晴れる心
携帯を取り出した私は彼の連絡先を消去する事にした。
自分から連絡してしまわないように。
そして、せっかく手紙に私の全ての気持ちを託した事を無駄にしてしまわないように。
なんとなく、消去した瞬間から曇っていた心が晴れて前向きな気持ちになれている気がしていた。
もしかしたら私は、現在の彼を見ていたのではなく過去の記憶のまま止まってしまっていたのかもしれない。
現在の私は、過去の自分とはもう違う。
過去を振り返っていても心が曇っていくだけという事に今更ながら気づいてしまった。
彼の妹から言われてしまった事も私にはわかってしまう。
幸せを願う人からしたら、きっとあぁいう気持ちになってしまうのだろう。
私から去っていく事で、あの人が幸せになれるのならそれは、仕方がない事なのかもしれない。
あの言葉も私を深い悲しみから解放し始めていた。
窓から見える目の前の桜の木が少しの風で小さく揺れている。
桜の木を見ていると、私はなんて小さな事でくよくよと悩んでいたのだろう。
いつもそんな気持ちにさせられてしまう。
突然、閃いたかのように私は叫んでしまっていた。
「 あかりちゃーん!いるー??」
「 どうしたの?なっちゃん 」
あかりちゃんは、私の突然の大きな声に目を丸くしてこっちを見ている。
「 ちょっと買い物に行きたいんだけど、いいかな? 」
「 聞いてくるから待ってて! 」
そう言ってあかりちゃんは、こうちゃんの元へと走っていった。