日常①
親しくしてはいけない2人が惹かれ合うのが好きです。
天使と悪魔を扱いますが、宗教的にはかなり無茶苦茶です。好きなところだけを取った世界観で構築されています。
渡り廊下を駆けてくる音がする。
「ルカっ」
あぁ、やっぱりね。
私はゆっくりと振り返る。できるだけ無表情で。
「どうしたの天ヶ瀬さん。何か御用?」
彼女が急ブレーキをかけて目の前で止まった。
「なんでそんな他人行儀な言い方するのよ。ルカのばか。」
ふくれっ面をしながら文句を言うのはいつものこと。おそらく図書館から戻る自分を見かけて「こちら」へやってきたのだろう。
「格段の用事がないなら行くわ。第一、『白衣』の者がこちらに渡ってこないほうがいいんじゃない?」
グッと押し黙った彼女を置いて、私はその場を立ち去った。
そんなことがあったのが、今日のお昼。
私と彼女は二人だけの秘密基地で落ち合っていた。
「ねぇ杏寿、昼のこと怒ってるでしょ。」
あまり話の進まない彼女・天ヶ瀬杏寿はまたもふくれっ面であった。持参したクッキーをつまみ、紅茶を一口飲んでから杏寿は口を開いた。
「あの場では仕方ないって分かってるけど、苗字さん付けは嫌なの。」
「だってクラスメートが傍にいたもの。仲がいいってばれたらお互いまずいじゃない。」
「変。やっぱり変。同じ学び舎なのに関わっちゃいけないって。」
そう、私たちが在籍する学び舎には通称「白」と「黒」の二つの科が存在するのだ。そしてそれぞれの科は制服も日々過ごす棟も完全に分けられている。違う科の者と必要以上に関わることは忌避され、親しくしているところが見つかれば少なからず罰せられる。
「救世主様は昨今我々の融合を目指されているのよ?なぜそれに逆行したいのかしら。」
と杏寿は続けた。
「『融合』なんてしたら、存在意義がなくなるわ。天使と悪魔は争い続けなきゃいけない。この世の構造はきっとずっと変わらない。」
そう言うと私も杏寿も黙り込んでしまって、掛け時計が時を刻み続ける音だけが残った。




