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桜の木に寄り添う  作者: 月乃結海
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色んな表情

「 なつ、じっと見てないでちゃんと手伝って! 」


 私は、心配性でいつも守ってくれてるこうちゃんを見つめてしまっていたようだ。

 あかりちゃんは、そのやりとりを楽しそうな顔をして見ていた。


「 なっちゃん、私も一緒に手伝いたい!いいかな? 」


「 ありがとう。あかりちゃんお願いします 」


 こうちゃんは、いつものように手際よく料理をし始めている。


「 なっちゃん、こうやってみんなで居るとなんか家族みたいで嬉しいね 」


 あかりちゃんが嬉しそうにそう言った。

 家族か……あかりちゃんは、どんな思い出があるのだろう。

 人それぞれ、育つ環境は全く違うけれどあかりちゃんは、もっと複雑で寂しい環境だったのかな。


「 あかり!べらべら喋ってないで手を動かす! 」


「 なんかこうちゃんが、お母さんみたいだね 」


「 じゃあ、なつがお父さんかしら? 」


「 ちょっと!こうちゃん! 」


 あかりちゃんは、思いっきり笑っていた。

 こんなに思いっきり笑っているあかりちゃんを見るのは久しぶりかもしれない。


 普通な事が当たり前に見えて、難しい時もあるんだよね。

 私は事故に遭ってから、思い知らされてる。


 楽しく生きれる事が一番いいけど、今を思い返せば辛いことの方がもしかしたら多いかもしれない。

 だからこんなに思いっきり笑っていられる時間がもの凄く愛おしくてたまらなかった。


「 あかりちゃん、お願いがあるんだけど 」


「 何かなぁ? 」


「 内緒のお話だから後で部屋で話そう? 」


 私は小さな声であかりちゃんに聞こえるように話をした。


 出来上がったご飯を私達はテーブルへと並べ始めた。


「 こうちゃん、美味しそう! 」


「 まぁまぁの出来栄えね! 」


 こうちゃんが作ってくれたご飯は、私の大好きなオムライスだった。

 お母さんがよく作ってくれた思い出の味でもある。

 懐かしくて、でも作る人によって色んな表情を見せてくれる。

 私にとってオムライスはそんなメニューの一つだった。

 しばらくの間、私達はゆっくりと会話を楽しみながらそのオムライスを味わっていた。


 片付けも終わり、私とあかりちゃんは内緒話をした通りに部屋へと向かった。


「 あかりちゃん。前に連れて行ってくれたお花畑の場所へもう一度連れて行って欲しいんだ 」


「 うん、いいよ!でもどうして? 」


「 行ったら教えてあげるー! 」


「 え!?なっちゃんいじわるー 」


 そうして私達は、明日の朝に向かうことになった。


 おばあさんに教えてもらったあのアトリエへ……。



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