蓮メリ小話
ありがちな内容。
蓮メリが会話してるだけのお話。
「……もう6時すぎてるわ。いわゆる逢魔時ね、メリー」
隣を歩く黒に白リボンの帽子を被った少女が空を見てそう言った。
秋の日は釣瓶落とし、もうすでに陽はほとんど落ちて辺りは薄暗くなり、空には半分に欠けた月と宵の明星が輝いている。
彼女は逢魔時と言った。
薄暗い、昼と夜の境界、そんな時間帯。
人間の活動する昼の明るい世界から、怪しいもの達 ……たとえば妖怪達が活動を始めようという夜の暗い世界に変わりゆく、そんな時間帯。
もっとも今の時代、そういった怪しく薄気味の悪い暗闇を探す方が難しく、人びとの暮らす街は夜になっても煌々と灯りに照らされている。
「…ねえ、メリー?聞いてるの?」
「ええ、聞いているわよ。逢魔時でしょ?」
「そう、逢魔時。聞いてたのね」
「ちゃんと聞いているわよ。あなたの話すことだもの。それで?逢魔時がどうかしたの?」
私が蓮子の話を聞いていないハズがない。
たとえ其れがどんな時であっても。
「うん?別にどうってワケじゃないのよ。ただそんな時間帯だなぁって」
てっきり私はまたよくわからない所に行く話になるのだと思っていたのだけれど、ただの思い付きで口に出しただけだったようだ。
「そうねえ 、そんな時間帯ね。物陰から怪しいなにかが覗いているような」
「怪しいなにかってなによ。変質者?」
「逢魔時は変質者の出る時間帯の事なのかしら?
…確かにそれも出るのかも知れないけどね」
変質者は妖怪でも幽霊でもない 、怪しいなにかなのは確かだけれども。
「じゃあなにが出るって言うのよ。…まさか妖怪とか言うんじゃないでしょうね?非科学的にも程があるわよ?メリー」
「そうねぇ、でも面白そうじゃない?妖怪が本当にいるのなら」
「いるとしたらこの時代はとても、とっても棲みにくいでしょうね。妖怪の存在を誰も信じない、誰も恐れないこの時代」
「どこかの人里離れた山奥なんかでひっそり暮らしているのかも知れないわよ?」
「もしもそんな所があるのなら行ってみたいものね。…あなたのその目で其所との境界でも見つけられないかしら」
「…そんなに都合よく見つかるものじゃないわよ。それに、そんな場所があると決まった訳でもなし、探すだけ無駄よ?」
「そうよねー。妖怪が潜む山だなんて非科学的にも程がある」
「そうね。でも、もしもあるとわかったら、非科学的だなんだって言いながら、きっとあなたは意気揚々(ようよう)と向かうんじゃないかしら?」
「あはは。そうね、メリー。きっと私なら行くと思うわ!その時メリーは私についてきてくれるのかな?」
「そうねえ……ついて行くんじゃないかしら、きっと。……もしも私が先に行ってしまったらあなたは追いかけてきてくれるのかしら?」
「あなたが先に行く事なんてあるのかしらね、メリー。でももしメリーが先に行くような事があったら私はすぐに追いかけるわよ。それで文句言ってやるんだから、なんで私を置いてった!!ってね」
そう言えばこう云うヤツだったわね。
私が先にいってしまったって、きっとすぐ追いかけて来るのだろう。
何処にだって。
読んで下さりありがとうございました!