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召喚者が勇者だとは限らない!  作者: 小鳥遊 辺銀
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異世界召喚

「はぁはぁ…」

「ふぅ…はぁ…」

日本拳法学生選手権大会決勝。

同門対決。

柔道弐段・極限空手初段 瀬川諒 対 空手インターハイ準優勝 池林勇

現在一対一。

日本拳法とは三本勝負、内先に二本取った人間が勝ちとなる半総合武道である。

お互いに面と胴、グローブをつけ上半身攻撃、投げ、寝技、関節。

下半身打撃以外の攻撃をすべて許された武道。

俺も勇も大学に入ってから始めた武道だったが、まさかこうして二人で頂点の争いをするとは思わなかったな…

お互い手の内は知り尽くしている。

となると最後に勝負を決めるのは唯一つ。自分の最も得意とする一撃のみ。

先に動いたのは勇だった。

シュッ、バッ!

神速ともいえる速度を持ったワンツー。

勇の拳を辛うじて捌きながら後ろに下がる。

途端、戦慄が走った。

ボッ!

前蹴り一閃。

回避できたのは運が良かったからだろう。

半歩引きギリギリのところで躱す。

そして、上げた右足を地面につけた瞬間、勇の表情が変わった。

思わず竦み上がってしまうような威圧感。

来る…!

だが、ここで引くわけにはいかない。

奴の左拳が俺の顔面目掛け点を穿つ。

交錯する拳…

ドンッ!

会場に響き渡る音。

静寂が訪れる。

「一本!それまで!」

審判の声が響き会場が沸く。

こうして俺の大学三年目の選手権は幕を閉じた。


「いやぁ、しかしまさか俺らが決勝とはねぇ。」

勇は試合後から随分ハイテンションだ。

まぁ、それもそうだろう。お互い最高の試合だったからな。

「あぁ、マジで疲れた。今日はホテル戻ったら爆睡だな…」

「何つまんねぇ事言ってんだよ。せっかく大阪まで来たんだ。もっと遊ぼうぜ!あ、すいません。生二つ!」

「ほんっとお前元気だよな。俺はもう疲れきってるぞ?」

勇のテンションに呆れながら苦笑する。

「いいじゃんよ。俺らまだ若いんだし、遊ばなきゃ損だろ?はっはっは。」

バシバシ人の肩を叩きながら勇は再び置かれたジョッキを手に取った。

「まぁな。んじゃ改めまして。ワンツーフィニッシュに乾杯。」

「おう!」

キンッと甲高い音が鳴り、俺たちは同時にジョッキに口をつける。

飲み始めると疲れなんて感じなくなる。

俺らは日ごろの稽古や講義、大学生活の話に花を咲かせながらただただ飲み続けた。


「だぁかぁらぁ、俺は酔ってなんらねぇ、ぶっろばすぞ。」

「わぁったから落ち着け。ほれ、ホテル着いたぞ。」

「くそ~まだ遊びらんねぇ…」

完全に酔っぱらった勇に肩を貸しながら部屋の鍵を開ける。

「ほら、開いたぞ。今日はもう寝ろ。」

「あ~何だこれ?何か視界ぐるぐるしてね?真っ暗だし。あははははは。」

勇の酔っぱらい発言に呆れながら足を踏みいれる。

「この酔っ払いが…あほなこと言ってねぇで早く…え…?」

扉の中を見渡すと確かに…なんだこれ?吸い込まれそうな何かが…

って…ほんとに吸い込まれてる…?

「お、おい。何だこれ、やべぇぞ!」

「あはは、何かおもれぇな!ってうぷ、やべぇ、吐きそうになってきた…」

「待て、今はやめろ!色々ヤバい!とりあえずここから引きか…うわぁぁぁぁぁぁぁ」

「わりぃ、俺駄目だ…」

おろろろろぉぉぉ

隣からは最悪な音。

そして、よくわからない空間に吸い込まれながら俺の意識は暗闇に落ちた。


ざわざわ…

ん…ここは…?

「おぉ、ついに我が国にも召喚者が…」

「召喚者は偉大な力を持つ勇者の資質があるという…」

ざわざわ…

何だ?周りが騒がしい…

俺どうしたんだっけ…?

「しかし、何故この者はこのような姿なのだ?」

「わからん…しかし、召喚者である以上、絶対的な何かを持っているはずだ!おい、起きろ、召喚者!」

さっきから何だってんだ一体?

召喚者?俺の事か…?アニメの見すぎだろ、やべぇ奴らに囲まれてるな…

どうやら俺は座り込んでいるらしい。

うっすら目を開ける。視界を巡らすとどうやらここは石の壁に囲まれた一室らしい。

周りにはこれまたお決まりと言えばお決まりの僧侶みたいな格好をした奴らが俺を囲んでいる。

「あぁ、くっそ。どこだここ…頭いてぇ…」

ぼんやりとした頭で状況を整理する。

昨日俺は大会の後、勇と酒を飲んでいた。

そして、あいつが潰れた後ホテルの寝室まで送り届けて…

そうだ、ここまでは間違いない。

んで、ドアを開けた瞬間…

あれ?

瞬間…何かに吸い込まれるような感覚に…

「マジか!俺もしかして本当にどっかにぶっ飛ばされたのか!?」

意識が覚醒し、思わず立ち上がる。

「おい、お前ら!ここはどこだ!何故俺がこんなとこにいる!?勇はどこに行った!?」

一番近くの爺の肩を掴みながら怒鳴りつける。

「ま、待て!落ち着け!勇という者など知らん!貴様こそ名を名乗らんか!そもそも貴様何故そのような姿なのだ!」

「マジか…勇は来てないのか?それとも違うところに…くそ、どうなっている?」

思わず片手で頭を掻きむしる。

「お、おい。いい加減手を放さんか。それとお主は一体…」

ふと見ると爺は怯えをはらんだ眼を俺に向けている。

「あぁ、すまん。ちょっと落ち着かないとな。俺は諒。どうやら異世界から来たらしい。異世界の人間だから服が違うのは…は?」

そう言いながら俺は視線を降ろし…

「何で全裸なんだよ!」

再び爺に向かって怒鳴りつけた。


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