めない。諦めたくない。荒木くんが拒絶したらちょっと考えるけど…。それまでは頑張ってこの恋を成就できるようにしたい。


「んまぁ、あれだ。俺は北風を変えた一因になってるのは間違いないしさ、その責任が俺にもあるわけで。だからちょっとぐらいなら悩みを聞いてやるぞ?」


「ありがとう。じゃあちょっと聞いてもらえる?」


「あぁ。」


「あの子ね、ミクって言うんだけどね。私とは小学校の頃から仲良しだったの。それでさ?よく放課後に遊んだりしてて…。それで中学に上がったの。」


 あの頃は2人でよく遊んでて…。楽しかったなぁ。


「そしたらね?たまたまその子も含めたグループで恋バナでもしててさ?ミクが好きな人言って…。私はそれを叶えてあげたかったの。だから私はその男の子とミクの仲を取り持とうとしたんだよ。そしたら結果はミクの言った通りになっちゃった…。そこからミクは私を虐めるようになっちゃったの。」


「それが…お前の後悔か?」


「そうだね。だから怖くなって逃げて高校では仮面を作ったんだ。荒木くんのものに比べたら大したことないけどね。」


本当に小さな悩みだ。私は弱いんだと思う。


「……悩みなんて人によって大きさが違うだろ。俺からしたら北風のその悩みは俺よりでかいと思うけど?前にも言ったがあのヒステリック女は北風のことわかってねぇよ。多分北風も言いあった方が良かった……んだと思う。それが伝わるかどうかは知らないけど。まぁ、ちょっとは伝わると思う。」


「それでも……変わらなかった……と思う。」


 今日だけじゃなくて中学の時も何回も伝えた。けれど何も変わらなかった。時間が経った今でも同じだった。


「まぁ、それはそうだろう。俺と姉ちゃんだって家族なのにわからなかった。」


「相手を完全に理解する……なんて多分…というか絶対に無理だ。それがたとえ家族であっても…親しい親友でも、恋人でも。でも……何パーセントかぐらいならできる…と思う。それがちょっとずつ増えていって。ちょっとでも相手のことを理解していたら相手のことを思いやれる、配慮できるようになる……んだと思う。」


「ミスすることは人間誰にもある事だと思う。けど大事なのはそのミスから学んで同じことを繰り返さないことなんだと思う。」


「……いいこと言うね。」


「北風が教えてくれたんだろ?」


「えっ?」


 私はそんなことを言った覚えはない。そもそも私は荒木くんから貰うことはあってもあまり…何かを与えることが出来ていない。何かしたいとは思ってるんだけどね…。


「後悔したことを直視して後悔した意味を見つける。俺はもう同じことを繰り返したくない。そうならないために人助けしてるんだって。そうなんだと思う。」


パスタを食べた時に話した話題のことだ。思い出した!


「……北風は俺の事を強いって言ってたけどやっぱり俺は弱いよ。後悔することが怖い。そんなこと不可能だってわかってるけどな。生きている限り何かをする限り後悔なんて絶対に生まれる。何かしなかったら「あのときなにかしてればな」って後悔すると思う。」


「俺も逃げたい。それでも俺は後悔したことに向き合ってる。でも、大きすぎるものには逃げたくなるから他の人の助けを得て頑張って向き合ってる。」


 荒木くんも私と同じ人間なんだなって今、思った。どこかでちょっと荒木くんを凄い人だって思ってたんだ。なんでもできる人だって。


「…北風ももし、その後悔が大きくて向き合いたいんだと言うなら、俺でよかったら手伝うよ。それでも無理だったら他の人の手も借りればいいと思う。」


「……ありがとう。もう…大丈夫…!!」


「そうかい。なら良かった。」


「ねぇ、今の私どうなってる?」



「綺麗なんじゃねぇの?」


「そっか♪ねぇ、ちょっとトイレで化粧なおしてきていい?」


「おぉ。行ってらっしゃい。俺はここら辺で待ってるわ。」


「うんっ!」


 綺麗…かぁ。良かった、かーくんにそう言って貰えて。やっぱり今日は素敵な日になりそうだ。早く化粧直してできるだけ長い時間一緒に過ごしたいなぁ。

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