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ひねくれ魔王に愛の手を!  作者: 涙涙涙
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14話 水晶玉の色

さて、午後からは楽しみにしている授業がある。魔法講座と実践講座だ。


強い執事がいるじゃないかって?


あいつは先生には向いてない。

魔法を習えば消し炭にしようとするわ戦闘を学べば死の淵まで追いやられるわ。手加減というものを知らないからだ。


本人ダンテ曰く、髪の毛一本で埃をとる作業くらい丁寧に手を抜いてやっているという。まるで参考にならない。


こういう段階を踏んで学ぶ場はこれが初めてなのである。



ーーーーーーーーーー




「ーーーーというように、魔力を操るのは強いイメージの力が重要となってくるのであります」


今は魔法講座の時間で、白く長いヒゲを生やしたおじいちゃん先生が説明している。


(ふむふむ、魔法はイメージ、と。

誰もが使うことのできる

『火』『水』『風』『土』

の四大元素魔法があり、

才能と努力などきっかけ次第で開花する

『雷』『重力』『召喚』『癒』

の特殊魔法。これは未だすべての種類が解明されていない、と。

先天性のもので、生まれたときにすでに使えるかが決まる『聖』『闇』の二極魔法、か。色々あるんだな)


オレは真面目に授業を受けていた。


(そんなんカケラも聞いたことないぞ!あのダメ執事!!)


はて?と首を傾げたダンテの顔が浮かぶ。

くっ、今すぐ殴りつけたい。


『魔法はグッと溜めてグルグルっと巡らせてシュババンッと放つのです』


と言ってたのを思い出し溜息が出る。


(ちゃんと学べば今頃マシな魔法が使えてたんだな。学校もなかなか面白いじゃないか)


この機会にオレはせっせと知識を溜め込むことにした。



「さて、それでは今年初めての魔法識別テストを行います。前の席の人から順番に教壇の前に並んでください」


おじいちゃん先生の指示で生徒たちが一列に並ぶ。


「識別?なんだそりゃ」


「そーいえばあんた初めてね。先生の前に置いてあるあの水晶玉に魔力を込めると自分の適正魔法がわかるのよ。一段階目の変化で四大元素魔法のどれが得意かわかるわ。ちなみにウチは水晶玉が赤に変化したから得意魔法は『火』よ」


髪の色とお揃いでしょ、と髪をかきあげながらうっふんとアカネが説明してくれた。

十年後にまたやってくれ、出直せ。


「そうそう、俺は入学したときは緑に変わったから得意魔法は『風』だ。けっこう便利な魔法が多いんだぜ」


爽やか系は『風』か。

どことなく適正はその人柄を表してるのかもなと思った。


話してるうちに「おぉっ!」と周りから声が上がった。


七三分けサラリーマンよろしくのような髪型をしたイヤミな顔をした身なりの良い男の子が触れた水晶玉が紫になっている。


「あいつは、、、どっかで見たことあるな。紫色は、なんだ?」


「『重力』だよ。しかもエルザの足を引っ掛けて転ばそうとした相手だよ、覚えてないの?名前はマコーレ、貴族の息子さ」


「ふーん、あいつか。んで、『重力』って珍しいのか?」


「おいおい、後天的に開花する形の特殊魔法は下学校じゃ人クラスに一人いるかいないかくらい珍しいんだ。中や上、大学校じゃそうでもないらしいけどな。でも、オレたちの年で水晶玉が二段階まで変化するのは相当珍しいんだぜ」


説明さんくすハウロ。


「ただ、そんな二段階変化すらも霞んで見えるのが。。。」


『はい、次の方』


「………」コツコツ


「近くにいるんだぜ」


綺麗な黒髪ロングの女の子が、そっと水晶玉に触れる。


水晶玉がまず『水』よ青に変わり、


「おぉっ!」


二段階目の『癒』を表す翡翠色に変わる。


そして、


「特殊魔法は百人に一人と言われているが、町に唯一ある教会の神父様の孫娘であるシズネの適正は……」


三段階目に水晶玉が金色に光り輝く。


「一万人に一人が持つ『聖』だ」


周りの生徒が声を出すこともなくその光景を見ていた。


数多の生徒を送り出してきたであろうおじいちゃん先生も低く唸りをあげている。


「………『聖』か。。。」


(そんな凄い素質を持つやつがクラスメイトとはな。。。魔族のオレとはまるで正反対だ)


シズネが周りから羨望の眼差しを受け恥ずかしそうにテテテと帰ってきてアカネの後ろに隠れる。


「さて、俺たちも行くか。エルザは何色だろうな」


ハウロがニカッと笑い列に加わる。


(オレは。。。『闇』かな?フッ)


そんなあたりガチャみたいに出るものか。

とはいえ、何が出るかワクワクしてしまうのが男の子。


「あー、今年も同じだな」

「ウチもー」


前に並ぶハウロとアカネが終わり、いよいよオレの番がきた。


「君は、、、転校生のエルザ君だね?では、力を抜いて水晶玉に魔力を注ぎ込んでごらん」


おじいちゃん先生に言われて水晶玉に手を置く。


(えっと、魔力の練り方はさっき聞いた通りにやると………)


目を閉じて、腹の下、ヘソのあたりに意識を集中し、そこから螺旋を描くように身体中へ血液が回るイメージを込める。



ポウッ



後ろの方で声がする。


「エルザ、赤くなってるからウチと同じ『火』が適正じゃな、、、い?」


疑問形?

なんだそりゃ?


不思議に思い目を開けると、水晶玉が

赤から青、青から緑、緑から茶色に順番に変化していく。


「こ、、、これはっ!魔導帝国の姫君と同じ現象!!う、噂には聞いていたが、、、」


おじいちゃん先生が激しく狼狽えている。

しかしそれだけでは収まらなかった。


恐らく二段階目の変化であろう色が灰色に変わった。


「は、灰色。。。?先生、これは!?」


「は、初めてじゃ!こんな色見たことも聞いたこともない!!」


そうなのか?なんか変人と言われてるみたいでなんとなく嫌だ。


「ま、まだ変わるの!?」


三段階目、とでも言うのであろうか。


更に濃い灰色。鈍色のような灰色に色が変わった。


「む、、いかん!エルザ君、手を離すのじゃ!」


「えっ?」




ピキ………





パリンッ!!!




目の前で水晶玉が音を立てて割れた。


「うわ、割っちゃった。。。先生、これって弁償??」


恐る恐る呆然としているおじいちゃん先生に聞いてみた。


数秒あき、ハッとした先生がオレの顔を見て答える。


「い、いや。これは学校の備品として扱われているから不意の事故で壊れても弁償はせんでも良い。だが、、、君は一体……」


「………ただの転校生です」


正直悪目立ちはしたくなかったが、周りの生徒からはまん丸の目で見られている。

なんとなくバツが悪くさっさと自分の席に戻っていった。


(魔族ってバレてないよな??)


アカネもハウロもシズネも、驚いた顔がまだ収まらないでいた。

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