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ニワトリだって恋をする  作者: のな
魔法生物編
55/78

55羽 大きくなっても…?

「つまり、体にダメージがあったために本来戻るべきものがそうなった…と」


 思い切り目を逸らしながら告げるライルに、皆の視線は冷たいままだ。

 一度笑ってしまえば後は見慣れるというのに、何が彼をそうもかたくなにするのかは謎である。


「それで、魅了を解除する能力は大丈夫なのか?」


 ユリウスの懸念はもっともで、実を言えばチキもそれは気になっている。

 今のところ廊下では魅了された貴族や騎士などに会っていないので試していないのだが、できれば早いうちに能力が健在なのか試しておきたいものである。


「魔法生物という存在に変わりはないので大丈夫とは思いますが」


 ログの言葉に皆頷くが、やはり実際見ないことには不安を覚えるモノである。


「ならば、城…は少し危険か。町中で操られたものが増えていないか巡回して見つかれば解除してみてくれ」


 ライルが窓の外を眺めながら命じる姿に、ハイと素直に答えていいものかどうか迷ったのはチキだけではない。

 ここまでなんだかんだとこそこそと付いてきてしまったマリーは、エマにそっと耳打ちする。


(「騎士団長さんて、格好つけなの?」)


(「そういうわけじゃないと思いますが」)


 ああもかたくなに笑うのを拒む理由がわからず、女性陣がひそひそと話ていると、ユリウスがライルに(あわれ)みの視線を向けた後、チキの首を撫でた。


「城の中も外も危険だが、今はその姿と魅了解除の状態をテレジアに知られるわけにはいかない。外に出ることになるが危ないことはするな」


「ゴゲッ」

 

 チキが素直に割れた声で答えると、どこからともなく聞こえた音は…

 


「ブヒョっっ!」



(((ブヒョ?)))


 皆が首を傾げる。

 音…というか、声のした先で、どうやらライルが堪え切れずに噴出したようである。


「あははははははははははっは、だめだ! 私は あははははははっ 腹が!」


 爆発に皆目が点である。

 何事かと驚いたチキがユリウスを見上げれば、彼はため息を一つ吐いて皆に向き直る。


「気にするな。彼は笑い上戸なんだ。一度笑い出すとしばらく止まらなくてな」


 どうやらそういうことらしい。

 ライルは床に(うずくま)って腹を抱え、ちらりとチキを視界に写すとヒーヒーと息苦しそうに笑い続けるため、チキ達は急いで部屋から出ることにした。


 苦しげな笑いのおさまらぬ部屋の扉を閉めると、マリーが残念そうに呟く。


「うん、まぁ、そういう人もいるわよね。あんだけ美形だとちょっとイメージは崩れるけど、好感度は上がるかも?」


「そういうもんかね」


 バーデは少女の感覚に呆れたように肩を竦めた。



_____________________



 城の外は危険


 それは重々承知でチキ達は巡回という名の実験に出ることにした。

 これをもし城内で行って万が一にも解除ができないということがわかり、それがどこかからテレジアに漏れたとしたら致命的なダメージを追うため、色々と誤魔化せるだろう町中で行うことになったのだが…。


「着替える必要があったのか?」


 マリーの提案でバーデとチキを含める新入り5人は男女逆転の扮装をしている。

 さすがに元々が山賊風なバーデとログに女装はさせられないため、マリーが選んだ衣装で彼等の見た目は商人と用心棒となった。

 ちなみに商人がログで用心棒がバーデだ。

 経験の差なのか、性格なのか、バーデに比べ、ログはやはりどこかビクビクした感じが見受けられたため、堂々とした用心棒よりも商人になったようだ。


「万が一見つかったらチキはよその大陸の珍しい生き物ね」


 そう言う設定らしい。

 チキは幌付きの荷馬車に押し込まれ、そこには女装した女戦士風のギルバートとラインヴァルト、それから学者風のエマとなぜか小間使い風のマリーが乗り込んだ。

 

 いまさら来るな、行くと言う押し問答も面倒なのでこのままのメンバーで街へとでた。





「見たところ問題はなさそうですね」


 ギルバートが鋭く辺りを観察する。その視線は本当に女戦士のようでマリーは先程から萌えている。


「いいわ~。素敵」


「遊びじゃないぞマリー」


 兄のラインヴァルトに(たしな)められ、膨れながらマリーは兄の姿にもまた萌えるのだ。

 彼等はもうあきらめるしかない。


「行くなら男が多そうな裏町かね~」


 バーデの一言にエマとマリーの視線がバーデの背を射抜いた。


「し、視線がいてぇ…」


「二人とも、隊長の言うことは至極当然ですよ。私なら魅了する人間は人目につかないところから広げていきますからね」


 ギルバートがマリーとエマに、スケベなバーデのフォローというわけではないが、自分ならと考えた魅了していく順番を話せば、二人はしぶしぶ納得する。

 ちなみにチキは裏町というのがよくわからない。


「ついでに客足についても聞いてみるか」


 魅了に侵された男が増えているなら裏町の娼婦街の客は減る。そう踏んだバーデは何処か楽しそうに娼婦街方面へと馬車を走らせる。

 だが、娼婦街へと入るよりも前に魅了の影響は知ることができた。


「多いな…」


 ふらふらと何を目的にするでもなく濁った眼でうろつく男達が馬車を取り囲んだのだ。


「こちらの正体ばれてますね」


「まぁ、城の誰かが情報を漏らしたってこともあるだろ。こんだけの人数魅了されてるんじゃあなぁ」


 数にしてざっと30人強だ。


「チキ、いけるか!?」


 バーデに呼ばれてチキは御者席に幌から顔だけ出し、スッと息を吸い込んだ。


「ゴゲゴッゴォォォォォ~!(正気に戻れ~!)」


 体が大きくなった分叫び声も大きくなったらしい。バーデ達は鼓膜を震わす声に慌てて耳を塞ぎ、周りを確認すれば、正気に戻ると同時に男達がバタバタと気絶していった。


「大丈夫そうですが…」


 エマが周りを見て唖然とする。


「破壊力がでけぇな…」


 バーデが呆れかえる。


「ゴォ~…」


(((そして鳴き声はオヤジ・・・)))


 男達はその時心を一つにそう思ったのだった・・・・。



 


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