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魔王を発狂させた元凶は僕でした  作者: トベケイキ
二章
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三十八話 ランクアップテスト その①

あけましておめでとうございます。

遅くなりすいません。

 宇宙人の襲来に魔王軍四天王の襲撃。

 そんな街存続の危機も僕の働きのおかげで乗り越えることが出来たと言っても過言ではないと、割とマジで思う今日この頃。

 平穏な日常を過ごしたり、無難にブレイブの仕事をこなしたりと充実した毎日を送っていた。

 そしてそこへ。


「スターレットさん宛にブレイブギルド本部からランクアップテストの案内が届いていますが、どうなさいますか?」


「え、マジで?」


 ギルド内。

 適当な仕事がないかアティナと見繕っているところ、ギルドの職員のお姉さんに声をかけられ封書を手渡された。


「ねぇ、なぁに? ランクアップテストって?」


「一定の実績と実力のあるブレイブにギルドからランクアップの申請許可を出すんです。それがランクアップテストで、無事にクリア出来ればランクが上がります」


 アティナの質問にお姉さんが律儀に答えてくれてるのをよそに、僕は封書の中身に目を通す。

 書面には決まり文句の文章から始まり、テストの内容や日時、場所などがそれぞれ記載されていた。

 噂だとテスト内容はギルド指定の魔獣を試験官立会の元で討伐するとかだったような……。


「でも私がランクアップする時はそんなのなかったわよ?」


「アティナさんの場合は例外として魔力値もあり、高い戦闘能力が認められたためテストはパスでした。カオリンさんとエーテルさんは同じ理由で最初からAランクでしたね」


 へぇと頷くアティナ。

 すると今度は嫌味ったらしく僕にからんでくる。


「でもクズゴミは魔力も実力も名前通りにカスカスなのによくランクアップの話しがきたわね。正直Bランクでもサービスされてるでしょ」


「本来ならあり得ないですが、先の四天王戦の働きを聞いたSランクのバンベルク・ウォッチャ氏が推薦したようでして。まあそれならチャンスを与えるくらいはいいかなと言う善意とのことです。フフフ」


 くそ、うるせーな。

 二人して馬鹿にしてきやがって。

 許せねー。

 僕自身も正直ランクアップ出来るとは思っていなかったけど。

 まあ、馬鹿にされたことは後で何らかの形で復讐するとしてだ。

 今はそれよりもこのテスト内容に気になることが。


「あのー、確かランクアップテストって魔獣を一体討伐する内容だって聞いたことあるんですけどーー」


 書面に記載されているランクアップテストのクリアの条件の欄を指差して僕は尋ねた。


「何ですかね、このバトルトーナメント優勝ってのは」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 その日の夜。

 ランクアップテストの参加申し込みを済ませた僕は、カオリンとエーテルにもその話をした。


 今から一週間後、会場はここ〈イグザンプル〉から遠出した場所にあるコロシアムのある〈アレウス〉という街。

 力の男神〈斬伐神(ざんばつしん)アレウス〉の名を受けた年中、闘技大会などで賑わう場所。

 そこで各地から集まったテストを受けるBランクのブレイブ達参加のバトルトーナメントを催し、優勝者が見事にランクアップを果たすということだ。

 何でも今回のテストは突然に内容の大幅な変更があったらしい。

 理由はおそらく僕が思うに金だろう。

 コロシアムというだけあってもちろん観客を入れるため、観戦チケットはすでに売り出してるとのこと。

 それに人が沢山集まればそれだけ出店してる店や屋台も商売繁盛するというもの。

 そしてその売り上げのいくらかはブレイブギルドに流れるらしい。


 まったく、ふざけた話だ。

 ブレイブギルドがブレイブを見せ物として利用し、金儲けをするなんて。

 参加したブレイブにも少しは利益を回して欲しいもんだ。

 そう僕が文句を思いながら旅支度していると、


「え、三人ともついて来るって? 別に遊びに行く訳じゃーー」


「あんたはトーナメント頑張りなさいよ。私たちはゆっくりと観光でもさせてもらうから。でも大丈夫、応援ぐらいは行ってあげるわ。どうせ一回戦敗退でしょうけど」


 横でアティナもカバンを持ち出して準備を始めていた。

 見るとカオリンとエーテルもどこで手に入れたのか、〈アレウス〉の街のパンフレットを手にあれこれ話しているようだ。

 どうやらすっかり旅行気分でいるらしい。


「知らない土地で一人戦うというのは心細いものです。私たちが一緒ならきっとそれも和らぎます。ひいては試験の結果を左右することになるかもしれませんよ」


「対人戦なら経験あるからな。簡単なアドバイスくらいはしてやれると思うぜ。それを活かせるかどうかはクズゴミ次第だがよ」


 カオリンもエーテルもあくまで僕を心配してるようなことを言ってるが、観光パンフレットを広げながらではありがたみが少なかったりする。

 しかしこうなると僕一人なら目的地まで『オーバー・ザ・ワールド』で転移すればいいものを、わざわざ長い距離を移動して行かなくてはならなくなった。

 道とか調べとくのが面倒だな。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 出発を午後一番に控えた次の日の早朝午前五時。

 カオリンに叩き起こされた僕は、眠い目を擦りながら表に出ていた。


「何だよカオリン、こんな朝っぱらから。昨日は遅くまで起きてからまだ眠いんだよ」


 昨晩。

 ランクアップテストはまだ六日後だが早めに言って向こうの環境に慣れておこうということになり、それまでの間は遊びまくることにしたのでどこに行くかの話を夜中までしてたのだ。


「特訓です」


「……特訓?」


 僕が眉をひそめると、カオリンが両手に持っていた木刀を一本渡してきた。


「クズゴミ、初戦敗退濃厚とは言え、まさか一方的にやられてしまうつもりではないですよね? つもりはなくても今のあなたではそうなりかねません」


「言ってくれるなぁ……確かにまともに戦ったらなりかねないけどさ」


 本当に、まともに戦えばな。


「なので残りの数日、付け焼き刃ですがせめて最低限は身を守れるくらいの技術を伝授して差し上げようかと」


「そ、そう」


 正直なところ余計なお世話も甚だしいが、カオリンのガチの眼差しを見ると断るに断れない。


「でも別に何もこんな朝早くからやらなくたって……」


「こういう稽古は早朝から行うものと相場が決まっているのです」


 そういうものか?

 と、疑問に思う僕を他所にカオリンは木刀を構え、素振りを始める。


「さあいつまでも喋ってないで始めますよ! まずは準備運動に素振り百回です! 私より五回以上遅れたら叩きますからね!」


「ひぇ……」


 一ミリもやる気がなかったが、カオリンの迫力に押されて一緒に素振りを始める僕。

 こんなのが当日まで続くのか……。






「どうしたクズゴミ? 昨日眠れなかったのか?」


 カオリンの四時間くらいの地獄の特訓も終わり四人で朝食をとっていると、エーテルが心配そうな声で聞いてきた。


「……まあ、それもある」


 そんなに疲れた顔をしていただろうか。

 でも確かに朝からの滅茶苦茶ハードな鍛錬で今日一日の体力と気力を全て使い切った感じだ。

 もう食べ終わったら少し眠りたい。


「どうせ出発が待ち遠しいて眠れなかったんでしょ。子どもよねぇ。本番までにコンディション整えておくのも大切なことよ」


「昨日寝かせてくれなかったのはアティナだからな?」


 無駄にテンション高い状態で話しかけてくるから結局アティナが寝るまで僕も起きてたのだ。

 それでやっと布団に入れたと思ったら今度はすぐにカオリンに起こされる始末。

 こうなると昼からの出発が面倒になってきた。

 やっぱり出るのは明日にしようかな。


 ぴんぽーん!


 ……家のチャイムが鳴った。

 こんな時間に来客とは珍しい。

 僕は『アイズ・オブ・ヘブン』で誰かを確認すると。


「っしょと、いいぜ、あたしが出てきてーー」


「いや、僕が出るよ」


 瞬時に上着を羽織り軽く髪をなで、カオリンとの修行時にはなかったレベルで、立ち上がろうとするエーテルよりも早く玄関へ走った。


「やあ、いらっしゃいスピアちゃん! どうしたの遊びにきてくれたの! まあとりあえず上がって上がって! お茶とお菓子でも! それとも朝ご飯たべてく?」


「お、おはようクズゴミくん」


 ドアを開けると来てたのは同じBランクブレイブのスピアだった。

 ちょっとがっつき過ぎたか軽くビビらせてしまったかもしれない。

 いつもは誰かしら兄達がガードについてるから一人とは珍しい。


「ごめんね、今日はこれを渡しに来ただけなんだ。私これから直ぐに出かけないといけなくて」


「あ……そうなの? 分かった、どうもありがとう。何これ」


 手渡されたのは小さめの封筒でギルドの印が押してある。


「ランクアップテストに出場する人に必要なものなんだって。でもびっくりしちゃった。クズゴミくんもトーナメントに参加するんだね」


「え! もしかしてスピアちゃんも出るの! マジかよ、優勝確実じゃん!」


 スピアの槍の技術は魔法の腕は、贔屓目に見てもAランクで通るレベルだって言われてる。

 それならBランク同士で戦うトーナメントで負けるはずもない。


「それは……やってみないと分からないけど。でもやっと兄ちゃん達と同じランクになれるチャンスだから、精一杯がんばりたい」


 スピアはかなり真剣なようだ。

 本気で今回のランクアップテストに取り組むんだろう。

 そういえば前から自分だけランクが下のことを気にしてたっけ。

 パーティーで同じような立ち位置でもこれっぽっちも気にしたことない僕とは大違いだ。


「あ、そろそろ行かなくちゃ。それじゃあねクズゴミくん。私は兄ちゃん達と先に行ってるから、また向こうでね。カオリン達にもよろしく」


「うん、それじゃあ気をつけて」


 そう言いながら僕はこっちに手を振りながら駆けていくスピアを見送った。

 一足先に〈アレウス〉に向かうんだな。

 知ってれば足並み揃えたのに。


 しかし参った。

 スピアが出るんじゃ僕の優勝の目は消えたも同然。

 最低でも決勝ではかち合う訳だからな。

 流石にスピア相手には汚い手は使いたくない。

 それにもし万が一、スピアと最初に当たるようなことがあれば、本当にアティナ達が言う通りに一回戦敗退もあり得る。

 それはそれでなんか嫌だな。


「あれ? 出先で何突っ立てんのクズゴミ? あんた少し寝るとか言ってたけどまさか立ったまま寝てるの? そんなとこで寝てたら邪魔よ」


「そんな訳ないだろ」


 突然なんたるムカつく言い草。

 アティナにスピアの爪の垢を煎じて飲ませたら少しは可愛げが出ないものだろうか。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そして昼過ぎ。

 僕たちは〈アレウス〉までの遥かなる旅路を出発した。

 まあと言ってもそこまで時間のかかる移動ではない。

 実際の距離はあるが、〈テレポステーション〉を乗り継いで二回テレポートすればあっという間に到着だ。

 ただ〈アレウス〉行きの転移陣はいつもかなり混んで行列になってるから待ち時間は長いが。


「出場のブレイブだって伝えたら予約して貰えたけど、それでもあと三時間は待つって。どうしようか」


 今僕たちが居るのは〈イグザンプル〉からテレポートしてきたいろんな街の中継スポットになっている港町。

 ここから〈アレウス〉をはじめ国中の街へとテレポート出来るようになっている。

 〈イグザンプル〉から直接〈アレウス〉には行けないのでまずはこの港町にやって来た訳だ。


「悪いが少し別行動してもいいか? この街にちょうど用事があってよ」


 するとエーテルが何やら周りをキョロキョロしながらそう言い出した。


「いいけど、どうしたのさ」


「いや、ただの野暮用だぜ。時間までには戻るから……悪いな三人とも」


 そう言ってたったと行ってしまったエーテル。

 アティナがあとでねと大きく声を掛けると手を振っていた。

 どこかで喧嘩でもしてトラブルをこさえなければいいのだが。


「すいません、私も別行動していいですか。この街のぎるどに用事があるのです」


「え、カオリンも?」


 完全に休みのムードだったのに、何かブレイブの仕事でも持ってるのだろうか。


「私も時間までにはここに戻るようにします。それではまた後で」


 そう言うとカオリンもスタスタと歩いていった。


「知らない人に着いていったら駄目よー」


「大丈夫だろ、多分」


 着いていく訳ないだろと言いたいが、カオリンはしっかりしてるように見えて意外と俗世に疎いところがあるから騙されて連れていかれる可能性もなくはない。

 まあカオリンの戦闘力なら何かあっても問題ないと思うが。





「ここよ、ここ! 一回来てみたかったの!」


「……世界の神様博覧館?」


 結局、二人で行動することになった僕は、アティナが行きたいと言うので中々こ綺麗な博覧館へとやって来ていた。

 入口の看板に書いてる通り、世界中に伝わる神様について見れるようだ。


「まさか自分のことが書いてるか確認しに来たかったってこと?」


「そうよ。吸血神にして血の女神である私のことがどんな風に崇められてるか本人が見なくてどうするのよ」


 太々しい態度で壁やショーケースに展示されている資料を次々と見ていくアティナ。

 まあ勝手に探せというのが素直な感想だナ。


「……そういえばあの女神様もどっかに載ってるかな」


 僕は以前、僕を生き返らせてくれた女神様を思い出していた。

 考えてみれば名前も聞いていなかった。

 魂魄王とか言ってたけどまさかそれは名前ではないだろう。


人間王記(バーテックスレコード)英勇譚(ヒロイック・サガ)もある。昔よく読んだなぁ……あ、〈斬伐神アレウス〉だ」


 しばらく見回ってると、これからいく街の名前にもなってる神様の肖像画が丁度目についた。

 横に書いてる説明文を何となく読んでみる。


「えーと、力を司る男神にして斬伐神。闘うことを至高の喜びとする。〈全知神アゼウス〉を父に持ち、兄妹神として吸血神をはじめとした……え、吸血神のことが書いてある……だと?」


 吸血神って公式に存在したのか。

 実はまだアティナが自称してるだけの可能性を捨ててはいなかったがどうやら本当みたいだ。

 ここに書いてるってことはそういうことだろう。


 と、僕が変に納得していると、トボトボとアティナが戻ってきた。


「あ、アティナ。自分のことは見つかった?」


「……燃やすわ、この博覧館」


 は?


「……どうした。何を血迷ったこと言ってるんだ」


「だって! どこ探しても私のこと紹介してないんだもの! この吸血神たる私を! あのバカ吸精神(きゅうせいしん)のことは紹介してあったくせに!」


 急に騒ぎはじめたアティナに周りの他のお客さんからの視線が集まる。

 そのバカ吸精神が何かは知らないが、バカはお前だと言ってやりたい。


「という訳でこんなモグリの博覧館、吸血神の名において滅殺してしまうことに決めたわ」


 やばいな。

 こいつ、目が据わってやがる。


「落ち着け。ほらここ、ここに吸血神って書いてるだろ。忘れられた訳じゃないんだよ」


 僕はアレウスのところに一言だけ書いてある吸血神の文字を指差してアティナに伝える。

 これで満足してくれないだろうか。


「………………」


「……な?」


 その字面を覗き込むアティナの様子を恐る恐る見ていると、


「………………グングニルブラッドーー」


「ちょっ!?」


 とうとうグングニルを現界させたので被害が出る前に無理矢理引っ張って外に出た。

 どうやら火に油だったようだったな。


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