File53 宇宙人はまだ地球に来ていない
しつこいようだがまたまたこのテーマを取り上げてみたい。「File1 エリア51の宇宙人のウソ」でも述べた通り、筆者の見解は、宇宙人はまだ地球に来ていないという、UFOファンには申し訳ない結論である。それを論理的に説明してゆこう。
まず、全宇宙を完全自由に旅する宇宙人はいない。なぜなら、そんな宇宙人がいたら既に地球に到来しているからである。同様のロジックで、全天の川銀河を完全自由に旅する宇宙人はいない。もし、そんな宇宙人がいたらとっくに地球に到来しているはずである。
ここで「完全自由」という言葉が重要である。完全自由とは、今地球にいるわれわれ人類が地球上のどこにでもほぼ自由に行けるというような意味である。人類は、技術の進歩により今ではよほど特殊な場所でない限り、地球全体のどこにでも比較的容易に行くことができる。同様に超・超高度な宇宙人がいたとすれば、ワープ航法もワームホールもすべて開発済みで全宇宙を完全自由に行き来しているはずである。
これに対しては、そんな宇宙人はたまたま発見されていないだけで、地球に来ていないことだけをもって、その存在を否定することはできないという反論がありそうだ。これは、筆者もそう思う。だから、存在しないとは言わない、まだ地球に到来していないと言っているのである。ただ、われわれの目に届くところに宇宙人がいないということは、超・超高度な技術力をもってしても「完全自由」な宇宙旅行は相当に難しいということだけは確かである。
それでも、いや宇宙人は既に地球に来ている、理由があってその姿を隠している、あるいは地球人になりすましている、という反論がありそうだ。SF映画でもしばしば用いられる設定である。では、なぜ宇宙人は地球人から身を隠さなければならないのか。
理由は、
①地球を侵略するために、地球人になりすまし、密かに繁殖している。
②地球人よりはるかに高度な宇宙人は、地球人を単なる一つの「種」とみなして密かに保護観察しているにすぎない。
③宇宙人がごく少数であるか、あるいは地球環境に適合できないため、地球人の目につかない場所(例えば深海とか地下とか月面など)に隠れて生きている。
のいずれかになろう。
まず、①が正しいとすると、もうかなりの数のなりすまし宇宙人がいる可能性が高い。そんな中、毎日のように大勢の人が事故や事件に巻き込まれて、手術や解剖を受けていることを考えると、そんな異常な事例が発見されたというニュースは聞かないので、①はかなり怪しげである。それに、何よりもそれだけ高度な技術を持つ宇宙人が、わざわざ暑苦しい人間の着ぐるみを身に付けて地球人の格好をしていなければならない理由がよくわからない。SF映画でよくあるような高度な兵器を使って一気に侵略した方が手っ取り早い。
次いで、②の保護観察ケースであるが、これはわれわれが渡り鳥の足に発信器を付けてその生態を調査するのに似ている。高度な宇宙人にとっては、人類はほとんど虫けら同然の雑種に過ぎず、誘拐されて密かに発信器を埋め込まれて…、というUFO誘拐事件をよく耳にする。これは正直、筆者にも確たる反証はない。ただ、もし宇宙人がはるかに高度であるのならば、わざわざ隠れてやるようなことでもないような気がする。見つかっても反抗されたり攻撃されたりするような懸念がないからである。
最後に、③については肯定も否定もしない。可能性としては全くゼロではないからである。映画「ET」の事例がこれに当たるが、結局最後は見つかってしまう。「File2 宇宙人は敵対的か友好的か」でも記したとおり、いずれの場合にしても、宇宙人がすでに地球に到来していれば、敵対的か友好的かにかかわらず、何がしかの接触は絶対あるはずで、それがないのはやはりまだ到来していないと考える方が自然である。
(追記)
このテーマにつき、古代宇宙人についてどう考えるのかというご質問をいただいておりますので、筆者の私見を追加したいと思います。
古代宇宙人とは、文明がまだ発達していない大昔に宇宙人が地球に到来し、高度な技術を伝え、人々はそれを神として崇め奉るようになったという類の話が多い。具体的には、エジプトのピラミッド、マヤの天文学、ナスカの地上絵、その他多くの洞窟壁画など、当時の文明水準では不可能と思われる遺跡がどうやって作られたのかを語る際に宇宙人の仕業として説明されることが多い。
しかし、筆者はその大半がノストラムダムスの大予言と同じで、さしたる根拠もなく拡大解釈によってこじつけの理屈を並べているようにしか見えない。
①本文でも述べたが、壁画などに描かれている宇宙人はやはり2本の手と2本の足がある人間の形をしているが、何万光年ものかなたからやってくる宇宙人が我々と同じような姿形をしていると考えること自体が浅慮である。
②仮に、古代宇宙人が地球に到来していたとしたら、なぜ立ち去ったのかという大きな疑問が残る。我々は、しばしば地球ほど生命が住むのに適した環境はないと言う。であるならば、宇宙人にとっても地球は居心地がいいはずであり、去らなければならない理由がよくわからない。それとも宇宙人が住むには地球環境は厳しすぎたのであろうか。
③どのような高度な遺跡もほとんどが石で出来ており、金属でできた高度な建物や機械の片鱗すら出土していない。宇宙人は、全く痕跡を残さず大掃除をしてから地球を立ち去ったのであろうか。それにしても、もし宇宙人が短いながらも地球に滞在したのが事実なら、なにがしかの忘れ物はあるはずであり、全く何もないというのはおかしい。
④古代宇宙人が地球に技術を伝えたという説が正しいとするなら、何万光年も旅をしてきた割には、大したものを残してないなという気がする。摩天楼のような高層ビル群もなければ、飛行機、自動車、パソコンもない。ただバカでかい石の塊だけを残したということになる。それとも地球人にはそんな技術を教える価値すらないと判断したのであろうか。
いろいろとケチを付けてみたが、やはり論理的におかしいものはおかしい。古代宇宙人という考え方は、考古学的に説明が難しいモノに対して、宇宙人という安直な逃げ道を示しただけに過ぎないように思える。




