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プロローグ

 にじで書いていた『勇者って一人じゃないんですか。』を、地名、人名、主人公の設定、世界観の再構築することによってこちらに移動しました。



「勇者って一人じゃないんですか?」


 ノイエブルク城の謁見室に俺の素朴な質問が響いた。皆の視線が俺に集まる。誰もが無言であったがはっきりと心の声が聞こえた。


 (お前はだまれ!) 


 そして俺は勇者5人の謁見が終わるまで黙って立っていた。


-------------------------


 俺の名前はケルテン ノイエグルク王朝国務大臣付き特務隊士である。まだ着任してひと月しか経っていない為任務が何なのか知らないが権限だけはすごい。王様と国務大臣以外の命令を拒否できるうえ、城の中に立ち入れない場所はほとんどない。


 時は5時間ほどのノイエブルク城兵士宿舎食堂に遡る。

 

 いつもの日課は朝6時からのトレ-ニング、朝食の後は王室図書館にて史書を漁り、知識を貯める。昼からは新任の挨拶周りをする。ここ一ヶ月はそれしかすることはなかった。でも今日は違った。食事の最中、近衛騎士のサイモンがやってきた。


 「おっ、いたいた。お前、昼からの謁見に立てって命令だ。大臣と隊長からの伝言な。」


 こいつは不良近衛騎士のサイモン。見た目は金髪碧眼で美形、さらに貴族の三男坊の少し残念なやつだ。一度俺と衝突してから俺お前の仲である。


 「おい、なんか失礼なこと考えていないか?」

 

 「別に・・・。しかし、謁見には近衛騎士が立つ、それが決まりじゃなかったのか?」


 「一応な。だが、これは例外の一つ、勇者の謁見だ。お前は大臣の隣につけよ。」


 「ほう、やっと勇者のお出ましか。光栄なことだ。」


 「そうかあ・・・まあ人それぞれだからな。昼の謁見15分前に典礼用の装備で近衛騎士控え室に集合だ。」


 およそ500年前にこの世界を絶望のどん底に落とした大魔王がいた。それを倒して世界に平和をもたらした勇者、その血を継ぐ者が新たなる勇者である。その割にはサイモンの反応が微妙だ。


 「儀礼用の装備か・・・あれ嫌いなんだけど。」


 典礼用装備。鉄の鎧、鉄の槍、鉄の盾、腰に鉄の剣のフル装備で総重量20kg以上、しかも無駄に豪華な作りをしている。


 「俺は結構気に入っている。いかにも騎士って感じゃないか。」

 

 「力が有り余っているお前等はいいだろうが、俺に重すぎる。」


 「どうせ立っているだけだ。じゃまた後でな。」


 サイモンは他人事だと思って勝手なこと言って外に出て行った。俺の普段の装備は革鎧に両片手刀、さらに魔法の併用だ。文句を言っても仕方がない。今日はいいとして、もし次があるなら典礼用の革鎧を用意するよう大臣に頼むとしよう。


 ------------------------


「勇者ガルド殿、入室。」

 

 謁見室に勇者の入室を告げる声が響き、黒髪短髪、身長2m、ごつい体の男が入ってくる。しずしずと歩み寄り王座の手前で片膝をついた。


「勇者ガルド、まかりこしました。」

 

 なんて感動的なシーンだ。俺はこの場にあることを神に感謝する。


「おお、新たなる勇者よ、よくぞ余の召喚に応じてくれた。今、ここノイエラントは、復活した魔王によって光を奪われ絶望の下にある。そなたがまことの勇者なら魔王を倒し、国宝の宝玉を取り戻してくれ。しからば褒美はそなたの思いのままであろう。なお勇者への支援に関しては大臣より仔細説明をうけよ。」


 俺の横にいる国務大臣が一歩前に進み出て説明を始めた。


「私が国務大臣オットマーである。陛下の御意に従い、王家と勇者の契約について説明する。

 一つ、ノイエブルク王家は準備金として100ゴールドを勇者に与える。

 一つ、ノイエブルク王家は勇者の生命に対しできる限りの支援を行なう。なお血の契約において生命が失われしときでも蘇生が可能である。

 一つ、勇者はノイエブルク王家御用達の宿屋、武器屋、道具屋において割引サービスを受けることができる。

 一つ、勇者は王家準近衛騎士として扱う。なお装備品として同等のものを所持する権利も与えられる。

 一つ、勇者が獲得したモンスター素材は王家が専属で買い上げる。

 一つ、・・・・・・・・・・・・・・・


(なんだこれ?いやに生々しい契約だな。血の契約ってなんだ?割引サービス?買取?俺は混乱しているようだ。まだ大臣が何か言っているようだが何も聞こえない。というか聞きたくない。)

 

 ふと我にかえると勇者が大臣の差し出した紙に血判を押していた。


「最後に王は公人ゆえに口にできぬが、さらわれし王女ロ-ゼマリーの命を案じておられる。意味は分かるな?では行くがよい、勇者ガルドよ」


 そして勇者が退出して行った。なんと言うか、俺が想像していたのとは違う儀式がやっと終わった・・・と思ったのは間違いだった。


「では次の勇者を入れよ」


「へっ!?」


「勇者ドゥーマン殿、入室。」


 そこで思わす言ってしまったのが冒頭の一言である。


「勇者って一人じゃないんですか?」

不都合なことがあったら連絡下さい。

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