File62 時間や方位はなぜ60進法を使うのか(副題:雪の結晶はなぜ正六角形か)
60進法、正六角形…、この世界では「6」という数字に何か深い意味があるのだろか。その問いに超高度な科学理論より迫ってみました。
時計を見れば、分単位の目盛が60個きれいに円形に並んでいる。また方位を表すコンパス(方位磁石)は360度の目盛が同じように打ってある。時間や空間を60等分することに何か深い意味があるのであろうか。
我々は、日常生活の中では主として10進法を使っている。数字は0から9までの10種類しかないし、何より10で割り切れる数字は気持ちよく感じる。それが時間を表す単位となると途端に60進法になるので、この扱いがスコブルやっかいなものとなる。例えば10分は何時間かと聞かれると、0.1666…時間、割り切れないのである。同じように、100時間は何日かと聞かれると、やはり4.1666…日と割り切れない。10進法に慣れている感覚からすると、これはとても気持ち悪く感じる。なぜ1時間は100分、1日は20時間というように決めなかったのであろうか。
そもそも60進法は古代バビロニアで使われ始め、中国でも殷の時代には60で一巡する干支(十干十二支)が取り入れられた。全く異なる文明で別々に60進法が取り入れられたというのだから、それなりの深い理由があるはずである。
最も有力な説は、60は2、3、4、5の最小公倍数だからというのがある。要するに、この4つの基本的な数字のいずれで割り算しても割り切れるということである。これも確かに一理ある。誰しも経験がおありであろうと思うが、ケーキやパイも4等分、8等分は切りやすいが、3等分、5等分は切り分けにくい。ケーキやパイの周囲にも60等分の目盛が入っていると切るときには確かに便利である。時間や方角も同じで、どのような分割の必要性が出てきてもすぐ対応できるよう、最初から60等分しておいたということである。一応ナットク。
でも、ケーキやパイは確かに3人で分けるということはあるかもしれないが、時間や方位を3等分する必要はあるのだろうか。例えば、方角は通常4等分、つまり東西南北で表現されている。その方が使い勝手がよい。これを60進法(あるいは12進法)で表すと丑寅の方角というややこしい言い方になる。丑と寅は、子(北)と卯(東)の間にあり、90度を3等分した方角になる。これを座標軸に書けといわれても、分度器か何かないと手作業ではまず無理である。8等分ならば、紙を8つ折りにすれば正確に北東方向、つまり45度線を引くことができる。やはり、3等分しなければならない理由がよく分からない。
さて、ここからは私見になるが、自然界においては正6角形が、最も効率的で安定的という原理がある。身近なものではハチの巣、きれいに正6角形の部屋が並んでいる。これは正6角形が最も材料が少なくて、かつ堅固な構造を作れるからである。円形も確かに強固であるが、円柱を並べると円と円の間にわずかであるが隙間ができてしまう。正6角形を使えば、この隙間もなくして、びっしりと余分なく埋めることができる。自然界にはこの他にも正6角形が自然に造られる例が多々ある。例えば雪の結晶や柱状節理の結晶構造、すべて正6角形である。正6角形は、自然界では安定的な形状なのである。
この正6角形を、ズリッと少し回転させて、一辺の真ん中に隣の頂点が来るように動かして重ねると、正12角形、つまり時計が出来上がる。これをさらに細かく繰り返して、正6角形を緻密に重ねていけば、60個の目盛が付いた時計になり、さらに360個の目盛の付いたコンパスになる。
偶然の一致なのかもしれないが、60進法による時間や方位の測り方は、自然界の安定性を考慮して、英知ある大昔の人が考案したものなのかもしれない。
(追記)
正6角形が自然にできるという現象について、「ひも理論」を使えばうまく説明できるというご指摘がありましたので、少々難しくなりますが追記させていただきます。
なお、「ひも理論」は現代素粒子物理学の最先端の理論で、とても難解ですのでここでは敢えて詳しい説明はしません。さわりだけでも知りたい方は「File89 ひもが世界を決めている」をお読みください。
ひも理論によれば、この世界は10次元で出来ており、われわれの目に見えない次元があと6次元あるとされています。われわれは、今の世界において上下・左右・前後の3方向に自由に進むことができます。そのことを、われわれは3次元空間にいると表現しています。時間も1つの次元と考えると、一方通行ではありますがわれわれは時間軸にも沿って動いていると言えます。10次元から、この4つの次元を引くと確かに6つの次元が残ります。
ひも理論では、この目に見えない6つの次元(これを『余剰次元』と言います)はわれわれの3次元空間の各点のすべてに存在していて、小さく折りたたまれていると考えます。少しイメージしにくいかもしれませんが、6本の骨で出来た極小のパラソルが無数に空間を埋めていると考えると分かりやすいかもしれません。もちろん、そんな極小のパラソルは肉眼はおろか、この世界に存在するどのような精巧な機械を使っても直接見ることはできませんし、われわれがその余剰次元の方向に移動することもできません。あくまで理論的に予想されているモノにすぎません。
ただ、ひも理論では、重力だけは次元を超えて伝わると予想されており、大型の粒子加速器を使ってそうした重力の漏れ出しを検出しようという実験も現実に進められています。
さて、ここからが本題ですが、仮に雪の結晶ができる時、最初の一滴の水が6方向から均等に引っ張る力を受けたとしたらどうなるでしょうか。おそらく水滴に含まれる水分子はきれいに正6角形の方向に並ぶでしょう。その頂点に次々と新しい水分子がくっついてゆくときれいな雪の結晶に成長することになります。
つまり、最初に雪の結晶の形を決めているのは6つの余剰次元からの極微の重力だということになります。この他にも、芳香族によく見られるベンゼン環、炭素原子が正6角形にきれいに連なっている形状も、同じように6方向から均等に引っ張られた結果だと考えるとうまく説明ができます。
自然界の正6角形は自然にできるのではなく、こうした物理の法則によってできているということになります。仮に、余剰次元が本当に6つあるとしたら、時間や空間を60等分しておくことには大きな意味があると言えるでしょう。
(追記2)
自然界の正六角形現象について、光も正六角形の方向に放射するというご意見がありましたので、その問題についても「ひも理論」の観点から考えてみたいと思います。これは、光をカメラなどで写すときれいに6方向に放射して見えるという現象です。カメラの専門家の方から、シャッターの絞りが6枚羽で出来ていてそれが投影しているとのご指摘がありました。
ということで、カメラも眼鏡も外して肉眼で光を見てみましたが、やはり光源から6本の放射が出ているように見えました。中には8本に見えるという人もいました。
さて、ここからが本題ですが、かのアインシュタインは光が重力で曲がるということを予言し、その事実は「重力レンズ効果」という天文現象で実際に確認されています。これは、遠方にある銀河の手前にブラックホールなどの非常に強い重力をもった天体があると、銀河からくる光が重力で歪められたり分裂したりして見えるという現象です。これは、重力によって空間が歪められた結果であり、例えばデコボコがある斜面に水を流すと水がグニャグニャ曲がって流れるのと同じような意味です。
同様に、極小のパラソル型の余剰次元がこの空間を無数に埋めていて、その余剰次元から重力の漏れ出しがあるとすれば、私たちの住んでいる空間にも目に見えない極微の歪みがあるはずであり、光源から出た光はパラソルの骨に沿うように6方向に流れると思われます。でも、光は次元の壁を超えられないので私たちの世界では6本の筋となって見えるのです。ちょうど雨のしずくが6本の傘の骨に沿って滴るのと同じと考えれば分かりやすいかもしれません。
残念ながら、これが事実かどうか確認するすべがありません。遠い、遠い将来、余剰次元がホントに6つあるかどうか証明される日が来ると面白いですね。




