File17 全く勉強せずにテストで何点取れるか
全く虫のいい話であるが、知っておいて損のないお話です。但し、4者択一テストの場合で、記述式テストには適用不可です。
条件は1問1点、全部で100問、全て四択の単答、内容は全く勉強したことのない科目。さて、このテストの場合、全くデタラメに問題文も読まずに回答した場合、果たして何点取れるであろうか。正解は25点(4分の1の確率)、多少のずれがあるとしても22点から28点くらいにはなる。つまり、このテストでは最初から25点の下駄を履かせてもらっていると考えると気分的にだいぶ楽になる。
次に要求されるのは、テストの内容に関する知識ではなく「国語力」である。その基本原則は「全部肯定・全部否定は誤り、部分肯定・部分否定は正しい」である。もちろんすべてが必ずそうなるとは限らないが、そのように考える方が正答に近づきやすくなる。これは出題者の心理を利用したものである。
例えば、正しい答えを選ばせる問題で、「○○○は必ず△△になる」(全部肯定)、「○○○になることは絶対ない」(全部否定)という文章はまず×をつけておいて間違いない。出題者も神様ではないので、ひょっとすると自分の知らないところで例外があるかもしれない、よってそれを正解とする自信はないとする心理が働く。するとこの問題文は×が正解となる。4択テストの問題文をよく読むと、必ずこうした選択肢が一つはある。消去法でこれを取り除けば、残りは3択となる。
次に、「○○○となる場合もある」(部分肯定)、「○○○とならないこともある」(部分否定)という文章はまず○であると考えてよい。これは、幅広く可能性を認めるもので、出題者の心理として安心して○にできる表現である。よって、正しい答えを選ばせる問題であれば、これが正解、誤った答えを選ばせる問題であれば消去法でこれを取り除く。
たとえば、「赤信号では必ず止まらなければならない」(全部肯定)という問題文。一見正しそうに見えるが、常時左折可の標識がある場合と、矢印の出る補助信号がある場合は、信号が赤でも進める。よってこの答えは×である。正解は「赤信号でも止まらなくてよい場合がある」(部分否定)となる。
こうした作業を繰り返すと、4択テストを3択、2択まで持ち込むことができる。33点あるいは50点が視野に入ってくるのである。
これだけの作業をしても、どうしても正解が見つけられない場合、最後の手段として「2番目、3番目の原則」を使う手がある。これは、すでに受験の鉄則として知られているので改めて説明する必要もないとは思うが、要は1番目と4番目は正解にしにくいという出題者の心理を言っている。実際、択一試験の正答分布を見ても3番目が最も多く、1番目が最も少ない。
1番目に正答を出してしまうと、賢い受験者は2番目以降の問題文を読まずに回答してしまう可能性がある。せっかく作った出題が最後まで読まれずに正解されてしまうのは、出題者としても面白くないし、何より受験者を惑わせるという択一試験の意味が薄れる。よって1番目は正答にしにくい。
4番目はむしろ受検者側の心理に着目している。特に長い問題文の場合で、どれが正答かよくわからないという時、受験者は最後に読んだ4番目が正答のように感じる。これは、先に読んだ問題文の内容を忘れてしまうという効果の他に、他の問題文を今一度精査する時間もないという時、いわばエイヤ―で4番目に○をつけるというものである。出題者としてはエイヤ―で正解にたどりつかれてはたまらないので、結局本物の正答は2番目か3番目にしのばせるということになるのである。
さて、この方法により実際に全く見たこともない某検定試験の過去問に挑戦してみたところ、さすがに合格レベルには届かなかったが、100点満点中30点台後半であった。
(追記)
このお話について、最近のマークシート方式のテストでは正答分布の偏りをなくすために、問題作成時に一度シャッフル(かき混ぜること)するというご指摘がありました。実際にマークシート試験の正答分布を調べましたら、確かに正答は1から4までほぼ均等になっていました。
よって、「2番目・3番目の原則」はすでに時代遅れということになります。伏してお詫びし訂正いたします。本文は敢えてそのままとさせていただきます。
なお、「全部肯定・全部否定、部分肯定・部分否定の原則」の方は、今も有効と思っています。




