雲ひとつない空
「 これって…… 」
あかりちゃんはそう言うと静かに涙を流していた。
「 あかりちゃん……? 」
私は小さな声でそう尋ねた。
写真の様に描かれた小さな子供と女性はもしかしたら……
私達はそれ以上何も言わなかった。
あかりちゃんは、涙をすぐに拭き取り笑顔でこう言った。
「 もう行こっか 」
沢山の思い出が頭の中を駆け巡っていたのだろう。
あかりちゃんの静かに流れていた涙がそう語っている。
それでも、一気に現実に戻されたかのようなそんな一言だった。
私はあかりちゃんの事を思うと胸が痛くなってしまっていた。
こうちゃんは、いつもよりもクールな表情をしていた。
一番、胸を痛めているのはもしかしたら、こうちゃんなのかもしれない。
いつもあかりちゃんを、一番近くで見ていてあかりちゃんの思いも全て知っている。
あかりちゃんのお母さんが亡くなった時も、あかりちゃんが病院に通ってお母さんに会えるとずっと信じていた時も傍にいたのはこうちゃんだったから。
クールな表情をしていたのは、考えている事を悟られたくなかったのだろう。
私達は、何も話すこともなくその場を後にした。
私達のそんな思いとは裏腹に雲ひとつない空だった。
まるでなにか引っかかっていたものが全て無くなったように感じる。そんな空だった。
私はそんな空をずっと見上げていた。
私にもずっと引っかかっているものがあったから、スッキリした空が物凄く心地よかったのかもしれない。
私の車椅子の音と二人の足音だけが聞こえている。
ただただ、今は何も考えずに空だけを見ていたかった。