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File88 この世界は何次元か

われわれの住む世界は縦・横・高さの3次元とよく言われる。では、3次元以外の次元はありうるのだろうか。

まず3より少ない次元は簡単に思い描くことができる。2次元は平面で表される。実際、紙の上に図形を書いて面積を計算したりするし、われわれはそれが2次元の世界だと思っている。

ただ、薄っぺらい紙にもわずかだが0.0何ミリという厚さがあるし、その上に書かれた図形にも0.00何ミリかのインクが載っている。だからわれわれの目に見えるのであって、紙に書かれた平面図形も実際は3次元の世界のモノなのである。

2次元は、正確にいうと高さあるいは厚さのない世界なので、人の目には見えないはずである。人は紙に書かれた図形を頭の中に思い描いて2次元だと言っているだけで、本当の意味での2次元世界は実物世界には存在しない。高さのない平面は物質的には「無」である。同じように1次元も「無」である。人は、紙の上に鉛筆で直線を引いて1次元だと言っているが、本当の1次元は太さもないのでやはり人の目には見えない。頭の中での想像の世界ということになる。

こんなことを言い出すと、そもそもわれわれの視覚自体が2次元である。頭の中に3次元のモノを入れ込むことはできないので、人は3次元世界を2次元に変換して見ている。見る対象物の微妙な色の違いや影のでき具合などから、それを立体的なモノとして認識しているのであって、実際頭の中で見えている映像は2次元である。絵を描くのもこれと同じである。上手な画家は、遠近法や光の具合などをうまく使って、3次元の世界を2次元に落とし込む。人はそれを見て、奥行きや高さがあると想像しているにすぎない。つまり絵自体が人の目の錯覚を利用した産物なのである。

話は180度変わって、3次元を超える次元はあるのだろうか。SF映画などではしばしば、4次元や5次元といった異次元世界が描かれることがある。これらは視覚化できないために頭の中に思い描くことが難しい。もっとも身近な例は、時間を1つの次元と考え、4次元時空とする考え方がある。

「File35 時間に最小単位はあるか」でも書いた通り、時間が離散的(線路の枕木のようにとびとびになっているモノ)であれば、人は時間軸に沿って動くことができるはずである。その場合、最小単位時間が過ぎるごとに新しい世界が生まれては消えてゆく、あるいは同時並行的に無数の世界が存在するという奇妙なことになる。SF映画でしばしば登場するタイムマシンも、この4次元時空を扱ったものである。

一方で、空間軸に沿って別の次元が存在するという考え方もある。一言で言うと、縦・横・高さに加えて、目に見えない「斜め」という方向に移動することができるという世界である(実際には、「斜め」も3次元での話なので正確な描述ではないが…)。

具体的には、紙の本を思い浮かべればよい。あなたが100ページある本の35ページをいま読んでいるとしよう。あなたは、一つ前の34ページに戻ることもできれば、一つ先の36ページに進むことができる。あるいは、もっとすっ飛ばして75ページに進むこともできる。もし、この本が何かの物語であれば、あなたはページを繰ることで、自由に過去に行ったり未来に行ったり、あるいは別の世界に飛び込んだりもできる。異次元があれば、こんな奇妙な世界が実体験できることになる。

ちなみに、「超ひも理論」と呼ばれる特殊な理論物理学では、3次元以外に6次元の異次元(専門的には「余剰次元」という)があるとされている。無論誰もそんな世界を見たことはないし、あくまで数学的に導き出された理論上の話ではあるが、大真面目な学問として議論されている。この世界はまだまだ不思議である。


(追記)

余剰次元があと6つあるという証拠が、われわれの世界に存在するという学者もいます。その証拠が「雪の結晶」です。ご存じのように、雪の結晶はきれいな正六角形をしています。雪の結晶がなぜこうしたきれいな正六角形になるのかについては諸説ありますが、まだ科学的にはっきりとした理由は分かっていません。

雪だけではなく、「柱状節理」の結晶や芳香族でよく見られる「ベンゼン環」もきれいな正六角形をしていますが、なぜそうなっているのかを合理的に説明できてはいません。でも、余剰次元が6つあって、それぞれが均等の質量を持っていて、そこから微弱な重力が漏れ出していると仮定できれば、話は変わってきます。

ひも理論では、「余剰次元」はわれわれの3次元空間の各点のすべてに存在していて、小さく折りたたまれていると考えます。少しイメージしにくいかもしれませんが、6本の骨で出来た極小のパラソルが無数に空間を埋めていると考えると分かりやすいかもしれません。もちろん、そんな極小のパラソルは肉眼はおろか、この世界に存在するどのような精巧な機械を使っても直接見ることはできませんし、われわれがその余剰次元の方向に移動することもできません。あくまで理論的に予想されているモノにすぎません。

ただ、ひも理論では、重力だけは次元を超えて伝わると予想されており、大型の粒子加速器を使ってそうした重力の漏れ出しを検出しようという実験も現実に進められています。

仮に雪の結晶ができる時、最初の一滴の極微の水が6方向から均等に引っ張る力を受けたとしたらどうなるでしょうか。おそらく水滴に含まれる水分子はきれいに正6角形の方向に伸びてゆくでしょう。その頂点に次々と新しい水分子がくっついてゆくときれいな雪の結晶に成長することになります。つまり、最初に雪の結晶の形を決めているのは6つの余剰次元からの極微の重力だということになります。

芳香族のベンゼン環も、6つの余剰次元からの重力によって炭素原子が均等に引っ張られた結果としてきれいな正六角形になると考えれば、落ち着きがよくなります。

それで、仮にそうだとして、何がどうなるのかと言うことですが、恐らく余剰次元が実際に存在し、そこに膨大な隠れたエネルギーが貯蔵されているとすれば、いま宇宙物理学で騒がれている「ダークエネルギー」の正体も解明され、そして我々が住むこの宇宙の将来がどうなるのかもはっきりと予想されることになるでしょう。


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