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File91 ディベート好きが世を滅ぼす

本話については、ディベート愛好の読者の方より貴重なご意見をいただきました。詳しくは感想ページをご覧ください。筆者も、「ディベート好きが世を滅ぼす」というタイトルは論理飛躍があり、センセーショナル過ぎたと反省しております。本話は、筆者のかつての海外勤務経験に基づき私見を述べたものですので、その点お含みの上お読みください。タイトルは敢えてこのままにさせていただき、後は読者の方々のご判断に委ねたいと思います。

「ディベート」とは直訳すると「討論する」というような意味になる。英会話学校や海外留学に行ったことのある人ならよくご存じだと思うが、アメリカではこのディベートが論理的思考を訓練するための一種のゲームとして扱われている。具体的には2~3人で1チームを編成し、ある反駁するテーマについて賛成・反対両方の立場から議論を戦わせ、どちらが優っていたかを争うゲームである。

ゲームである以上、その結論が事実とまったく異なっていても構わない。要は、その結論に至った過程が論理的であったかどうかで勝敗が決まる。例えば、「カラスの色は白か黒か」というようなくだらないテーマだってありうる。一般的には、「カラスは黒い」に決まっているのだが、「白」チームはおそらく突然変異が起きたとかペンキを浴びたとか、人々が思いもよらない理屈を並べ立てて反論しようとする。その結果、カラスは必ずしも黒いとは限らないという結論になれば、「白」チームの勝ちである。

これは極端な例であるが、アメリカ人は学生時代からこうしたディベート訓練を繰り返し受ける。だから、屁理屈を並べるのは得意である。法廷での裁判はまさにこのディベートそのものであるから、アメリカ人は信じられないようなことで訴訟を起こし、賠償金をむしり取ろうとする。

有名な話がある。某ハンバーガーショップのドライブスルーでホットコーヒーを頼んだお客さん。受け取る際によく注意もせずにカップを握りしめたため手に軽いやけどを負ってしまった。これで訴訟を起こし、何と賠償金をむしり取ったというのである。判決いわく、「売り子はコーヒーカップが熱いと客に注意喚起する義務を怠った」ということらしい。こんなことで訴えられたら、怖くてファストフードの売り子なんかやっていられない。

製造物責任訴訟でも首をかしげたくなるような話があった。電子レンジの使用説明書の中に、「レンジの中にペットを入れて使用してはいけない」という注意書きがあるという。子供でもわかりそうな話だが、世の中にはシャンプーを終えた猫の毛を電子レンジで乾かそうとする愚か者がいたらしい。

「和をもって尊し」が美徳とされてきた日本では、あまり些細なことで裁判沙汰までゆくということは少なかった。ところが、最近は、日本でもこのディベートを教育の場で取り入れようとする動きがある。その理由は国際社会でも活躍できる人材を育成することにあるというのだが、アメリカのように屁理屈を並べ立てる人ばかりが育つようでは困る。

最近、日本でもゼリーをのどに詰めて子供が死んだと製造会社を訴えるという事件があったが、これも先のハンバーガーショップのケースと五十歩百歩という気がする。毎年正月になると、もちをのどに詰めて亡くなるお年寄りが後を絶たないが、それでもち屋を訴えたなんて話は聞いたことがない。日本も、だんだんとアメリカに似てきたようである。

カラスが白いというような暴論がまかり通るのは、「ディベートごっこ」の世界だけの話にしてほしい。

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