18話 魔法の練習
さて、夕食後に湖のほとりまで来たオレは今日授業で聞いた魔法の復習をやるのだ。
勤勉だろ?
「ねぇねぇエル、こんなとこでなにするの?」
ルシアも行くといって聞かなかったのだが。。。
「魔力の練り方を練習するんだよ」
「あぁ、授業でやってたやつね。あたしは中学校だから他のみんなは別のこと習ってたけど。。。補完用の資料を渡されたわ、一緒にやろうよ!」
「………邪魔すんなよ?」
「しないよ、もうっ!で、何からやるの?」
オレがやろうとしてるのは『練る』だ。魔法の初歩の初歩、優秀な魔法使いなら呼吸をするようにできなくてはいけない基礎中の基礎。
先に説明しておくと、
『練る』で練った魔力を、
『巡る』で身体中を巡らせ、
『想像』でどんな魔法にするかイメージし、
『放つ』で魔法を発動。
それが魔法を使う一連の流れだ。
水晶玉を光らせた時は『練る』を行なった時の魔力を玉が感知して光った、というわけだ。
胡座をかいて水面に向かい、楽な姿勢をとる。あたしもー、と言ってルシアも横に座った。
「………あんまりくっつくなよ」
「いいじゃない誰も見てるわけじゃないし」
「そういう問題じゃ……」
ドキドキすんだよ。悟れ。
「そういえば、ルシアは水晶玉やったのか?」
「あ、エルもやったの?どうだった?」
「オレは、普通だよ」
「普通ってなんなの!?聞いて、あたしってばすごいみたいなの」
「はいはいすごいすごい」
「もー聞いてよ!あたしね、三段階目まで色が変わったんだ」
「………へぇ」
「あれ?あんま驚かない?」
「クラスメイトにも居たからな」
「へー、そうなんだ!でも一万人に一人の割合なんだって、すごくない!?」
「はいはいすごいすごい。で、何色だったんだ?」
「もー、驚いてない!!まぁいいわ、一段階目が『土』の茶色でね。二段階目が翠色の『癒』だったの、これはエルも知ってるよね」
ルシアに治してもらった頬を少し触る。
「ああ」
「でね、でね?三段階目がなんと、漆黒の色に変わって『闇』だったの!!」
「ほー、そりゃすごい」
「だから、驚いてないじゃない!?なんなのもー!!」
プンスカしてる。それも可愛らしいな。
「いや、本当に驚いてるさ。そんだけの素質があるんだ、すごいと思う」
素直に出た言葉にルシアがアタアタしてる。
「えっ?そ、そうでしょ?もう、もっと褒めて良いんだからね?褒めて。褒めなさい!」
顔を赤くして喜んでいる。
しかも最後は命令形とは、やるな。
「まぁ、それじゃ『練る』の練習でもしてみるか」
「うん、やろ」
気を取り直して、オレ達は魔力の練り方を練習し始める。
「えっとたしか、、、ヘソの下あたりにポッカリ穴を開けて器を作り、そこをクルクルと魔力の球が回るイメージを作り、器の中を満たしていく、よね。。。」
オレは下腹に意識を集中する。
(クルクル、、、クルクル、、、と。イメージはできるが、器が満たされる感が全くない。なんというか、巨大な瓶の中をビー玉サイズの魔力がクルクル回っているかんじ?わからないだろうなぁ………)
「。。。うん、なんだかお腹の下に魔力が溜まってきた気がするわ」
「え?マジで??」
ヤバい、オレは何も溜まってる感じがしない!溜まるのはもどかしさのみ!イメージ力が足りないのか?まさかの発想が貧困なやつ??
「えっと、次は練った魔力を身体中に巡らせる『巡り』ね」
(や、ヤバい!完全に置いていかれてる。くっ、なんという敗北感。急いで練るんだ!練る。練る。練〜る。練〜るね。。。ダメだ!全然満ちていかない!くそ!!)
「わぁ、魔力が身体中血液の様に駆け巡ってくるわ。あったかい」
(わぁ、ルシアの魔力を感じるぞ。オレの魔力はヘソの下辺りでカラカラ回ってるだけ。なんじゃそれ!?)
「つぎは『想像』ね。あたしの適性は『土』だったから、え〜と。。。土で山をつくってみるわ」
(はいはい、作れば良いさ。砂の城を)
「身体を巡ってる魔力を手のひらに集めて、、、えいっ!」
ズ、、ズズ、、、、ズモモモモモモッ!
地面が揺れたのを感じて目を開けると、地に手をついたルシアの目の前に大きな山が形成される。
「やったぁ、できたわ!!」
パチパチパチ………
「おめでとさん」
「エルは、どんな感じ!?」
「なんか、全然ダメっぽいわ。魔力がカラカラ空回ってるって感じ」
「そうなの?なんかやり方が違うのかなぁ」
「いえ、間違ってはおりませんよルシア様、エルザーク様」
いきなり声をかけてきたダンテ。
オレ達は驚き後ろを振り向いた。
「こんな夜更けまで魔法の練習とは、わたくし感服いたします。ですが、もう遅いゆえ明日の学校にも差し支えてはいけませんのでここまでにいたしませんか?」
「ああ、そうしようか。ただ、方法が間違っていないのに出来ないのは何故なんだ?」
「それは、エルザーク様がもう少し魔力の使い方を覚えてからにいたしましょう。できないとはいっても、小さいとはいえ炎を出すことはできますでしょう?」
「それは、そうだが。。。」
「ま、まあそんなに焦らないでゆっくり練習していきましょ。あたしもずっと付き合ってあげるから」
ルシアが笑顔でオレに言ってくれた。
「別に焦ってなんか、、いねーし」
オレは立ち上がり家の方に向かい歩き出した。
「お心遣いありがとうございます、ルシア様」
「いいの。あたしも楽しいし。さ、帰りましょ」
「はい」
オレに続いてダンテとルシアも歩き出した。




