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File81 人生は何億秒か

また、くだらないテーマを持ち出してしまった。早速計算してみよう。平均寿命を80年とすると、80年×365日×24時間×60分×60秒で、答えは約25億秒となる。内、約3分の1が睡眠時間であるから、人生の正味は16億秒と少しくらいになる。

人生80年と言うと、とても長いように感じるが、16億秒と言われると途端に短い気がしてくる。チッ、チッ、チッと時計の秒針が16億回刻むと、もうあなたの人生は終わっているのである。しかも、この秒針は、あなたが食事をしている時も、トイレに行っている時も、あるいは今この瞬間にも容赦なく前に進んでいる。だんだん、焦りの気持ちが出てきたであろうか。

まったくバカ気た話ではあるが、自身の毎日の行動を秒単位で計算してみると何と無駄の多いことをしているかがよくわかる。例えば、通勤・通学に毎日1時間をかけている人。これだけで60分×60秒×2回(往復)で7200秒を消化、週休2日としても年間約180万秒も使っている。これを40年間続ければ7200万秒になり、人生の約5%にもなる。また、ゲームやテレビに毎日2時間近くを費やしている人も、同じく5%を消化。

他人の人生なんだから、もう放っておいてくれと言われそうである。

でも、悪い話ばかりではない。学校へ行くのが大嫌いなあなた。1日7時間学校にいるとして、3年間の高校生活の秒数は正味約2000万秒ほどしかない。時計の秒針が2000万回チッ、チッ、チッといえばもう終わりである。毎日、カウントダウンし、日記か手帳にあと何万秒と付けてみよう。嫌なことも、時が解決してくれるということの意味がよく分かるはずである。

同じく、職場でとても嫌な上司の部下になってしまったあなたも、あと何百万秒辛抱すれば、上司か自分のどちらかが人事異動になると思えば、叱られている時も少しは気分が楽になるはず。

ただ、こんな計算を絶対してはいけないのは高齢者。自分の人生があと何秒なんて数えていたら、それこそ気が狂います。

最後に一言お詫び。仮に、今この瞬間、あなたがこのくだらないエッセイを読むのに5分を要したとしよう。それで、あなたは300秒も使ったことになる。これは、あなたの人生の約500万分の1に相当する。筆者は、このお話を書いたことにより、あなたの貴重な人生の500万分の1を奪ってしまったのである。ゴメンナサイ。


(追記)

このお話に関連して、歳がゆくと月日が経つのが早くなるというが、どういうことか考えてみたい。当然ながら物理学的には、時間の刻む速さが速くなるということはありえない。これは人の心理的な感じ方のことを言っている。

では、どの程度感じ方が変わるのかということを、数式で実感してみよう。時間の経つ速度は「単位時間(例えば1年)÷残り時間」となる。例えば、人生80年として、20歳の人は残り60年、60歳の人は残り20年である。これをこの数式に当てはめてみると、20歳の人の時間のたつ速度は0.0166となる。一方、60歳の人の速度は0.05で、20歳の人の約3倍になる。つまり60歳の人にとっての1年は、20歳の人より約3倍早く過ぎるということになる。

これをさらに進めてゆくと、75歳の人は残り5年で、速度は0.2となる。60歳の4倍、20歳の12倍の速さとなる。つまり残り時間が少なくなればなるほど、時間の経つ速度は速くなってゆく。歳をとると月日が経つのが早くなるというのはそういう意味である。

このことは、もっと短い時間にも当てはまる。例えば、3年間の高校生活。入学した当初は1ヶ月が「1÷36ヶ月=0.0277」で進む。ところが3年生の後半あたりになると「1÷6ヵ月=0.166」とかなり速度が速くなる。楽しい高校生活も残り時間が少なくなると悲しくなってくるのはそのせいである。

でも、不幸にして学校が嫌いになってしまった人にとっても、これはある意味ありがたい。毎日、今日という1日の長さを残り日数で割り算すると、どんどん時間の経つ速度が増えてゆくことが実感できる。

やはり、アインシュタインの言うように、時間の進むスピードは相対的なものである。

(注:アインシュタインの相対性理論でいうところの時間の進み具合とは全然意味が違いますので念のため。)

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