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私を心の底から愛して  作者: 湊 悠美
天才教授は誰?
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良太視点 皇族に流れる血

連続投稿二発目〜


少し人権無視の発言があります

後書きにオブラートに包んでまとめますので、人権無視発言を読みたくないかたは後書きまで飛ばしてください




 捕獲してくるっと言って、走っていった紫苑。羽織った白衣がなびいて、その下の彗星高校の制服が見えてしまっている。そんなことより、重要なのは


「父さん。紫苑って、ヒール履いてるよね?」

「10センチのものをな」


 はぁと溜息を吐く僕達を尻目に、細いヒールをカッカッカッカッと言わせながら、物凄い速さで走る少女の姿。あれって、骨格どうなってんだろう?紫苑曰く、妖狐の身体能力だと言っていたような。


「良太。皇族の秘密、知りたいか?」

「えっ?」


 考え込んでいた僕に、父さんは意外な言葉をかけてきた。幼いころから、皇族しか知り得ないことを教えてもらってきたけど、まだ僕には言えなかった事があったの?それに、周りには人が……っ!!


 慌てて周りを見ると案の定、誰も居ない。今まで、周りを歩いていた患者も、こちらを見て怯えた医者や看護師も。まるで別空間に来たかのように誰も居なかった。


「紫苑()が気をきかせてくれたんだ。去り際、十分に話をしておいでっと、言われたからには伝えなければならないしな」

「紫苑()・・・・」


 僕達は、飽く迄も親戚なので、決して紫苑に敬称を付けない。紫苑と、色家の子どもたちと、川之宮新雪、水之宮月光、などの方々に敬称をつけるのは、その方々の本当の身分に対する話のときだけ。つまり、父さんが紫苑に敬称を付けたということは、それは神に関する事ということになってしまう。


「良太。日本書紀や古事記は知っているか?」

「あぁ、知っているよ」


 日本書紀・古事記。この二冊は、天地開闢てんちかいびゃくからある天皇までについて残した、文学的価値も歴史的価値も高い作品。


「不思議に思わなかったか?書物に残る事と現実が違うことを」

「思ったよ?だって、紫苑様は月光様や新雪様と仲がよろしいから」

「では、何故そのような描写が残ったか考えたことはあったか?」


 そう言われて、考えたけど何一つ思い浮かばない。なんなら、功兄さんに…ってあの人も神だったよね。え~っと。


「作者は何かは知っているだろ?」

「人間でしょ?」

「そう、人間だ。ここが、一番のポイントなんだ。これを書いたのが人間だとしたら納得がいくだろう?」

「自分の思い通りにするためか!?」


 よく考えてみたら、納得はいく。人間が権力のために、神々の歴史を改竄したとすれば。そして、そんな事を気安く言えるわけがない。そんな事をしてしまえば、いままでの歴史という歴史は変わってしまうから。書物の全てが真実ではないとなれば、この世の歴史は全て(・・)証明されなくなってしまう。


「…家の家系ってさ、先祖があの方々だからかな?こんなにも、気づきたくもないことに気づいてしまうのは」

「それもあるだろう。まぁ、皇族の租と言われる神子は、思兼命を伯父に持つからな」


 そういわれ、功兄さんの子孫でもあると思ったら、ちょっと寒気が止まらなくなった。いや、誰だってあの変人ストーカーの子孫って知りたくなかったでしょ。


「今でも血縁だろうが。お前の彼女は、功の姪だろうが」

「ゴホッ!」


 何も考えて無かった僕に、父さんは言うだけ言って、皇族について語り始めた。僕達の流れる血について。ちょっとした、衝撃で何も考えられない僕をほっといて。


 三貴神と言われる方々。この御三方は仲が良いよな。その御三方が生まれたのは、伊耶那岐命いざなぎのみこと伊耶那美命いざなみのみことの邪を清めたら生まれたと言われているが、勿論嘘だ。この御二方、それはそれは皆から人気が高く、余りにも他の神々から身を狙われることがあって、二人揃って引きこもってしまった。それに嘆いた神々と人の強い念と、御二方の魅了の塊から生まれたのが、三貴神だ。

 そうだろう?あの方々の狙われ方は、異様だ。だから、その血を引く皇族にも、魅了の力があるんだ。だから、皇族の中でも最も血が濃い御三家の結婚相手の条件があれなわけだ。


「力の強い川之宮、水之宮の子どもは力のある陰陽師か妖怪と結婚しなければいけない、に繋がるんだね」


 なんとか、復活できた僕の答えに、父さんは無表情で頷く。


「そう、だからこそ、紫苑様の相手はあの5人なのさ。知っているか?良太、表向きの紫苑様の相手が5人もいる理由を」

「え?子孫繁栄のため?」


 僕の答えに父さんは、苦々しい顔をして首を振った。


「寧ろ、そっちの方がマシかもしれないな。表向きの理由はな、楔なんだよ」

「楔…?って、まさか!紫苑を日本でしばりつけ、飽く迄もその天才と言わしめた頭脳を流失させないための監視役っというわけか!?」

「そういうことになっている。苗床か犬か。どっちがマシか分からない。しかし、それより酷いのが裏の事情なんだよ」


 父さんは、言葉を発する事に顔が歪になり、もっと苦々しい顔に変わっていく。本当は紫苑様達を助けてはあげたいが、それも神の力と言われたら、医学界の天才でも太刀打ち出来ないジレンマだろう。


「裏の事情は、神々を魅了することを防ぐ為。魅了の力は、愛するものが一人では防ぎきれない。紫苑様が昔結婚なされた神は、あれでも上位だったのだが、その方でさえ防ぎきれないのだ。いくら力が強くても、神格化した妖怪でも一人では無理なのさ。だから、5人。そして、その5人にも理由があるんだ。紫苑が心の底からその人物達を愛せば、魅了の力は増大する。すると、色々な人物から狙われるだろう。それを防ぐためでもあるんだ。5人なら、まだ代わりが何人も居るからな」


 父さんが、疲れたように息を吐き出した。その父さんは、何十歳も歳をとったような雰囲気だった。そんな父さんに、僕は言った。


「父さん。僕も紫苑を守るよ。医学界の天才と言われた僕の名に掛けて、紫苑の愛するものたちを死なせはしない。彼らを失えば紫苑は悲しませるから。紫苑の愛するものなんだから!!」


 僕の言葉に、疲れ切っていたとしていた父さんは、意識を戻し、そして笑いだした。


「そうだな!天才医師の名に掛けて救うぞ!」


クツクツ笑いながら、僕の頭を撫でる父さんは、もうすっかり元の父さんだった。


「ねえ、父さん。気づいてる?あの不可思議な現象」

「あぁ。どう考えてもあれは、何かが加わってるな。まぁ、分かりそうな人を追いかけるか」


ふっと、意識を瞬時に切り替えた父さんは、僕の肩を軽く叩いた。


「じゃあ、行くぞ!!」

「うん!!」









 心配してるんだから。愛するようになったらきちんと言うんだよ?可愛らしい我が先祖様?







魅了の塊が三貴神(月光、新雪、紫苑)

だから、身を守るために、子孫の川乃宮と水乃宮は力のある妖怪や陰陽師、神様と結婚しなければならない

紫苑は一番狙われやすい為相手が五人もいる

それが世間から認められてるのは色々手を回しているから



という感じです


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