素敵な笑顔
「 あのマンションて…… 」
コウちゃんとあかりちゃんは、心配そうな顔をして私を見ている。そして、コウちゃんは、私に囁いた。
「 なつ。一緒に行ってはっきり言ってやろうか?」
「 いい!私は。一人で行く 」
そう私は強い口調でコウちゃんにそう言った。
そして、車から降ろしてもらいマンションへと向かって行った。
マンションに着いた私は、ポストを見て部屋番号を確認し、エレベーターへと乗り込んでいた。
カタカタカタカタ……
エレベーターから降り、部屋の前まで着いた私はすぐにインターホンを鳴らした。
ピンポーン
私は、手が震えて心臓がとび出てしまいそうなくらい、緊張している。
「 あ。あなたは…… 」
インターホンを鳴らしてすぐに出てきたのは安西さんだった。
私の顔を見た瞬間、少し気まずそうな顔をしていたけれど、やっぱり綺麗な人だった。
「 私、このままだとずっと気になってもやもやしてしまいそうだから。だから、今日はあなたにコレを私に来ました 」
私が安西さんに渡したのは、お店の住所が書かれている小さな紙だった。その紙を見ながら安西さんは私にこう言った。
「 これって……。私、あの時は嫉妬で周りが全然見えていなかった。あなたに凄く嫌な思いまでさせてしまって……ごめんなさい 」
安西さんは、物凄くつらそうで申し訳なさそうな顔をして、目を潤ませていた。
「 この住所は、私のお店の住所なんです。私はあの時、安西さんが初めてお店に来てくれたあの日。本当に嬉しかったから。だから……また来て」
私はそう言ってすぐに下を向き、エレベーターへと向かっていた。
安西さん……。やっぱり凄く綺麗な人だった。
あんな綺麗な人がつらそうな顔をしているのは耐えられない。あんなに、素敵な笑顔だったのに。
私はエレベーターの中でそう呟いてしまっていた。心にグッと何かが突き刺さるように苦しくなってしまった。
また……素敵な笑顔に戻れますように。
私は、心のなかでそう願っていた。