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File47 平均ほど当てにならない数字はない

「平均」、一見便利なように見えるこの数字は、存外当てにならない。あるクラスの平均体重が50キロといった場合、60キロあるあなたは、自分はかなり重い方だと思うであろう。でも実際には、70キロの人と30キロの人が大勢いて平均が50キロになっているかもしれない。これなら、60キロでも決して重いとはいえない。

ただ、現実には人の体重のような自然の法則に従うものは概ね正規分布に従うとされている。正規分布とは、体重を重い人から順番に並べていって、その人数をグラフにすると、グラフの形が左右対称のきれいな釣鐘のような形になるものをいう。これは平均近くに多くの人がいて、平均から遠くなるほど人数が少なくなることを意味している。だから、直感的に60キロだから重い方だと判断した人の考え方は、あながち間違いとは言えない。

ところが、これが体重ではなく、テストの平均点だとこうはゆかなくなる。例えば、平均点が50点のテストで60点取った人は、喜んでいいのかがっかりしなきゃいけないのかさっぱり分からない。自分が実際にはクラスの中でどの辺りにいるのかを知るためには、点数の散らばり具合が分からなければならないのだ。

そのため、学力テストの結果判断には実際の点数以外に、「偏差値」という指標も使われることになる。偏差値は、皆さんが学生時代に何度となく苦しめられた数字なので改めて説明する必要もないと思うが、要は平均を50として点数の偏り具合(これを標準偏差という)を加味して計算し直した指標である。先ほどの体重のように、70点の人と30点の人が多くいるようなテストの場合、60点の人はあまり上位とは言えないので、必ずしも喜んでいられない。

この他にも、社会的な指標を見ると、平均が当てにならない数字はもっともっと出てくる。例えば、日本の全世帯の平均貯蓄額。これは約1400万円あると言われているが、俺の家にはそんなにないよと言う人が圧倒的に多いのではないかと思う。それもそのはずで、世の中には一人で何億円も貯蓄のある人がいて、この人たちが全体の平均を押し上げているのである。だから、こういう場合は、平均値ではなく最頻値を見ないと正しい判断ができない。最頻値、すなわち最も頻度の多い値は、一世帯当たり200万円から300万円辺りになる。これなら、実感に近いと感じる人が多いのではなかろうか。

信頼性が高いはずの消費者物価も、細かく見るとかなりいい加減である。毎日のようにデフレだの、物価が上がらないのといった報道が繰り返されているが、ガソリンや野菜は値上がりしているし、庶民の実感とはかなり違っている。消費者物価は、いろいろな消費財の価格を加重平均して作られる。つまり品目ごとに異なる比重を掛けて平均するのである。毎日食べるお米と、滅多に買い換えしないテレビとを同じ割合で計算すると統計がおかしくなるので、こうした比重を掛けるのである。

消費者物価にはテレビやパソコンといった家電製品の価格も含まれており、何とパソコンのモデルチェンジがあると物価が下がるのである。それまで10万円していた旧型パソコンが、新型モデルの登場によって5万円に下がると、統計上は50%も物価が下がったと計算される。こんなメチャクチャな数字が平均の中に含まれているため、物価は上がっていないという判断になる。何かごまかされたような気分だ。

平均は便利なようで、時と場合によっては、まったく当てにならない数字になるのである。どうしても納得がゆかない時は、自分で本当の姿を調べることだ。


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