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ひねくれ魔王に愛の手を!  作者: 涙涙涙
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21話 人の子

午後の魔法講座を終え、オレとハウロは演習場に向かって歩いていた。


「次の授業で今日も終わりだな」


「あぁ、なんだか今日は疲れたよ」


歩いている途中、廊下で誰かが立っている。二人の人影、マコーレとその取り巻きだった。


「いやぁエルザ君、こんな所で会うとは奇遇だねぇ」


(あ、イヤミだ。って、名前忘れちまったな〜。2回ほど聞いたことはあったはずなんだけど思い出せぬ………顔から連想してイヤミでいいや)


オレは気付かなかったことにして通り過ぎた。



スタスタスタ………



「おいおいおい、ちょっと待ちたまえぇ!」

「おう、お前何無視してやがんだ!?マコーレさんが声かけてんじゃねーか、あん?」



オレは逃げ出した。

しかし、まわりこまれた!


「………なんだよ、なんか用か?」


オレが鬱陶しそうに答えると取り巻きボナンが起こって来た。


「なんだその言い方!?お前調子に乗ってんじゃ!!、、、、、」

「まぁ、待ちたまえ」


オレに向かって一歩踏み出した取り巻きボナンをマコーレが諌める。


「君は中々才に秀でてるみたいじゃないか。次の授業の実践で是非とも一手合わせたいと思ってねぇ」


「うん、断る」


スタスタスタ………


「ま、待ちたまえぇ!!」

「あ、あいつ、、、調子に乗ってますよ!完全に!!」

「ふん!まぁいい、無理矢理でも手合わせしてやろう」

「ま、マコーレさんが本気だ……!あの技がみれるぞ!!」


うるさい奴らだったな。

構わないのが一番。

平和が一番。



ーーーーーーーーーー



だったはずが。。。


ワーワー! キャーキャー!


「いけーエルザー!!」


「やっちまえエルザ!」


「…………グッ!」



親指立てて頑張れってことかシズネ?


いったいどうしてこうなった?



「さぁ!どこからでもかかってきたまえっ!!」


マコーレが木剣を手に挑発的なポーズをしてくる。


「マコーレさん!そんなやつとっちめてやってください!!」


「まかせたまえ!僕は王国騎士団員から剣術の手ほどきを受けているんだ。なに、怪我の心配などしなくていいよ?エルザ君、遠慮なくきたまえっ!!」


「いや、、、オレ剣とか初めて持ったし。木だけど」


「おやおや、闘う前からもう怖気付いたのかい?ちょっと魔法の資質があるからって大したことないもんだなぁ」


「別に魔法関係なくね?」


「御託はいい!そちらから来ないならこちらから行かせてもらおう!!」


マコーレが顔の横で木剣を握りしめ、オレに目掛けて突進してきた。


マコーレがあらわれた

どうする?



たたかう

にげる

まほう

どうぐ



「とりあえず逃げる」

(あんまり関わりたくない………なんだよどうぐって?しかも魔法使えないのにコマンド出す意味は??)


「ちっ、すばしっこいじゃないか!」


マコーレのこうげき

よける

マコーレのこうげき

よける

マコーレのこうげき

よける

マコーレのこうげき

よける


「はぁ、はぁ、、、おのれ!ちょこまかと、正々堂々戦え!」


「はぁ?攻撃避けてるだけだろ。それとも、お前は攻撃を避けないのか?」


「ふっ、当たり前だ。騎士道精神とは真正面からぶつかるものだ!」


いや、お前騎士じゃないよね?


「なるほど、ご立派だ。なら今度はこっちからやらせてくれよ」


「面白いっ!存分に打ち込んできたまえよ!!」


「なら遠慮なく」


オレは片手に握った木剣に力を込め頭の上に振り上げる。


「ふははは!なんだその構えは!?ど素人もいいとこじゃないか」


マコーレがイヤミな顔で笑い飛ばす。


(構えとかしらんし、初めて握ったって言ったの聞いてなかったか?人の話聞かないタイプだな)


「んじゃ、いくぜ」


「きたまえぇっ!」


マコーレが両手で握った剣を体の前で構えた。


深く息を吐き、深く息を吸う。

少し止める。


(そういえばダンテが武器を使ったところってみたことないな。参考になるものがない………こうか?)



何もわからないので、何も考えずにただ目一杯木剣を振り下ろした。



ヒュッ



バチィッッッッッ!!!!



「へ?」


とぼけた声が聞こえた。

マコーレが構えた状態から目を丸くしている。オレの振り下ろした木剣がマコーレの頭の上で止まっていて、それをただ見つめている。


勿論オレは止める気は無かったので止めてない。オレの剣を止めたのは、


「はーいそこまで!今回のところは引き分けってことで、ね?これは戦いじゃなくて授業だからねー♪」


プラン先生だった。


オレの振り下ろした木剣をしっかりと握りしめ、にこやかに笑って言った。


「せ、先生!これは男同士のれっきとした………!!」


「はーいはい♪マコーレ君も良い動きだったわよー。ご褒美よ!」


「うわっぷ!!」


マコーレがプラン先生に両腕で抱きしめられ足が宙に浮いている。


(おい………それ、いいな!!)


マコーレの顔が豊満なバストに埋もれている。息ができないのか、苦しそうにもがいているのは無視だ!うらやま!!


プラン先生に降ろされフラフラとした足取りでマコーレが取り巻きボナンのところへ戻っていく。


「あらー?エルザ君もご褒美欲しかったの?しょーがないわね!」


「お、おれは、別に………!!!」


有無を言わさず無理やり抱きしめられ宙に浮いた。


(うわぁ………なんだこの感触、弾力、柔らかすぎ、埋まる、息できね、死ぬ、それでもいい………)


そんなヘブン状態のオレの耳に恐ろしく冷気のこもった低い声が聞こえてきた。





「あなた、、、クラスメイトを殺す気だったの?」





「っ!?」


体がビクンと反応した。



「だ、大丈夫ですかマコーレさん!?あいつめぇ、、、舐めた真似しやが………ま、マコーレさん、その頭」


「んぁ?」


プラン先生の悩殺ハグでやられたマコーレの額に一筋の赤い血が流れる。


「う、うわ!ち、血だぁ!な、なんだこれ………ママぁーーー!!!」


マコーレは額を抑え泣きながら走り去った。



そんなやり取りが耳に入ってくる。



「あたしが止めなかったら頭カチ割られてたわね、あの子」


「………」


ヘブン状態から一気に冷める。

だが、次に聞こえてきた先生の声は、いつものようにあっけらかんとした声だった。


「もう少し力のコントロール覚えなきゃね」


「………ふぁい」


「良い子ね!さ、ご褒美おしまい♪」



さー授業続けるわよー、と言ってプラン先生は観戦してた生徒たちをまとめていった。



(別にあいつは好きな奴ではないけど、嫌いでもない特に無関心な奴だから、特に殺そうなんて気はなかった。でも、アレくらいで死んじゃうなんて、思ってもいなかったな………)



人間の子供。

魔族の子供。


背格好は同じようなものだけど、違うんだなと感じた。



(人間、か。。。)



オレはその後の授業のことは、あまり覚えていない。

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