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File29 臨死体験と死後の世界

これほど多くの本やテレビで取り上げられてきたテーマは他にはないであろう。ただ、このテーマに関する議論や科学的検証はほぼ出尽くした感がある。

まず、臨死体験については、死を直前に控えた人の脳内における幻覚ということでほぼ決着した。臨死体験とは、大きな事故や病気で実際に死にかけた人が、蘇生した後に意識がなかった間に見た夢を語るという設定が多い。大抵は、きれいなお花畑を歩いていた、眩い白い光を見ていた、何とも言えないいい気持ちを感じていた、という類の話が多い。これは脳内麻薬の作用によるものと考えられる。「File3 なぜ人は遊園地に行きたがる」で明らかにした通り、人は大きなストレスや恐怖を感じた時、生体防御反応としてドーパミンやセロトニンといった脳内物質が分泌される。これが一種の麻薬のような快感効果をもたらすのである。

死という人生最大の局面に直面した人の脳の中では、その恐怖と苦痛を回避するため大量の脳内麻薬が分泌されていると考えられる。その結果、人は臨死体験をするのである。実際、死を看取った家族からは、「仏様のように穏やかな死に顔だった」、「苦しむこともなく眠るように逝った」といった言葉をよく聞く。これは、死に逝く人の臨死体験の結果であり、決して死者が仏様になるからではない。

一方、事故や事件でほぼ即死に近い状態で死んだ人の顔には凄い形相の苦悶の後が残されている。これは、十分な量の脳内麻薬が分泌される前に臨終を迎えてしまったことを表す。それほど急な死に方だったということで、こういう人は死の直前まで、死の恐怖と苦痛を味わって逝ったことになる。本当に気の毒である。

さて、この臨死体験が終わると人はいよいよ死後の世界に入るわけだが、結論から言うと死後の世界は存在しない。人の意識や感情はすべて、脳内における物理的反応や化学物質による刺激で起きている。人が死んで、火葬に付されれば、当然人の脳も灰になるわけだから、意識も感情も完全に消える。

でも、体から抜け出た霊魂が存在し、それが様々な形で霊界から現実の世界に戻ってくるという人もいる。この霊魂なるものの正体は、厳密にいえば人を生かしていたエネルギーのことである。これは、「File16 心霊写真のウソホント」でも述べた通り、生きている人にはエネルギーがある。だから生きている人の体は温かい。人が死ねば冷たくなってゆくが、これは人の体がエネルギーを失うからである。

しかし、物理学にはエネルギー保存の法則というものがある。つまりエネルギーは形を変えるが消えてなくなることはなく、永久に保存されるというものである。現実には、死んだ人のエネルギーは徐々に拡散して室内へと広がり薄まってゆく。それは、ごくわずかだが、室温を上昇させる効果がある。

このエネルギーが、まずはありえないと思うが、ごくごくまれにその部屋の中の磁気や電気エネルギーと反応して集積・増幅されたりすると、発光現象や振動現象が起きないとも限らない。たまたまこうした現象を目撃してしまった人が、あたかも死後の世界が存在し、霊魂が死体から離脱したかのように語り継いでしまったと考えられる。

しかし、当然のことながら、エネルギーには意識も感情も感覚もない。ましてや何らかの意図をもって人に災いをもたらすことなどありえない。死後の世界など存在しないのである。だから皆さん命は大切にしましょう。


さらに詳しく知りたい方は、File99とFile100「仏教と物理学の奇妙な関係(1)(2)」をご参照ください。ガリレオ的に死後の世界が何を意味するのかを簡単に説明しておきました。


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