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ひねくれ魔王に愛の手を!  作者: 涙涙涙
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5話 正義の味方?なにそれ

「やったー、やっと着いた!」


オレとダンテはてくてく歩きながらやっとの思いで人間の町にたどり着いた。二人とも翼を出していなければ特に人間と変わり無い姿だったので、入り口の警備兵に怪しまれることもなく入ることができた。


「お疲れさまでしたエルザーク様。わたくしはきっとたどり着けると信じておりましたよ」


「まぁ時間かかりすぎて夜になっちまったけどな。とりあえず今日の宿でも探そうぜ」


「それは構いませんが、エルザーク様は宿代をお持ちで?」


「え?お前金持ってないの?」


「今までお金を使う場面が一度でもありましたか?」


「......」


マジか。

確かに今までの生活は自給自足で着るものすらダンテが用意してたからお金を使うことなんてなかった。魔族の町に一度連れていってもらったことがあるのでお金の存在は知っていたのだが。


「んで、どうするんだ?」


「はい、どういたしましょう」


「まさかノープラン?」


「主の御心のままに」


ヤバい、殴りたい気持ちが溢れてくるが疲労感の方が勝っている。


「今回の人間界進出のテーマはずばり、エルザーク様の自立心を養うことなのです。わたくしとしては心苦しい次第ではありますが、魔族の王となるための修行と思い頑張っていただきたいです」


「チッ!よーは自分で何とかしろってことだろ?」


「流石、理解がお早いようで」


「腹へって怒る気も沸かんわ。さて、どうしたものやら、、、ん?」


二人が町の広場で話していると、目の前を一人の老人が大きな荷車を引きヨロヨロと歩いていく。


「危なっかしい爺さんだな、、、おいおい。前も見ないでそのまま行ったら。。。」


ガシャンッ


世紀末にヒャッハーしながらの暴れ回る輩のような格好をした冒険者風の男三人組の一人に爺さんは荷車の角を当ててしまった。


「ウオォォォッ!いてーよ、いてーよ兄貴ぃ!!」


「なんてこったぁっ!?俺様の弟分がぁ!こいつぁひでー、足が折れてやがる!」


タフガイ風なモヒカン男Aが足をおさえながら無様に痛がり転がっている。その横でモヒカン男Bがまるで慰謝料よこせという感じの声をあげる。モヒカン男Cはただただヒャッハーと繰り返している。


「あ...ああ......すみません申し訳ありません」


老人は素直にもモヒカンズの世紀末茶番に対し頭を下げ謝罪していた。


「謝って済むと思ってんのか、あぁん?どうしてくれんだ!?あぁん?」


回りに人々が集まり何やらザワザワとくちにしている。


「可愛そうに」

「またあいつらか」

「町の面汚しめ」

「爺さんも運が悪いなぁ」


当人たちには聞こえないような小声だが、魔族であるオレ達の耳には届いていた。


「、、、なぁダンテ。なんで誰も助けないんだ?同じ町の人間だから誰か一人くらい助けに入ってもいいんじゃないか?」


「流石はエルザーク様、よくぞお気付きになられました。ですが、それが人間というもの。口では綺麗事や偽善を並べ立てていても己の保身が一番なのでございます。全ての人間が、というわけではないのですが」


「ふぅん、自分が一番大事か。魔族と変わらないな。いや、物珍しさで他人の不幸を見物しないだけ魔獣の方がマシか。見ていて気分が悪い、行くぞ」


ここで助けにはいるとでも?

オレは正義の味方ではない。

強いものが生き弱いものは死ぬ。

そう、この世は実にシンプルなのだ。


モヒカン達が爺さんをいたぶる音が聞こえてきた。だが、オレには関与する理由など微塵も有りはしない。


「やめて!お爺ちゃんを許してあげて!」


オレとダンテがその場から離れようとした直後、老人の孫と思わしき娘が人垣から飛び出してきた。


(、、、か、可愛い。。。)


「おや、エルザーク様?この場を去るのでは??」


「、、、もう少し様子を見るか。これも人間を学ぶ機会だ」


「くふふふ、仰せのままに」


「なんかムカつく顔だな」


「ありがとうございます。いつもと表情は変わりませんが」


「それがムカつくんだよ!」


オレは正義の味方ではない。

ただ、女の子に免疫がないだけなのだ。

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