22話 制限
学校が終わり、オレたち四人は校門へ向かっていた。
「なぁなぁ、プラン先生の感触どうだった?やっぱすごかったろ!?」
ハウロが興奮した面持ちで問いかけてくる。
「ああ………」
「ふんっ!ウチだって大人になったらあのくらい………エルザってばデレデレしちゃって」
アカネが胸を強調するように仰け反り追い詰めてくる。
「ああ………」
「…………サワサワ」
シズネが「私だってあのくらい」という雰囲気で圧力をかけてくる。
「ああ………」
「ちょっとちょっと!何なのさっきから魂吐き出してる感じの返事ばっかして!?」
「プラン先生に抱きしめられてからずっとこーなんだよなぁ。まさか本当に骨抜きにされたのか?」
「………わり、先に帰るわ」
オレはみんなより足早に歩き出し離れた。
「あ………エルザ、どうしたの!?もうっ!」
「そっとしといてやろうぜ。思春期の男にはそういう時間も必要なもんだ」
「そういう時間って?」
「おいおい、男の口からそんなこと言わせんなよ。ま、明日になりゃ元に戻ってるだろ。俺たちも帰ろうか」
そういってハウロとアカネとシズネもそれぞれ帰路についていった。
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「ただいま」
「おかえりなさいませエルザーク様。おや?本日はルシア様とご一緒ではないので?」
「いつも一緒にいるわけないだろ」
「さようですか。それで………なにかあったのですか?」
「………わかるのか」
「ええ、それはもう。赤子の頃よりあなた様を見続けてきたのは誰だとお思いで?」
「それもそうか。ダンテ、少し聞いて欲しいんだがいいか?」
「何を今更。エルザーク様のご命令に背くことなどあり得ません。何なりと」
「散々背いてないか?………まぁいい、人間のことなんだが、、、」
オレは今日あった出来事をダンテに話した。
「ーーーなるほど」
「なんか、人間て脆いなって考えたらちょっと怖くなってさ。正直、どうやって接したらいいかわからん」
「そうですねぇ。。。では、こういう取り決めはどうでしょう?子供相手には本気で相手をしない、というのは?」
「いや、なんか違う気がする。確かに手加減するのはそうなんだが………そもそも、それなら知識の学習をするだけで人間界にきた意味がわからん」
「そうですね、むしろエルザーク様にはお友達と伸び伸びと過ごして欲しいのでそれはストレスが溜まるだけですねぇ………ならば、一つ奥の手を出しましょう」
「奥の手?なんだそれ?」
「エルザーク様の身体に負荷をかけます。封印、と言ってもそう変わりありませんが」
「封印?」
「ええ、わたくしの秘奥技ともいえるものですが、これを発動したらエルザーク様の力は制限され年相応の子供の能力しか出すことが出来ません。しかも、一度かけたら5年間解くことが出来ません。13才まで本来の半分の力しか出ませんが、いかがしましょう?」
「5年間か。。。」
結構長い。だが、魔界より格段に危険の少ない人間界なら生きていくことは問題ないだろう。
「………わかった。やってくれ」
普通の子供の視点で世界を見たい。
ただ純粋にそうとしか思わなかった。
「仰せのままに。。。では、参ります」
ダンテが精神を集中し体が淡く発行し始める。
『封印』
ズンッ!!
ダンテが術を発動すると同時にかなりの重みが身体にのしかかる。
「くっ、、、お、、、これはなかなかキツい」
腕を上げるのも足を一歩前に踏み出すのも鉛のように重い。
「さ、それで思うように力を出せないでしょう。なにも遠慮することはありません。存分に力を発揮してくださいませ」
重い体を進め外に出ると、細い木に向かってパンチを放った。
ガシッ!
細木は揺れただけ。
前は折ることくらいわけなかったのだが。
「なるほど、確かにこれは子供らしい、か」
あとは自分の思うままに動いてみようと思ったのであった。
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「くふふ、あれは体の鍛錬のため負荷をかける術。特に5年という制約はないのですが、解いたときのエルザーク様の成長ぶりが楽しみです」
そう、ダンテがかけた術はスポーツ選手が重たいアンクルなどをつけ体を鍛えるのと同じようなもの。無論、人間がつける重しのようなチンケなものではないのだが。術を解いたときのエルザークの身体能力を想像するとダンテは笑みを抑えられなかった。




