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桜の木に寄り添う  作者: 月乃結海
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落ち着く味

 光や歩いている周りの人々を見つめていくうちに、あまりにも冷たい空気に飲み込まれてしまいそうになる。


 お店にはどんな人達がきてくれるのだろうか。

 本当に人がきてくれるのだろうか。


 私は、今の私は、自信がなく不安ばかりが重くのしかかる。


「 なつ、寒いから行こっか 」


「 うん…… 」


 自分に自信が持てないのは、昔からだった。

 なんとなく人の顔色を気にしてしまったり、気を使ってしまうタイプだから。


 今の私には頼れる仲間が沢山いるし、迷ったり悩んだりしたり場合ではないのはわかっている。


 自分に自信が持てるようになりたい。

 私は切なくて、胸が締め付けられる思いでたまらなかった。


 冷たくなってしまった手をポケットに入れ携帯を取り出した。


 メールを打とうと、メールの画面を開く。

 ……でも、文章が出てこなかった。


 なんて送ろうかな。絵の事を伝えようかな。


「 なつ!着いたよ 」


 色々と考えているうちに、ラーメン屋さんに着いてしまった。


 ガラガラと、リエが扉を開けた。

 昔からやっているようなとてもレトロなラーメン屋さんだった。


 カタカタカタ


 椅子を1つ外してもらい、私はそこに車椅子ごと入る。


「 ココ、美味しいんだよ!前に来たことあるんだけどさ 」


 リエは、一方的に話しかけてくる。

 私が、不安なのを察したかのように。


 結局、メールもせず携帯をポケットに戻してしまった。


「 寒かったから、きっと美味しいよ!おばちゃん、いつものを2つ!」


「 はいよ!今日はお友達と一緒なんだね! 」


 いつも来ているのだろうか。

 お店の人とは顔見知りの様子だった。


「 なつ、明日は額縁買わなきゃね! 」


「 うん。いいの見つかるといいな 」


「 はい!お待ち〜!」


「わぁ、美味しそう 」


 私達は、ラーメンをすすり顔を見合わせ笑顔になった。

 とても落ち着く味だった。

 今の私には心地いいような味。無言でひたすら食べてしまった。


 涙が出そうなくらい不安ばかりで押しつぶされそうだったけど、なんとなくお母さんを思い出すような味で、とても心が不思議と落ち着いた。


 お母さん……


 寂しくなるのが嫌で、思い出すのをやめていた。


 でも……それがいけなかったのかもしれない。

 思い出さないようにしているのが、私の心を無理させてしまっていたのかな。


 お母さんといた日々がまだつい最近の事のように思える。


 私は、そんな気持ちを吹っ切るかのようにお水を一気に飲み干した。






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