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File58 医療ドラマのウソホント

テレビドラマの視聴率が低迷する中、医療ドラマだけは相変わらず人気が高い。人の命を扱う人間性、手術シーンなどのサスペンス性、そして何よりも医療という素人には分かりにくい密室性など、ドラマになる要素は多い。最近は、大学病院が医療面の監修も引き受けているため、手術シーンなどはリアルで限りなく現実に近いという。

ただ、本当の専門家に言わせると、少々誇張されすぎている面も多いらしい。例えば、手術シーンでよくあるピンポンピンポンというバイタルアラームの鳴る音。あんなに頻繁に鳴っていたら怖くて手術なんかやってられないそうだ。救急救命とか余程切迫した状態で患者が運ばれて来るようなケース以外で、手術中にアラームが鳴るなどということは滅多に起きない。手術の前に提出する手術同意書などでも、まれに死亡したりあるいは重篤な後遺症が残る場合があると恐ろしいことが書いてあるが、そんな確率は大体3000件に1件くらいというから、十分に安心して手術を受けられるレベルである。

それと、「ER」のような救急救命のドラマでは、バタバタと看護師が走り回ったり、大声で医師の指示が飛んだりと、緊迫した場面の連続を想像しがちだが、実際に救急外来で働いている看護師さんによると、あんな緊張した場面はせいぜい月に2~3回だそうだ。大きな事故でも起きない限りありえないらしい。そんな毎晩のように走り回らされたら精神的に参ってしまう。

医療ドラマで現実にもっとも近く切実なのは病院経営の問題である。拡大志向の理事長の要望で次々と新型の医療機器を導入したり、診療科目を増やしたりして、事務局長が資金繰りのことで悲鳴を上げるという類の話は、どこの病院でも起こりうる。実際、最近の病院経営は非常に厳しく、医療法人の倒産なんてことも珍しいことではない。

「人の命と病院経営とどっちが大事なんだ」なんて主人公のお医者様がカッコよく叫ぶシーンがよくあるが、これはどうやらホントのようである。皆さん病院を選ぶ際には、医療成績だけでなく、その経営状態にも十分注意しましょう。

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