ここはどこで、私は…なんで真っ平?
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…う、さむ…。隆志、また私の布団奪ったな。式の前に風邪ひいたらどうしてくれるんだ…。
隆志は寒がりで、よく私の分の布団さえ自分の物にしてしまう。だから今回もそうだと思って私は手を伸ばして布団を取り返そうとした。…したんだけど、手に触れたのは布団とは違う感触で…。ふわふわ、さらさら…これ、布団じゃない…?
うっすらと目を開ける。闇に閉ざされた視界…おかしいな、豆電球まで消すなんて珍しい…ってなんか体痛い…?
「そっちにはいたか!?」
「いませんっ!!」
突然聞こえた怒号にも近い複数の男たちの声、それに騒がしい足音に一気に目が覚める。
「痛っ…!!」
体を起こすと肩に激痛を感じ、思わず手で押さえる。闇に慣れた目で今自分が置かれている状況を把握しようと周囲を確認する。
「…どこ…ここ……?」
そこは隆志と住んでた部屋じゃない。見知った場所でもない。空は黒い雲に覆われ、見える建物は全て灰色や黒…。視界の中に白や暖色系の色などなく、全体的にどんよりとした暗い印象を受ける。
「何…なの…?私、ドレス試着して…たよ、ね…?」
そこでハッとする。先ほど触れたのは布団ではなくドレスだったのでは…?そう思い自分の体に視線をやる。
「…え…な、なんで…!?」
肩からずり落ちてしまっていたドレスを両手で抱きしめる。寒いのは当たり前だ。私は何も着ていない状態だった。そして…信じがたいことに…胸が…ない。
「え…嘘嘘、嘘だよ、これ…!そりゃ大きい方じゃないけど…でもここまでまな板では…」
何が何やらさっぱりわからない私は、もう一度だけドレスで隠した自分の胸をそっと確認する。…まるで幼児のようにストーンと真っ平の胸に愕然とする。ちょっと…待って?どういうこと?全然状況についていけない…。
「そっちの路地は見たかっ!?」
「見ましたが見当たりません!今西の通りに13名、東に15名向かってます!」
またもや近くで聞こえる怒号に体が震える。何かを探しているみたいだけど…なんとなく、怖いかんじがする。と言っても、何が起こっているのかさっぱりわからないこの状況下では、きっと何が起こったとしても怖いと感じると思う…。
「く…ヒィ様の予言ではこの辺りのはずなんだが…」
「隊長、まだ広場へ続く南の通りは見ていません!自分確認してきます!」
どんどん声が近くなる。…どうしよう…ここはどこか尋ねたい気もするけど、こんな恰好だし…怪しい奴だと言われてしまえばそれまでだし…。
バクバクバクバクバク……
心臓があり得ない速さで鼓動する。声が近づくにつれ、なぜか逃げなくちゃ…という思いが全ての思考を支配した。ただ…その支配は遅かった。誰かの足音はすぐそこまで迫っている。もうすぐ私のいるこの狭い路地に人影が見えることは明白で…今更どこにも逃げられない。
暗い路地が誰かが持つ灯りによって徐々に明るくなっていく。どうしよう…このままじゃ見つかってしまう…。
捕まってしまう………!!!!!




