DJシロクマの百物語!
えー、皆さんこんばんは。
今夜はホラー企画……ということで、なんと和室です。スタジオ。
そして私、去年と同じく死覇装を着ております。
何の事か分からない方は、同作家の『穴』という作品をご参照ください。
ちなみにこれは宣伝ではありません。
さてさて……今年もやってきました、ホラー企画。
なんていうか、雰囲気が大事とかで……和室の中で蝋燭の火に囲まれております、私。
ぶっちゃけ、オバケよりも火事の方が怖いです。畳に燃え移ったらどうすんねん、ディレクター。
まあ、そんなわけで今夜はタイトル通り……百物語です。
お便りで頂いたコワーイ話を……していきたいと思います。
ではでは、最初のお便りは……お、既におなじみリスナー『ポンたぬき』さんです~
どうでもいいけど今回、パフパフ音鳴らさないの?
お願いだから鳴らしてよ、怖いから。
「シロクマさん、こんばんは」
はい、こんばんはー!
さてさて、では……聞かせてもらおうじゃないか、ポンたぬきさんのコワーイ話を!
ぁ、ちょっと怖い程度でいいよ?
あんまり怖いと俺泣いてしまうから……
※
《コワーイ話 その一。語り手 ポンたぬき》
この話は……大学の先輩から聞いた話……だす。
「ねえねえ……私……また見ちゃった」
私の通っていた大学は、少し丘の上にある、比較的古い建物でした。
噂では、元々廃校になった小学校を再利用した……とのことだす……です。
「うっそー、また? もうその話止めてよー、私明日……サークルの活動で夜まで居るんだからさ」
その大学では、とある怪談話が流行っていました。
元々古い建物だった為、皆……面白おかしくしていただけかもしれません。
でも、私の先輩が体験したのは、噂などでは無く……もう二度と、その大学に通えなくなる程の恐怖だったと言います。
「ねえ、見たって……また子供?」
「そうそう、今はもうあんまり使ってない空き教室あるじゃん。あそこでね、昔……子供がふざけて机から飛び降りて遊んでたんだって。そしたら……ある子が、もっと高い所から飛びたいって言って……窓の外に……」
「ちょっと! やめてよ……私怖い話とか本当に苦手なんだから!」
先輩は友人のする話を、ただの噂話としか捉えてなかったといいます。
幽霊の存在など、信じていなかった……とも言っていました。
そしてある日、先輩が所属するサークルが夏祭りの準備の為、夜間まで作業をしている時……その事件は起きました。先輩が夜の講義室で数名の生徒とポスターを制作している時の事です。
「……ねえ、今なんか変な声しなかった?」
そう言ったのは、噂好きの女生徒でした。
他のメンバーは「またか」と鼻で笑いながら、女生徒の話を聞き流していたといいます。
しかし
「……ねえ、今の誰?」
また、違う女生徒が言います。
誰かの声がしたと。
先輩達は間近に迫った夏祭りの準備の為、ほぼ無言で作業に没頭していました。
なので、誰かが声を発すれば聞こえる筈なのです。
しかし先輩は、その時は何も聞こえなかったといいます。
「なんか……あっちから聞こえなかった? ほら、例の空き教室……」
「そうそう、そっちから何か……子供の声が……」
先輩達は作業の手を止め、耳を澄ませました。
しかし何も聞こえません。どこか寒気を感じた先輩は、鼻で笑いながら気のせいだ、と言い放ち……再び作業に戻ろうとしました、でもその時……
『もっと、高い所から飛ぼう』
そう、確かに聞こえたそうです。
そしてその声は、その場にいた全員にも聞こえていました。
全員顔を見合わせ、完全に作業どころでは無くなっていました。
「ねえ、もう帰らない?」
「そうだね……あんまり遅くなると……アレだし……」
先輩達はそのまま、作業を終えて帰る支度を始めました。
でも、その時……ガラ……と、先輩達がいる講義室の窓が、勝手に開いたのです。
「え? ちょ、ちょっと! ふざけないでよ! アンタ、何してんのよ!」
女生徒の一人が、噂好きな女生徒が窓を開けた、と決めつけ怒声を浴びせました。
しかし、噂好きの女生徒は顔面蒼白の状態で、必死に首をふりました。私じゃないと……。
「帰ろ……帰ろ!」
逃げるように教室から去ろうとした、その時、何かが地面に叩きつけられる音がしたそうです。
先輩達は固まり、ひとりでに開いた窓へと目を向けました。
「………ねえ、今の音……何」
「外……だよね? なんか落ちたみたいな……」
先輩はこの時、例の噂話を思い出しました。
まだここが小学校だったころ、ふざけて窓の外へと飛び降りた子供が居たという話を。
先輩は、ゆっくり……窓へと近づきました。
他のサークルメンバーが止めようとしても、先輩はその時……確かめなければ、と思ったそうです。
そしてゆっくり……窓から下を……覗き込みました。
するとそこには……
『飛べた』
※
ぎゃあああああああ!!!!!!
ちょ、ちょおぉぉぉぉ! ポンたぬきさん止めて! もう嫌! 俺もう帰るから!
何よ、何よ今の話! もっと普段どおり笑える話にしよーよ! 百物語とかもういいからさ!
っていうか、ポンたぬきさん! 語尾の「だす」はどうした!
なんで標準語で話してんの! 頼むから普段のポンたぬきさんに戻って!
あー、もう、終わろう、これで終わろう。
いいでしょ、ディレクター。
【カンペ:強く生きよ】
ふざけんなぁ! 俺マジで無理だから! こういうの!
うぅ、しかし生きる為には仕事を熟さないと……
では次のお便りは……えーっと『侍魂』さんからー。
なんか珍しくカッコイイね、ペンネーム。
でもホラー企画のペンネームに魂なんて字は使わないで欲しいな。怖いから。
「シロクマさん、こんばんは」
はい、こんばんはー。
控えめな怖さでお願いしますよー。
もう俺泣きそうだから。っていうか泣いてるから。
※
《コワーイ話 その二 語り手 侍魂》
これは俺が実際に体験した話です。
俺の職場はサービス残業が当たり前で、毎日のように終電に乗って帰るのが当たり前でした。
終電に乗って帰り、ベットで泥の様に眠ってまた朝早く出勤。
最初はこんな生活をして過ごしているから、疲れが溜まっているんだと流していました。
その……赤いコートの女を。
初めてその女を見たのは、俺が今の会社に就職して一年目の夏です。
終電のガラガラの車内で一人、女はポツンと座席に座っていました。
俺は特に気にすることもなく、その頃は普通に電車を利用して家に帰っていました。
ところがある日、違和感に気が付きました。
終電の時に現れる赤いコートの女は、必ず決まった席に座っていました。
その隣に誰かが座っていても、女は必ず“そこ”に座っているんです。
こんなガラガラなんだから、もっと違う所に座ればいいのに、と思いました。
その女の隣に座る人にも、何故わざわざそこに座った、と言いたくなりましたが……俺はその時から、無意識に……あえて考えないようにしていたのかもしれません。
あの赤いコートの女は、俺にしか見えないのでは……と。
そして俺は、その頃から赤いコートの女が座る車両を避けて乗るようになりました。
心のどこかで、俺は疲れているだけなんだ、と思いつつも……あの女は見てはいけないと感じていたんです。
そんなある日、いつも通り女を避けて別の車両に乗った時、俺は思わず心臓が口から飛び出しそうになりました。赤い女が俺と同じ車両に居たんです。しかも座った状態ではなく、立った状態で……俺の方を睨みつけるように。
顔は見えませんでした。髪で隠れていたので。でも、俺は睨まれていると感じ、急ぎ別の車両へと移りました。しかし次の日、女はまた俺の目の前に現れました。しかも昨日より、確実に俺に近づいてきていました。
このままではダメだ、逃げなくては、と思った俺は、その日から電車を利用せずにタクシーで帰るようになりました。
「お客さん、電車で帰った方が安いんじゃない? 私としては利用して貰ってありがたいんだけどさ」
ある日、タクシーの運転手にそういわれ、俺は……ふと、終電に現れる赤い女の話をしました。
きっと鼻で笑われる、そう思いながら。
しかし……タクシーの運転手は顔をしかめ……
「赤いコート……あぁ、そりゃアンタ……たぶん……いや、なんでもないわ……」
途中で話を折る運転手に、俺は何の話だと問い詰めました。
すると運転手は渋々……俺にこう、話してくれました。
「二、三年前かな、あの駅で飛び込み自殺があったんですわ。まあ、飛び込み自体はそんなに珍しくもないけど……あの時は酷かったかな……」
何がどう酷かったのか。
それは……
「自殺しようとしたのは、実はあの子じゃないのよ。仕事に疲れたサラリーマンが自殺しようとしてたみたいでね。あの子はそれを止めようとして……線路に落ちちゃったんだよ。あの時は……その子、白いコート着てたけど……血で赤く染まっちゃったんだろうなぁ」
まるで見てきたかのように言う運転手。
俺はその時、まさか……と思いつつも口には出せませんでした。
この運転手こそ、自殺しようとしていたサラリーマンでは無いのかと。
「だからね、今でもあの子、仕事で疲れた人を見ると放っておけないんじゃないかな。きっと見守ってくれてるんだよ。だから……あんまり邪見にしないでほしいな」
それから俺は、再び終電を利用するようになりました。
相変わらず赤いコートの女はそこに座っています。
見守ってくれているのか、それとも俺も連れて行く気なのか、どちからは分かりませんが……
この女の子が、身代わりに死んでしまった事は事実。
それを思うと悲しくて仕方ありません。
だから俺は……その女の子の向かいに座り、電車から降りる時、こう言います。
「今日も……ありがとう」
※
あー、なんか今回のは悲しい系?
うーん、出来れば成仏してほしいね。知り合いのゴーストバスターに一報入れとくか……。
まあ、こういうホラーならまだいいかな……ポンたぬきさんのは完全にアウトだけども。
もう学校とホラーが重なったらもうダメなんだよ、俺……あと日本人形物は絶対にダメ……。
えー、というわけで次でラストです。
やっと終わるわ。今日は早く帰って寝よ……。
ではでは、ラストは……『たこ焼きにマヨネーズ派』さんからー
ちなみに俺も断然マヨネーズです。
シソとか入れても美味しいよね~
「シロクマさん、おはこんばんちは」
はいー、おはこんばんちは~
控え目でね、控え目で頼むよー
※
《コワーイ話 その三 語り手 たこ焼きはマヨネーズ派》
これは……私が小学生の時の話です。
その時私は、実家で両親と父方の祖父、祖母と共に暮らしていました。
祖母は「木目込み」というのを趣味にしていました。簡単に言うと日本人形に着物を着せるような物です。
それゆえ、実家には沢山の日本人形が飾られていました。
私は子供の頃から、その日本人形がどこか気味が悪いと感じていました。
ある日、私が学校から帰ってきて、いつもどおり自分の部屋へと向かうと祖母が勝手に日本人形を飾っていました。私はやめて、と言いましたが……祖母は縁起の良い物だから、とそのまま私の部屋へと日本人形を飾りつけてしまいました。
その日本人形は花魁のような女性の人形で、最初は見るのも嫌でしたが、だんだんと慣れてきた私は次第にその人形へと話かけるようになり、今日学校であった事などを喋りかけていました。
でもそんなある日、私が人形に話しかけている事を不安に思ったのか、母が撤去してしまったのです。
私は少し残念でしたが、元々日本人形は苦手だし……と大して文句も言いませんでした。
でも心のどこかで、あの人形は何処に行ったんだろう……と気になりだし、祖母へと聞きました。しかしどうやら親戚の家へと譲ってしまったそうで、私は少し寂しくなりました。
ところがある日……学校から帰ってくると、その人形が私の部屋に戻っていたのです。
私は祖母が戻してくれたんだ、と思いお礼を言いに行きました。しかし……
「……? 何のこと?」
首を傾げる祖母と共に、私は自分の部屋へと向かいました。でもそこにあの日本人形の姿はありません。
私はまた母が撤去してしまったんだ、と思い母にも聞きました。しかし母も知らないと言います。祖母も母も私が何かイタズラで言ってるだけなんだと思ったようで、その時は軽くあしらわれてしまいました。
しかし、再び一人で部屋に戻ると……そこにあの人形が戻っていたのです。
思わず私は叫び、その声で祖母と母が飛んできました。そして二人とも、その人形を確認すると私を抱きかかえ、居間へと走って避難しました。
そして母は急ぎ、仕事中の父へと混乱しながら電話を掛けようとしました。
しかし……
『なんで私の子を奪うの?』
と、電話口で声がしたそうです。その瞬間、母は電話を落とし座り込んでしまいました。
母の様子を見て、祖母は畑仕事をしている祖父を呼びに外へと走ります。
私と母は互いに抱き合い、震えが止まりませんでした。
でもその時……ヒタ、ヒタ、ヒタ、と……何かの足音が聞こえました。
母と私は思わず声を上げながら居間の隅まで身を引き、入り口のドアを見つめます。
きっと祖母だ。祖母が祖父を呼んできたんだ。
そう思っていると、居間の扉がゆっくりと開きます。
しかしそこには……あの日本人形が……佇んでいました。
それから私達は家中の日本人形を近くの神社へと持ち込み、お祓いをしてもらった後、引き取ってもらう事にしました。それからは、私の部屋へとあの人形が戻ってくる事はありません。
でも時々……誰かの視線を感じる事は今でもあります。
そっと背後を確認しても、そこには何もありません。
でも、もしかしたら……自分の部屋へと入ったら……あの人形があるのではないか
今でもそんな気がして……なりません。
【この怪談話は全てフィクションです。作り話です。実際に体験した話など一欠けらもありません。安心してお眠りください】