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魔王を発狂させた元凶は僕でした  作者: トベケイキ
二章
47/47

四十四話 ランクアップテスト その⑦

 三回戦第一試合。

 例の如く、波乱の幕開けとなった。


『タ、タイムア〜〜〜〜ッップ! クラッシュフルド選手、タイムオーバーのため失格! よって勝者、クズゴミ・スターレット選手! 準決勝へと駒を進めます!』


「待ってくれぇ!! 頼む! もう少しだけ待ってくれぇ! うちのブレイブは必ず来る! きっと何かトラブルに巻き込まれてるんだぁ! すぐ解決して戻る筈だからもう少しだけーー!」


「うっっっっしゃーーああああああ!!! 勝ったぞぉぉぉぉああああーーーー!!!」


 実況がタイムアップを宣言すると同時、相手のブレイブのギルドの人が時間をくれるようにと懇願するが、僕は待つ気はないと言わんばかりに勝利の咆哮をあげる。

 しかし当然、観客がそれに納得する筈もなく。


「っざけんなぁぁーー!!? そんなの認められる訳ないだろうがーーっ!!」


「絶対そいつなんか裏でやってるぞ!!」


「反則負けにしろ反則負けに!!」


「名前からして最初っから怪しいと思ってたんだよ!!」


 前回、前々回同様、闘技場に投げ込まれる瓶や缶、魔法。

 怒りがピークに達した観客から怒声混じりのヤジが飛び、そしてついに僕にまでその魔の手が伸びてきた。


「えーい! 黙れ黙れ黙れ! 証拠はあるのかよ証拠は!!」


 ただ聞いてるだけも癪なので観客席に向かって少し言い返してやるが、相手は多勢に無勢故に、僕の方が分が悪い。


「そんなもん知るかっ!!」


「殺せーーーーっ!!」


 過激派の観客たちの乱入により一段と会場は殺伐とする。

 魔法が花火大会の如く飛び交い、試合に関係のない喧嘩まで同時多発する乱闘が始まってしまった。

 何もかも滅茶苦茶で、身の危険を感じた僕はすぐさま闘技場から退避する。


「くそ、野蛮人どもがよ……!」


 逃げまくる僕を狙った魔法がばかすか飛んでくるので冷や汗もんだ。

 せっかく無傷で準決勝進出したのに、つまらないことで怪我したくないからナ。





「これからこの街にいる間、クズゴミとは他人のふりをしようと思うのだけど二人はどう思う?」


「「賛成」」


「ちょっと待ってくれ」


 僕が控え室に戻ると、三人が驚きの相談をしていた。

 昨晩仲良く語り合ったのが嘘のように僕を突き放す物言いだ。


「みんなしてあんまりじゃないか。一体僕が何をしたって言うんだ」


 ちなみに今回も傭兵屋の時と同じ方法で相手を転移させたから足がつく要素は皆無の筈。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ふざけてやがる……」


 確かにその通りだが、あくまで僕は身の潔白を主張する。

 せっかく証拠もなく炸裂させた盤外戦術なのに、まるで論理的でない決めつけ思想で考えられてはたまったもんじゃない。


 コンコンコンーー。


「失礼致します。わたくし、コロシアムにおける特別

 審査員を務めている者ですが……クズゴミ・スターレットさんはこちらですね?」


「え、あの、僕がそうですが」


 静かなノックのあと入室してきたのは屈強な身体の黒スーツ姿の男を数人連れた、厳しそうな印象を持つこれまたスーツの女性。

 猛烈な嫌な予感に身震いする僕をよそに審査員の人は話を続ける。


「単刀直入に申しますと、現在貴方にはトーナメント戦における()()()()がかかっています。ご存知だと思いますが、コロシアムにおいては戦いを汚す不正は重罪……それがブレイブのランクアップテストでもここで行う以上は、です。つきましては、身柄を拘束させていただき取り調べを行うことになりました」


「へ?」


 まさかの急展開に僕、思わず失神しそうになる。

 助けを求めようとアティナの方を見るも、顔を逸らされる始末。

 カオリンとエーテルも何と言ったらいいやらと、言った雰囲気で擁護は期待出来なさそうだ。


「ま、待ってくれ。確かに疑いたくなる気持ちは分かるが、僕が不正に関与した証拠でもあるのか」


「それはこれから調べることです。連れて行け」


 審査員の人がピッと手で合図するのと同時に、僕は黒スーツにたちまち囲まれた。


「ちょっ!? 待って! 本当に待って! こんなの不当だ! 僕は不正なんてやってない!」


 本当はやってるけど。


「ではこの三連続不戦勝をどう説明するおつもりで? 偶然で済ますには些か無理がある展開だと誰もが考えると思いますが? となれば貴方が何かしらの方法で不正を働き、対戦相手を試合に出場できないよう仕向けたと疑うのは必然かと……」


「いや、えっと、それは……」


 事実、裏でコソコソやっていた訳だから証拠が残る訳ないと分かっているとは言え、追求されるとうっかり目が泳いでしまう僕。

 その軽く慌てた様子が疑いへの拍車をかけたようで、もはや犯罪者を見る目で審査員の人は僕を睨みつけている。


「それとも……何か弁明があるとでも……?」


「べ、弁明……!?」


 やばい。

 ここで僕が何も言えなかったり、説得力のないことをベラベラした時には間違いなく連行される。

 そうなった日には証拠不十分で釈放されたとしても、捕まったという事件は噂で広まり僕の印象を著しく悪くしてしまうに違いない。

 その後の僕の生活や仕事にも支障を来す恐れ大だ。

 僕にミスはないのに周りの浅はかな勘違いで僕の人生に害をなされるなんてふざけている。

 ていうか普通にこんな逮捕されるみたいなのが嫌すぎる。

 表面上は何も悪いことしてないのに……!


「……実は固く口止めされたんだが、こうなった以上はお話しせねばならないか」


「ならばそれは別室で聴きましょう。逃げられたら困るので」


 気が付けば。

 僕は黒スーツの連中に手錠をされた挙句、荷物のよう抱え上げられていた。


「えぇ!? 結局連れてかれるのかよ!? 弁明出来たら不問になる流れじゃないのか! 話ならここで聞いてくれ!」


「駄目です。疑わしきはまず拘束。それがここのルールですので」


 そうして、身柄を拘束された僕は抵抗虚しく黒スーツに運ばれ闇へと消えていった。

 その時の僕は、半ば諦めの境地になりながら世界を呪っていた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 〈アティナ視点〉


 打ち上げられた魚みたいにぴちぴちと暴れていたクズゴミも、遂には大人しくなり持って行かれてしまった。

 絶対に何か裏で汚い小細工をしている筈と思いながらも、少し可哀想に思えてしまう。

 まあ、本当に何もしてないのならすぐに釈放されるでしょ。

 私はカオリンとエーテルとで連れていかれるクズゴミを手を振りながら見送ったあと、試合の観戦に戻っていった。


 ✳︎


 その後は試合は何ごともなく、とても平和に進んでいった。

 鍛え上げられた武術に、研ぎ澄まされた魔法が応酬する白熱した闘いを見ていると、私も血がたぎる。

 いつか私もコロシアムの試合に参加してみようかしら。

 観客に吸血神の力を見せつけるのも一興かもしれない。


 『三回戦最終試合! 槍使い同士のカードとなりました! どちらの槍術に軍配があがるのか! クリスティア・ローレン選手VSスピア・ロトギアイダン選手! 試合開始です!』


 私たちは観客席ではなく、選手入場ようの通路から闘技場を見ていた。

 あっという間に最終試合となり、その火蓋が切って落とされる。

 スピアの相手のクリスティアという少女。

 歳も体格もスピアとそう変わらないぐらいだけど、かなり性格がドライのように思えた。

 一回戦、二回戦の戦いを見るに、攻撃に容赦がなく眉一つ動かさずに相手に血を流させることが出来るほど。

 これまでどんな経験をしてきたかは分からないけど、血を司る女神としてこれだけは分かる。


 あのクリスティアという子の手は()()()()()()


「スピアーー! 油断しちゃダメよーー!」


 私はスピアにそう叫ぶ。

 そんなものスピアに無いとは思いながらも言わずにはいれなかった。 

 嫌な胸騒ぎがしたからだ。


『お互い睨み合ったまま膠着状態が続きますーーが、おっと! 先に沈黙を破ったのはクリスティア選手! 一気に間合いを詰めるっ!』


 クリスティアは一直線な速攻の突進(チャージ)に対して、スピアは迎え撃つ選択をしたようで、防御の体勢を取る。

 先の二戦に於いても、スピアは基本、自分からは攻め込まずに受け身の姿勢でカウンターを狙うスタイルだ。

 相手が突っ込んでくるので是非もないが、むしろその方がやり易いらしい。

 そして互いの槍の間合いが噛み合った瞬間、息もつかせない程の打ち合いが始まった。


『な、何という凄まじい攻防! 速すぎて側からでは何が起こっているか分からないほど! ですが現状、互角の闘いを繰り広げているようにも思えます!』


 クリスティアの刺突、に対しスピアはパリィにて対応。

 クリスティアの足払い、に対しスピアは間に槍を挟み防御。

 そして時には体術による攻撃と、それを捌く応酬が繰り広げられている。

 実況の人が言った通り、確かに二人の力は均衡しているように見えるがーー。


「だ、大丈夫よスピアなら。今にスピア優勢になるわよ。そうよね、カオリン」


 手に汗握りながら観戦する私は、隣にいるカオリンにそう同意を求める。

 やっぱり私はどこか不安な気持ちがあるようだ。


「いえ……残念ですが逆です。少しづつですがスピアの方が押され始めています」


「そ、そうなの……?」


 鮮やかに相手の猛撃を凌ぎ切っているように見える。 

 しかし言われてみれば、かする程度ではあるが、被弾し始めているようだ。

 それにクリスティアのギアは更に増していく。


『これはーー! 一方的な展開となってきたか! スピア選手、クリスティア選手の怒涛の槍捌きの前に、防戦一方を強いられている!』


 加速したクリスティアの連撃を前にみるみる後退を余儀なくされる状態に、スピアはかなり苦しんでいる様子だ。

 立て直すため一旦距離を取ろうと試みるが、そうはさせまいとクリスティアはピタッと張り付いたように間合いをポジショニング、攻撃の手を緩めない。


「……なあ兄さま方よ、解せねぇんだが……スピアは()()()()()()()()()()? 槍持ちの相手は、なんなら十八番だろ。なのにこうも後手後手に回るものか?」


 エーテルが疑問を投げかける。

 確かに聞いた話だとスピアは毎日、お兄さん達と特訓していると言っていた。

 槍使い相手の戦いなら慣れっこだろう。

 じゃあ、クリスティアがスピアよりもずっと強いのか? と言うと、私の目から見てもそうでは無い気がする。

 では何故こんな展開になっているのだろうというのがエーテルの疑問だ。


「単純に()()()かもな」


 それに答えたのはランス。

 更に見解を続ける。


「同じ武器使って腕も同程度なら、あと戦況を分けるのは魔力だろ。つまり魔力による身体強化の差ってことだ」


 槍術のテクニックは互角。

 だけど魔力を用いた身体強化によるフィジカルはスピアよりクリスティアの方が上。

 それが闘いの明暗を分けている訳だと、ランスは言う。


「で、でもスピアも相手のクリスティアも同じBランクでしょ? そんなに魔力に差なんてない筈じゃない?」


「そんなにないだけで差はあるんだろ。それが表面上に浮き彫りになったのが今の結果だ」


 私の疑問は簡単に一蹴される。

 でも確かに、例えるなら百メートルを十秒で走る人と、十一秒で走る人が競走すれば、僅か一秒差でも走っていれば距離に差が生まれるのは道理だ。

 それと同じことなんだろう。


「いや……多分な? この状況にあえて理由をつけるなら恐らくって感じ……だとしても、こうも一方的になるもんか? やっぱ変だな、うん」


 自信気に語ったのも束の間、一転して自信が萎んだよう尻すぼみながら言うランス。


「……え、つまり結局のところは?」


「まあ、俺をもってしても正味なところハッキリしたことは分からんってことだ」


 えぇ……。


「知った風な講釈たれといて最後は分からんかよ! 知ったかぶってんじゃねーよ!」


「無知な兄を持って恥ずかしーったらありゃしない!」


「ああ!? てめーらも同じだろーが殺すぞ!?」


 グレイブとハルバードの茶々がはいったことを皮切りに、三兄弟での殴り合いが始まった。

 男の兄弟ってみんなこうなの?


「ちょっとやめなさいよあんた達。スピアが頑張ってるっていうのに」


 私はぶっ叩いて止めようとグングニルを取り出す。

 と、その時、会場から歓声が上がった。


『直撃だぁ! クリスティア選手の強烈な一本突きが炸裂っ! スピア選手、手痛い一撃を受けました! そしてクリスティア選手が更なる追撃をかける!』


 紙一重で捌いていたスピアだったが、ついにまともに攻撃を喰らってしまう。

 腹部への強烈な一刺し。

 その威力はスピアの身体を大きく吹き飛ばすほどだ。

 大会用の武器は全て刃引きされているので、体を貫かれることはないが、それでもダメージはあるだろう。


「それでも寸前で後方に跳んで衝撃を緩和したようです。損害は最低限、加えて欲しかった間合いを取れましたね」


「おーよ、スピアの狙い通りな。途中からやけに胴周りを空けてただろ?」


「わざとそこへ攻撃を撃たせた訳さ。上手く誘導出来たようだな」


「そして来ると分かってる攻撃ならダメージを最小限に抑えるように受けるのも容易いってもんだ」


 私にはただスピアが吹っ飛ばされてやばいと思ったのを、カオリンと兄弟三人はそこまで解析していた。

 馬鹿喧嘩しててもちゃんと見てて、少し感心する。

 私の場合、戦いに工夫や戦略なんて張り巡らせないから解説をきいてると為になるような気がした。

 あと兄弟だから声が似てるせいで三人続け話すと誰が何言ったか分からないわね。


「『イグナイト・ライン』ーーーー!」


 スピアの魔法が発動する。

 自分の周りに円を描くように『イグナイト・ライン』の線を引き、それが着火することで火柱を上げた。


『スピア選手、『イグナイト・ライン』で炎の壁を張りました! これではクリスティア選手、迂闊に手が出せません! スピア選手はこの間に体勢を整える算段でしょう!』


 クリスティアとの間合いが離れたおかげで、『イグナイト・ライン』の壁を作る隙が出来たという訳だ。

 これで少しでも休めれば……!


「ーーーー『悪意の捕食(ヴァンダル・ジョー)』」


 しかし刹那。

 接近したクリスティアが槍を炎の壁へ振ると同時に、


『こ、これはどういうことだ〜〜!? クリスティア選手の槍が触れた瞬間、炎の壁が消滅してしまった!?』


 そう、消滅したのだ。

 それについて、私は先の戦いで四天王が使っていた魔力を消滅させる剣を連想するが、すぐに違うと結論付ける。

 今のは掻き消したり、振り払った訳ではない。

 強いて言うなら、私には一瞬にして槍に炎が吸い込まれように見えたような。


「なるほど……答えは魔力吸収(マジックイーター)か。くそ、何で気が付けなかった」


魔力吸収(マジックイーター)?」


 ランスが呟いた、聞いたこと有るような無いような言葉に私がクエスチョンすると、エーテルが教えてくれた。


「『悪意の捕食(ヴァンダル・ジョー)』……相手の魔力を吸収して自分の魔力に変える魔力吸収系の魔法だ。武器を通して相手の魔法や武器、体に接触することでそこから魔力を吸い上げる代物だぜ」


 相手の魔力を吸収して自分の魔力にする魔法……それなら合点がいく。

 恐らく最初から無詠唱で発動していて、槍での打ち合いの度に魔力を吸収していたのだろう。

 一度の吸収量はさほど多くは無さそうだけれど、何度も吸収されていれば身体に響いてくる筈。

 その状態のスピアと魔力をたくさん吸収したクリスティアとでは、戦闘能力に差が出るのは当然という訳ね。


『防御壁が破られ、依然苦しい状態が続きますスピア選手! これはこのまま決着もあり得るかーー!?』


 スピアも相手が魔力吸収の魔法を使っていることに気が付いたらしく、攻撃を極力回避するように立ち回っている。

 しかしクリスティアの怒涛に降りかかる槍の連続突きを全て避け切るのは今の状態のスピアには至難。

 次第に被弾の数も増え、身体に痛々しく傷が刻まれていく。


「やばいわよこのままじゃ……ねぇ、スピアに何か一発逆転出来るような秘策はないの?」


 私がだんだんやられていくスピアにいたたまれない気持ちに、ランスにそんなことを聴くが。


「……まあ見てなって」


 そう一言だけ言うとそれ以上は何も語らず、黙り込んでしまった。

 グレイブとハルバードも同じ様子だ。

 さっきまで騒いでたのが嘘みたいに真剣な雰囲気に、私も黙っていることにした。

 まるでスピアが負けてしまうことが決まったような空気で嫌だけど……。


 そんな嫌な空気通りに試合は展開する。

 容赦なくクリスティアの槍撃はスピアを打つ。

 反撃の兆しさえ望めることもなく、ただただ一方的に攻撃を受け続ける。

 傷が増える一方、それでもスピアは引くことを知らない。

 敵前に位置することは喰い下がる。

 それは自分はまだ貴方の脅威になり得ると言い放っているようにも思えた。


『ーーーー満身創痍のスピア選手に、痛烈な一撃がまたもや炸裂だぁ! 今度こそ勝負あったか!?』


 クリスティアが振るった槍のスイングによる一撃は、ガードした槍をへし折り、スピアを大きく跳ね飛ばす。

 辛うじて最低限の受け身をしながら地面を転がるスピア。

 もはや息絶え絶えながらも、何とか立ち上がるが……身体中ボロボロで頭部から顔に流血する姿は誰の目から見ても限界は近いだろう。


「ーー……スピア」


 観戦していた私たちの方へまで飛ばされて近づいたスピアに、兄弟の誰かが声をかけた。

 その声音には“もう十分だ”という意味がこもっていることがよく分かる。

 考えてみれば私なんかよりも、彼らの方がずっと気が気でない筈だ。

 打ち砕かれる肉親を見るだけなのはたまらなく辛い筈だ。

 ……だからこれ以上はもうやめて欲しい筈だ。


 しかしスピアは自ずと首を横に振った。


「まだ……まだ、頑張れる。勝つよ……私は。勝って兄ちゃんたちと同じ高さに立つから……胸を張って、私は“トライデント”だって言いたいから」


 相手を見据えながら譫言のように喋るスピア。

 そんな胸の内を吐露したスピアの言葉に、彼ら兄弟の心境はいかほどのものだったかは表情からは読み取れなかった。

 ただし三人とも握る拳に血が滲んでいたことだけは確かだった。


 ーーへし折られ武器は失ったも同然。

 用を成さない槍を地面へと落とすと、徒手となったスピアは()()()()を取った。

 傷付き、覇気を失う身体とは裏腹に、その闘志は熱く鋭く逞しく、魔法となってスピアの手の内へと顕現する。

 身体からほとばしる炎の如き魔力と共に。



 ーー『火であり、(バーン・ザ・)槍である(ランスロッド)』。

 然して、『いずれは灰(ヒロイック・オーバ)の英雄譚(ー・ブレイズ)』。

 

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