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ひねくれ魔王に愛の手を!  作者: 涙涙涙
11/24

11話 寝相

チュン………チュン………


いつの間にか寝ていたようだ。

小鳥のさえずりで目が覚めた。


昨日は色々なことがあったからな。

精神的にも疲れて居たのだろう。

かなり熟睡した感があり頭が冴えている。


ルシアが用意してくれたベッドも、なんだか良い匂いがしてアロマの様な効果もあったのか。とても気持ち良く眠ることができた。暖かい感触に、まるで身も心も包まれているようだった。


そう、今まさにオレは包まれている。


目を開けても目の前が暗いのだ。

朝日が眩しいなんて一言も言ってないだろ?


ふよふよと柔らかい感触。

頭を包む華奢な両腕の感覚。

鼻先に当たる柔らかな感触と香り。


流石のオレでも何が起こってるか気付く。

ナメンナヨ


今のオレにできること?

決まってんだろ。



叫ぶのさ。




「うおおぉぉぉっっっ!!!!」



心臓が飛び出るほどバクバクしてる。

口から飛び出てないか?

よし、大丈夫だ。


勢い良く離れたオレの寝ていた場所には、ルシアが可愛らしい顔を更に可愛らしくしてスヤスヤ寝ていた。


くっ、かわいすぎる。


オレの雄叫びを聞いても起きやしない。

なんてお寝坊さん。


「はぁっ、、、はぁっ、、、」


落ち着いて呼吸を整える。

ふぅ、もう大丈夫だ。

ゴメンうそ。

全然大丈夫じゃないのよ。


わかるか?

今まで女の子を見たこともないんだぞ?

「手を握ったのなんて小学校以来だ」

なんて言って慌てるどごぞの主人公なんかより遥か後方からのスタートなんだ。


(くそっ!なんでこんなに可愛い、、、じゃなくて!なんでオレと一緒に寝てるんだこいつ!?)


「ルシア様が眠られて5分くらいしてからでございますよ。コロコロと転がられて何処へ行くのやら思っておりましたらまさかエルザーク様を包み込むとは………」


「………ダンテくん?」


「はい、なにか?」


「君は何をしてるんだ?」


ベッドから少し離れた場所の椅子に座り、大きめの紙に何やらすごい勢いでペンを走らせている執事服がいる。


「あぁ、これはデッサンと言いまして紙に絵を描いているのでございま………」


「んなこたわかっとるっ!!なにニヤニヤしながら書いてんだと聞いてるんだよ!」


ニヤニヤした顔が更にニヤニヤして目が糸目というより無くなりそうだぞ。

鏡見てみろ。


「はい。エルザーク様が大人の階段を登られるのを見てわたくし居ても立っても居られずにこの光景を後世に残しておこうと…」


喋りながらもその腕は止まらない。

もはや六本くらいに増えて見えるほどの速さで書いている。


「この……っ!?変態執事!よこしやがれ!!!」


オレはベッドから飛び出しダンテの持っている紙を奪いとった。

どう書いてるのか目をやってみる。


………んま!なにこれ?写真?

絵の中でオレがルシアに抱かれて二人一緒にスヤスヤ寝ている。


「わたくし、少々絵心がございますので」


「んなこと聞いとらんわーーーっ!!」


オレは両手を広げるようにして絵を真っ二つに引き裂いた。

更にそれを重ねて半分に、更に重ねて半分に………

できる限り細かく切り裂いた後に両手で握り込み火をイメージして魔力を込める。


ボッ。。。


「へへ、こんな恥ずかしい物残されてたまるか」


恥ずかしいとは思いつつ、こんなに上手くかけている絵を燃やしたのはちょっとやり過ぎたかなと思いかけた瞬間、


「よもや火の魔法をそこまで使えるとは、感服致します。では、今回は360枚で止めることにしましょう。一度ずつ角度を変えて書きましたが二周目に入ってしまいましたので」


………なにしてんの?

どんだけ書いてんだこいつ。

ていうか、寝るときはお前が間に入ってルシア、ダンテ、オレ、の順番で川の字に寝るんじゃなかったのか!?


「わたくし一睡もしておりません!」


「威張んな!誇んな!読むな!」


はぁ、、、朝から疲れる。。。



ーーーーーーーーーー



「う〜ん………おはようエル、ダンテ」


ルシアがまだ眠そうに目をこすりながら下に降りてきた。

あれだけ騒いだのに起きやしなかった。

どんだけ眠り深いんだ。

女の子ってみんなこうなのか?


「………ああ」


「おはようございますルシア様。昨日はグッスリとお休みになられたようで」


「うん。なんだかとってもあったかくて、とても素敵な夢を見ているみたいだったわ」


「それはそれは。たいへん喜ばしいことでございます」


「………お前、それ以上喋んな」


「はて?なにかお気に召さないことでも?」


「??なにかあったの?エル」


「………なんもねぇよ。髪ボサボサだぞ」


「えっ………?」


オレに言われてルシアが少し膨らんだ頭に両手を当てる。


「あっ!きゃあ!もう、見ちゃだめー!」


そのままパタパタと水場へと駆け込んで行った。


「おやおや、エルザーク様にはもう少しレディとの接し方を覚えてもらわないと」


「オレも執事に主人をおちょくらないように躾なきゃいけんな」


はて?という顔をするな、お前のことだよ!


そんなやり取りをしているうちに台所から朝食を用意していたゼベットが出てきた。


「エル殿、ダンテ殿、朝食にしましょうか。おや?ルシアも起きてきたと思ったが………」


「おはようお爺ちゃん」


先ほどの慌てぶりと寝癖が嘘のように落ち着いたルシアが戻ってきた。


「ああ、おはよう。さあ皆んなで朝食を食べよう」


今日の朝食はパンと昨日のスープの残りだ。


「「「いただきます」」」


食べながらダンテが言ってきた。


「エルザーク様、しばらくの間ゼベット様の家でお世話になることになります」


盛大に口の中のパンを吹き出しそうになる。


「あっ!?なに勝手に決めてんだお前!」


「いいえ、勝手ではございません。きちんと家主であるゼベット様とルシア様のお許しを得ておりますので」


「家主と話して主と話さないのはどういうわけだ?言ってみろ」


「あ、、、もしかしてエル迷惑だった?」


ルシアの表情があからさまに曇る。


「………別に。そんな事言ってないだろ」


ルシアの表情があからさまに明るくなる。


「じゃあ、決まりね」


「だから勝手に、、、はぁ。もういいわかったよ。少しの間世話になる」


「ふふふ、改めて宜しくね、エル」


ルシアがあからさまに喜んでいる。

ふと思う、あからさまってどちら様だ?


「やれやれ。素直に喜んでも宜しいのですよ」


オレはダンテの言葉にあからさまに嫌な顔をした。おぉ、オレ様だったか。


「なんでオレが喜ぶんだ?だいたい、毎晩あんな風に抱きつかれてたら暑苦しくてかなわんぞ」


柔らかいし、いい匂いだし、可愛いし。

ん?これは喜ぶところなのか?


「えっ!ちょ……なにそれ?」


「なんじゃルシア、まだ治ってなかったのか?眠るとき誰かに抱き付く癖は」


「な、なにそれ、、、、、???」


ゼベットの説明にルシアの顔はリンゴのように赤くなり始めた。


「そら当の本人は寝てる時は知らんし、抱き付いた相手が起きても寝続けてるからな」


「う、う、うそよ!!」


オレの指摘にルシアの顔はトマトのように赤さを増した。


「でも誰でも抱きつくというわけではないのじゃぞ?ワシやルシアの両親くらいだったんだがな。。。」


「おや?それはルシア様がエルザーク様と身内のように親しくなったということですかな?」


「なっ!?昨日会ったばかりでありえるか!」


「エルザーク様、重要なのは時間ではありません。質です」


「うるせー!」


オレまで恥ずかしくなってきた。


「あ、あ、ありえないわ!あたしがこんな年下の子供と………」


「二つしか変わらんだろ、、、」


「いいえ、ルシア様。こちらをご覧ください」


ダンテがどこからか大量の紙を取り出し扇を開くように円を描いて広げた。


もちろん、ダンテ特製のデッサン画だ。


「っっっっっっっっっ!!!???」


ルシアはもう声も出ないようだ。

赤面だけではとどまらず、頭から湯気が出始めた。大丈夫か?

オレもクソ恥ずかしすぎるが。。。


「ほぅ。。。これは……」


「おや、ゼベットはお分かりになっていただけましたか」


「ふむ、ダンテ殿。一枚いただけると、、、、」


「おまかせを。どの角度が宜しいでしょうか?」


360°全方位から描かれた絵をパラパラマンガのようにゼベットに見せるダンテ。


「い、、、、いやあぁぁぁっ!」


ルシアが走って二階に逃げ出した。

そらそうだ。

オレはもうすでに耐性、というかこの変態の行動には慣れてきている。

クソ恥ずかしいがな。

諦めたら勝ちだ。


ルシアが降りて来る頃には昼を回ってしまった。ダンテとゼベットが二人掛かりでなんとか機嫌を直してもらったようだ。


そして二階のベッドには、木の板で仕切りがなされていた。

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