表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜の木に寄り添う  作者: 月乃結海
43/138

決心

 次の日の朝、目が覚めた時、机の上に手紙が置いてある。

 その手紙は、なつみが書いたものだった。


『一人で先に帰ります。なつみ』


 あいつは一人になりたかったのか。そうふと思った。俺はすぐに電話をかけた。


「もしもし。ヒロキくん?」


「今どこ?」


「電車を待ってるところだよ」


「今行くよ」


「いいの。来ないで。一人で帰りたいから」


「……わかった」



 優しくしてくれるのはありがたいことだと思う。

 嫌がらせの事もあって早く解決したい。そんな気持ちでいた。


 私は一人になりたくて、一人で帰りたかった。

 あまり人も乗っていない早朝に電車に乗った。


 楽しかったけど、やっぱりあの嫌がらせからも逃げてはいけないことだと思う。

私が誰かを傷つけてしまっているのを、きっと教えてくれたんだよ。

 みんなに優しくされているからって、甘えていた自分が許せなくなってしまったのだ。


 ボーっと電車に揺られこれからのことを考えていた。


 やっぱり何もなかったことにはできないよ。

 犯人はわかっていたから。


 携帯を取り出し、メールを打ち始めた。


<話しましょう。あのカフェで今日の夜、待っています。>


 安西さん、来てくれるかな。でもこのまま嫌がらせを受けるのはやっぱり耐えられない。


 友達になった日の事を思い出していた。

 安西さんは、初めから知っていて近づいてきたのかもしれない。

 そんな嫌なことばかりを考えてしまう。


 私が好意を持ってしまったのもきっと気づいていたんだ。


 私は、安西さんを傷つけてしまったんだ。

 謝らなきゃいけない。そう思っていた。


 少しの間だったけど懐かしくて、楽しかった。

 いい思い出として胸にしまっておこう。


 私は、あの家から出ていこう……。



 ゆったりした電車の中で窓の外を眺めながら、そう決心した。


 私の気持ちとは裏腹に、窓の外は、綺麗な風景だった。たくさんの緑や川や、綺麗な空。

 もっと清々しい気持ちで見れたらいいのに。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ