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桜の木に寄り添う  作者: 月乃結海
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震える手

 もう一度、もう一度だけ……私の気持ちをこの手紙に託そう。

 私はそう願いを込めて手紙を書き始めていた。



 ーヒロキくんへー


 あなたと再会してから色んなことを思い出しました。

 昔からの記憶、再会してからの新しい記憶。

 私にとっては、どちらもあなたと過ごした大切な時間です。

 もう一度、また会う事が出来るのなら会いたい。


  ーなつみよりー




 私は会いたい気持ちを手紙に託そうと決めていた。

 そして、私達が再会したあの場所へ手紙を託そうと。


 好きだと伝える事ではなく、会いたい気持ちの方が強くなっていっていた。


 もう二度と会わないと決めた日、どうしようもなく胸を締め付けられたようで苦しくてたまらなかったからだ。


 もう一度会って、想いを伝えるかは私にも分からない。


 ただ、ただ、会いたくてたまらない……


 会いたくてたまらない想いがあの手紙になってしまったのだろう。


 私達が出会い、再会したあの場所。

 一度は離れてしまったあの場所に。


 あの場所に手紙を置いても見てもらえるかは、分からない。

 もしかしたら、気づいてもらえないかもしれない。

 もう一度会うことは出来ないかもしれない。


 それでも私は、あの場所へ自分の想いをどうしても託してみたかった。

 昔は、託すことすら出来ずにいつの間にか離れてしまっていた。

 でも今の自分は、昔の自分とは明らかに違っていた。


 少しずつ、少しずつだけど変わっていったのだ。

 再会した事で、自分の気持ちを誰かに話せるようになっていった。


 気持ちも離れてしまったあの場所に、私はまた戻りたかったのかもしれない。


 いろんな想いを手紙に託した私の手は、小さく、小さく震えていた……




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