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ひねくれ魔王に愛の手を!  作者: 涙涙涙
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15話 鷲掴め!

「は〜、まじビビったけど」


ハウロが驚いた声をあげる。


「ウチも!なんなのあれ?」


アカネも目を丸くしている。


「………ジー」


シズネさん?

あんまり見つめないでくれないか。


「………オレにわかるわけないだろ。たまたまだよ、たまたま。水晶玉も壊れちまったし、きっと古くなってガタがきてたんじゃないか?」


「そうなんかなぁ。。。」


よし!

押し切れそうだ。


「まぁ、エルザが特殊な奴だってわかったな。これからも面白くなりそうだぜ」


変な奴扱いするな。

初日からイジメだろ。


「あぁ、そうなるといいな。んで、次が今日最後の授業だな。どこに行けばいいんだ?」


「下学校の実践講座は屋内だから演習場だよ。みんなで行こうぜ」


中学校以上になると外の地形を利用した講座になっていくらしい。

オレたち四人は移動を始めた。




ーーーーーーーーーー



「はーい、それではみんなよく聞いてねー」


バインバインという音がオレには聞こえた。


「……実践講座って、プラン先生なの?」


「そうだよ。ああ見えてもプラン先生、メチャクチャ強いんだぜ!」


胸元の空いた白いシャツにタイトスカートで黒ストッキングのままやるのか?

エロスだろ。


「そうそう、ウチらじゃ束になっても敵わないよ。昔は名のある冒険者だったらしくて『閃光のプラン』って異名があったらしいわよ」


なんだその安直や厨二的二つ名。

オレも欲しい。


「ふーん。でも、女が強いなんてイメージできない、、、、、な。。。?」


ハウロ達と話していると、いつの間にか目の前に黒ストッキングが。いや、先生の足があった。


「ふーん、女だから、ね。エルザ君、君魔法講座ではエライ騒ぎを起こしたらしいじゃないの。実践講座では何を見せてくれるのかなぁ??」


や、ヤバい。。。なにこの雰囲気。

油汗がとまらん。

てか早!ハウロもアカネもシズネもあいつら一瞬で離れやがって、くそ!


「いえ、、、オレはうちの変態執事しか戦いを見たことがないんでなにも。失言でした」


「執事??まぁいいわ。どうせみんな実践で体を動かすんだから、貴方が一番最初の相手ね」


「………お手柔らかに」


「大丈夫、男の子でしょ」


なんの理由にもなってないぞそれ。


「じゃあみんな、今日は近接戦闘における体さばきについて教えるわね。これは戦士系も魔法使い系も関係なく覚えておいて損はないわ。女の子も護身術に活かせるしね。さぁエルザ君、どっからでもかかってらっしゃい」


「全力で、ですか?」


「もちろん♪あ、女の子に当てたら……とか考えなくていいからね。当たらないから。思いっきり当てにきちゃって!」


(そんなこと言われてもこっちは免疫力ゼロなんだよ。まともに見られやしない。まぁ、ダンテと組み手する感じでいいか。この先生かなり強いらしいし)


肩の力を抜き腰を落とす。


「んじゃ、、行きますよ」


「ほい、おいでおいで」


プラン先生が無防備にも両手でおいでおいでしている。


(行ってやるぜその胸に!!!!)


先生の胸元に、、、もとい、

先生に向かって勢い良く飛び込む。

この演習場の床はタタミという草を編んだものを貼った板が敷き詰められているため動きやすい。


思い切りプラン先生に向かい突きを放つ。


スッ


避けられた。


「あらー、けっこう早いわね。先生油断してたら触られちゃうかも」


大き過ぎる胸元で腕を組みイヤンイヤンのような動きをするプラン先生。


「………さすがに、動きがいいですね」


ちょっと本気出します、と言った瞬間に先ほどの三倍ほどの勢いで飛び込んだ。


「うそ、はや、、、」


先生のシャツを突きがかする。


「………もう少しで、触れられますかね(そのけしからん乳に!)」


先生に向けかまえる。


「できるものなら、好きに触っていいのよ?」


カワエロい口調とは裏腹に、プラン先生の目つきと雰囲気が変わった。


「じゃあ、、、遠慮なく!!」


本気で飛び出す。

踏み込んだタタミがえぐれる。


(くっ!早い!やはりこの子、、、普通じゃない!でも、、、)


オレがプラン先生に触れると確信したとき、先生の体がバチッと放電した気がした。次の瞬間、


ズパーンッ!!


オレはタタミの上で天井を仰いでいた。


「ぐはっっっ!!」


(な、なにが、、、起きた?)


打ち付けられた背中がジンジンと痺れている。上からプラン先生が覗き込んできた。


「ふふふ、まだ触らせてあげない♪もう少し大人になったらまた挑んできてね」


さぁ皆んなもやり方を覚えましょう、と言いながら他の生徒にもやり方を教え始める先生。


「………やれやれ。人間も強いやつ、いるじゃねえか」


誰にも聞こえないような小声で、天井に向けて呟いた。


「惜しかったぞー」「すげー早すぎね?」というアカネとハウロの声がした。


そういえばダンテ以外とこんなことするのは初めてか、と思い、倒されてはしまったが悪い気がしないオレだった。


そんなオレに向けられる視線に、オレは気付かない。



(、、、なんて子なの。雷魔法を纏い瞬間的に速度を上げるあの技を使わなければ、胸を鷲掴みされてたわ。冒険者のとき以来ね、こんな感覚。。。)



プラン先生の背中に冷や汗が流れていたのは、誰も知ることはないのであった。

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