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孤独な少年

瞼の裏に電気の光を感じ、目を覚ました。どうやら寝てしまっていたらしい。隣では俺の腰の抱きつくような格好で、キリが規則正しい寝息を立ててスヤスヤと寝ている。キリを起こさないようにそーっと身動ぎして、ポケットから携帯電話を取り出す。今の時刻は1:10…。…あれ、なんかおかしい。そう思ったとき、電車が停止し、車内アナウンスが流れた。

『終点、終点に到着です。お手持ちの荷物忘れないように…』

しゅうてん?…秀典?、周転…?。寝ぼけた頭の中でアナウンスが反芻する。…終点!ようやく思いついた。そうか、ここは終点か…。え、終点?

「やばっ!おい、キリ起きろ!やばいぞ、乗り過ごした!」

目的の駅を通り過ぎたということを理解するまで随分時間がかかった。呼んでもまだ起きないキリを抱き上げると、俺は慌てて電車を降りた。

「ハル…着いたの?」

「やばいぞ…、寝過ごした…。早く上りの列車に…」

「…?ハル?…これ、シュウデンなんでしょ…」

「しまったー!そうだ、これ終電なんだった!やばいぞ、これ…、本格的にやばい」

「ハルーねむいー…」

キリはまだ眠そうに目を擦っている。もう残っている手段は一つしかない。

「…始発まで待つか…」

始発まで待つしかない。それまではとりあえず仮眠を取ろう…。そう思い、近くにあったベンチに座り込む。

「おいキリ、始発までここで寝てろ。…もうそれしかねえ」

「わ、…わかったぁ…」

キリはそう答えた途端、すぐに寝息を立て始めた。

「はぁ…コーヒーでも買ってくるか」

財布を取り出しながらベンチから立ち上がった。



「…ハル?あれ、ハルが…いない…」

寒さで目が覚めた。周りには誰もいない。ハルの姿もない。

「ハル?…どこっ、ハル!」

僕の胸は孤独感でいっぱいになった。目が涙で滲む。独りになるのはとても嫌い。とても悲しくなる…。脳裏に昔のことが甦る。両親に捨てられ、独りになったときの記憶。あの時から独りになることがとても嫌になった。誰もいない空間に、一人でいることが嫌いになった。

「ハル…どこ、ハル…」

あとからあとから涙が溢れてくる。悲しくて、寂しくて、どうしようもなかった。僕には泣くことしかできなかった。

「独りは…もう…嫌だよぅ…」

それからしばらく僕は泣き続けた。声が枯れるまでハルの名前を叫んだ。

「ハルっ!どこなの、ハル!…やだよ…僕を独りにしないで…」

「キリ?」

遠くでハルの声が聞こえた。慌てて辺りを見渡すと階段から降りてくるハルが見えた。

「ハルっ!」

安心して余計に涙が出てきた。堪えようとしてもとめどなく流れてくる涙は止められなかった。

「キリ?なんで泣いて…」

ハルが僕に向かって何か言ってたけど、そんなのはどうでもよかった。僕はハルにしがみつき、沢山泣いた。涙が枯れるまでいっぱい泣いた。

「もう…独りにしないで…」



「キリ?」

階段を降りる途中、キリの叫び声が聞こえた。俺の名前を呼びながら泣いている。さっきまでベンチで寝ていたはずなのだが…。

「ハルっ!」

キリの泣き声が大きくなる。慌てて駆け寄るとキリは泣きながら俺の腰にしがみついてきた。

「キリ?なんで泣いてんの?なにがあった?」

キリは俺の言葉に耳も傾けず、ひたすら泣いている。

「もう…独りにしないで…」

小さく、震えた声が聞こえた。そこで俺はようやくわかった。キリは自分が置いていかれたと思ったんだろう。俺は泣き続けるキリの頭に手を載せ、優しく撫でた。

「…置いていって悪かったな。もう一人にしないからさ、ほら泣きやめよ」

「ハル……独り…は、もう嫌だ…」

「わかったよ…」

それからキリはしばらく泣いていたが、気付くと泣き疲れて寝ていた。伏せられた長い睫毛にはまだ涙が残っている。キリの頭を撫でながら、俺も深い眠りに落ちた。

短くてすいません…

「兄貴誘拐事件」ももうすぐ完結しそうです。早ければあと2~3話で終わりにしたいと思います。

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