9.「キモカワいい」
なんか、ラバ虐めの話になってきたゾ?大丈夫か?作者。
僕は佑衣さんのカバンにぶら下がって、学校へ行った。
佑衣さんは同じ制服の子たちと挨拶したり、肯いたりしてる。
(なんだ、とことん無視ってわけでもないなあ)
よかった。安心できる材料が一つはあった。
人形になった僕を見た佑衣さんの反応は、
「なにこれ、きもい」
魔来子さんは苦笑してる。
「妙にリアルって言うか、変に似てるのが気持ち悪い。ほんとにこんなの、学校に持って行かなきゃダメなの?」
佑衣さんの指先が僕の身体を撫で回す。
(ひ、ひぃい、く、くすぐったい!)
必死で声をこらえる。
「盗聴マイクとか無線機とか仕込んであると思ったけど、そんな感触ないわねえ。ほんとにただの人形みたい」
「そう言ったでしょう?お嬢様、私が一晩で作った力作です。是非、お持ち下さい」
「魔来子さんがそう言うのなら・・・わかったわ」
魔来子さんは微笑む。
その微笑みの半分は、僕に向けられたもののようだった。
☆ ☆ ☆
授業態度は可か不可かって、とこかな?
授業の大半、彼女はぼーっと窓の外を見ていた。
でも、当てられた時は、さっと答えを出していた。しかもほとんど正解のようだった。
先生も分かっているのだろう、あまり彼女のことは気にしていないみたいだった。
だから、余計に授業には力入らないのかなあ。
要するに、「なんで、こんな授業受けなきゃなんないの?」みたいな態度。
学校に来ていない間にたまった答案用紙も返してもらっていたけど、ほとんど満点のようだった。
それを見ても、ニコリともしない佑衣さんというのは・・・・。
「佑衣、学校出てきたの、ひさしぶりじゃない?」
一人の生徒が声をかけてきた。
そう言えば、休み時間でも佑衣さんは外を見てた。
そんな態度からか、おしゃべりする友達も見ていなかったけど、
この子はそんな佑衣さんの壁をスルーしてきた。
「そう、あたし、病弱だから、いつも病気なの」
(そ、そうなんですか?佑衣さん)
そう思って、彼女の顔を見ると、少し微笑んでいる。
彼女なりのうち解けた冗談らしい。
案の定、言われた友達は笑い転げている。
「やだ、佑衣ったら。そんなわけないのに。どっかの公園にフけて、モク吸ってたんでしょ」
(よ、よく知ってる。結構仲のいい友達なんだ)
言われた佑衣さんはただ、微笑んでいるだけ。
「佑衣、その人形、なに?」
その子が僕を見つけたようだ。
「うん、うちのメイドさん手作り人形。
新しく来た召使いがモデルなんだけど、妙に似てて気持ち悪いの、見る?」
佑衣さんがその子の手に僕を渡す。
「うわあ、ホント、キモイけど、変に可愛いとこもあるし、キモカワいいっての?」
その子の手が僕を引っ張り回す。
そ、そんなに引っ張ると、千切れちゃう!
「可愛いかあ?そう思えないけどね。でも世界にこれ1個だけと思うと、ちょっと貴重品かな、なんてね」
「ね、佑衣、あたしの人形と交換しない?携帯につけるやつ。
あたしのは市販品で、そんな手作りの価値なんか無いけど、仲良しの記念にはなるよね。どう?」
(え・・・僕、交換されちゃうの?ちょっと待ってよ)
佑衣さんは思案顔。
「うん・・・・・・いいよ」
(ええ?ちょっと、作戦が違う!魔来子さん、どうしよおー!?)
「あ・・・・・やっぱり、止めとく」
そう言うと、佑衣さんは僕を取り返してくれた。
(よかった・・・・僕の悲鳴がわかったんだろうか?)
「せっかく、うちのメイドさんが一生懸命作ったのを黙って人にあげちゃうってのも、
すっごく失礼な気がするから、彼女の了解を得てからならね。ごめんね」
佑衣さんの説明に友達も肯いてくれた。
佑衣さんは取り返した僕を、掌の中に置いていた。
そっと両手を開くと、佑衣さんは僕を見つめていた。じっと。
彼女の真剣なまなざしに、なんだかドキドキしてくる。
「可愛いかなあ・・・・・絶対にキモカワいいだよね・・・・・・ちょっとは可愛いけどさ。
本物も、もうちょっと格好良かったらいいのにね・・・・・」
佑衣さんは微笑みながら呟く。
(それって・・・・・・どういうことなんでしょうか?佑衣さん)
声に出して聞くことは出来なかった。
そして、それからはもう一つの苦しみが僕に加わった。
お腹が痛い。
原因も分かってる。下腹部の排出要求が高まってきている。
おしっ○したい!
朝からしてないんだ。我慢にも限界がある。
意識すると尿意が酷くなるので、極力気を逸らそうとするけれど、それにも限度がある。
(佑衣さんがどっかにいって、その隙に輪っかを外してトイレに駆け込む・・・)
そんな甘い目論見もアッサリかわされる。
佑衣さんは僕を彼女の左手に結わえてしまった。
取られると思ったわけでもないだろうに、左手の虜になった僕には、どうしようもない。
(ここで漏らしたら、人形が暖かい液体を出したら、いくらなんでも変だって気が付くだろう。
いや、問答無用で彼女のナイフがきらめくような気がする。そうなったら、僕の首が・・・・)
(早く帰りましょう!)
僕は念を彼女に強く送る。
その甲斐あってか、ようやく下校時間になったとき、僕がホッと一息ついたとき、
「ちょっとつきあってよ」