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桜の木に寄り添う  作者: 月乃結海
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過去と悪夢

 私の名前は、橋本なつみ。


 私の家の隣には、大きな、大きな桜の木がある。


 あの桜の木は、ずーっと私の成長していく姿を見守ってくれていることだろう。


 私が子供の頃、ある男の子と出会った。


 名前は……。


 今、あの子は何してるんだろう。

 突然、いなくなってしまった、あの男の子。

 目もぱっちりしていて、背も高かった。


 でも……突然いなくなってしまった。


 窓から見える桜の木は少しだけ小さく見える。


 もう一度だけ逢えるといいな。


 もう一度だけ逢えたなら。


 ……キキーーー!!


 ドン!


「は!またあの夢 」

 すごい汗だ。




「なつみー!朝ごはんだよー!」


「はーい。よいしょ 」


 カタカタカタカタ……


 私は、2年前事故にあってしまった。

 幸い、命は助かった。

 それからは、私は……トラウマを背負ってしまった。

 青信号で渡っていたのに、トラックがまっすぐ突っ込んできたのだ。


 それから車いすになってしまった。

 悲しさや悔しさは、沢山ある。

 でも事故のせいにして、生きているのも辛くてたまらない。

 助かった命を、大切に生きて行こう。

 少しずつそう思えるように。

 でも。悪夢はいつまでも私につきまとう。



「なつみ、顔色悪いよ。大丈夫?またあの夢を。」


「平気。心配しないで……今日のフレンチトースト上手くできたね!」


 バタバタ。


 お母さんは、いつも忙しそう。

 だからこれ以上、心配をかけないように生きていきたい。


 幼い頃からずっとそうだった。


 沢山の会話をした記憶があんまりない。

 友達が家族でいつも出かけていた、遊園地。


 数える程度は、行ったかなぁ。


 でも私は、我慢なんかしてないよ。


 わかっているから。

 幼い頃から、ずっと。


 子供の頃には分からなかったことが今になって、わかってくるようになる。



「でしょ?お母さん、今日仕事で遅くなるから。冷蔵庫に入ってるハンバーグ、チンして食べてね 」


「はーい。いってらっしゃい 」


 ガチャ。扉を閉める。

 お母さんは、いつものようにバタバタと行ってしまった。


 カタカタカタカタ……。


 はぁ……。


 ……私は部屋に戻り、窓の外を見ていた。


 もうすぐ春になる。

 温かい風が、春が来ることを知らせてくれている。


 もうすぐだなぁ。


 桜が咲くそんな季節に……。



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