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魔法少女と呼ばないで  作者: どり
第2章 私立四葉野黒大場学園(しりつよつばのくろおばがくえん)
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8.お人形

 訓練室は板の間の部屋で、雑多にいろんな物が置いてある。

その中央で、佑衣さんは制服、魔来子さんはメイド姿で立っていた。

いや、立っているじゃなくて、戦っていた。


 佑衣さんの右足の蹴りが飛ぶ。

軽くいなされる、と反対の脚で、後ろ回し蹴り。

ギリギリのところで、魔来子さんの顔をかすめる。

 すこしだけ体勢を崩した魔来子さんの足下に、佑衣さんが脚払い。

魔来子さんは軽いステップで、それをかわしていく。


 佑衣さんが正拳を打ち出す。

難なくかわす魔来子さん。

今度は突き出した拳を、そのまま横に。

甲の側で、ヒットを狙う。

かろうじてかわすものの、少し頬をかすっている。

魔来子さんの顔に笑みが浮かんだ。

佑衣さんの方は真剣そのものだ。


 踏み込んでくる佑衣さん。

魔来子さんは少しだけバックステップを踏むと、佑衣さんの伸びきった右手を引く。

ちょっと前にバランスを崩す、そこへ魔来子さんが低い姿勢で踏み込む。

両手の掌底で、佑衣さんの腹部を打つ。


「う、ぐ!」


 たまらず崩れ落ちた佑衣さんに声をかける。


「お嬢様、上達されましたわね。あそこで裏拳打ちがくるとは思っていませんでした」


「だめ、魔来子さんの掌底、相変わらず破壊力抜群ね」


 そう言いながら、二人は僕に気が付くと、近づいてきた。

激しい運動で、二人とも汗びっしょりだ。


「お嬢様、くれぐれも、頭は冷静に。くれぐれも暴走させないように」


「はい、わかっております」


 そう言いながら佑衣さんはタオルを頭からかぶっている。


「本当に、わかっておられるんだか・・・・」


 魔来子さんは微笑む。


 二人の会話に僕が口を挟む。


「朝から、こんな訓練をしてるんですか」


「いつ、いかなる条件でも戦闘能力を維持する必要がありますので」


 でも、どうして、二人とも、制服なんですか?


「たしかに、柔道着とか体操着とかありますけど、それで日常生活を送られる方、みえますかしら」


 い、いや、柔道着で生活してたら、変な人ですね。


「お嬢様で言えば、制服、私ですとこのメイド服が一番よく着る服装です。

つまり、戦闘の可能性が一番高い姿での、訓練、というだけのことですが」


 はあ、まあ確かにそのとおりなんでしょうけど、

スカートの短い佑衣さんはいざ知らず、ロングスカートの魔来子さんは、動きにくいんでしょうね。


「あたしへのハンディキャップということよ」


 佑衣さんは汗を拭きながら言う。

汗を吸った白い制服は、すっかり透けていて、彼女の下着を透かしている。

その姿は、色っぽくて、美しい。僕はすっかり見とれていた。

 いきなり胸ぐらを捕まれる。


「また、スケベモード全開であたしを見てるだろ?半殺しだって、前に言わなかったっけ?覚えが悪い?」


 お、覚えてますよ。頭が忘れたって、ストマックが覚えてます。

膝を見るたびに、胃が痙攣するんですから・・・・

 魔来子さんが割って入ってくれた。


「お嬢様、シャワーとお着替えを。朝食の用意もすぐにできますから」


「はい・・」


 佑衣さんは僕を放すと、訓練室を出ていった。


「ふう・・・お嬢様もまあ・・・・・」


 魔来子さんはそう呟くと、僕に向かって、


「改めまして、おはようございます。昨日の話、覚えてらっしゃいますか?」


 あー、佑衣さんの学校での様子を見てきて欲しい、っていうのでしたね。


「はい、それでございますが、ラバ様は変身できますよね?」


 あー、まあたいていの物になら多分・・

「はい」


「大体、これぐらいの大きさになっていただいて、お嬢様に持っていただくとして。

それで一日、お嬢様の様子を見てきていただきたいのですが」


 そう言いながら、魔来子さんが示したのは、親指と人差し指を一杯に広げた長さ。


「お人形と言うことにすれば、お嬢様もそんなに警戒しないかと・・・」


「その大きさの人形って事ですか・・・・・」


「人形ですから、しゃべるとばれてしまいます。

そうそう、言葉を発したら、魔法が解ける、ってのはどうですか?」


 な、なんか、楽しそうにみえるんですけど。魔来子さん、なんかたくらんでませんか?

「とりあえず、ちょっとやってみますよ」


 僕は呪文を唱える。魔法波長が高まり、黄色い光が全身を包むと・・・

目の前の巨大な魔来子さんがしゃがみ込んできて、小人サイズの僕を手に取った。


「はい、私のイメージどおりの出来上がりですわ。これに、持ちやすいように・・・」


 そう言いながら、金属製の輪をカチッと僕の首に嵌める。その輪には長い紐がついている。


「もし、この状態で元のサイズに戻るようなことがあれば、どうなるのか、わかりますよねえ?」


 (え?・・・・元の大きさだと、その輪は僕の首に食い込んできて・・・・

 え、ええ?えええっ!?し、死んじゃいますよ!?)


 思わず、声を出しそうになって、慌てて黙り込む。


「絶対に声を出さないように一生懸命に頑張ってくださいね。

そうそう、本体がラバ様だってわかったら、お嬢様のお怒りも大変でしょうから、ばれないようにお願いします。ではラバ様をお嬢様にお渡ししますから」


(ちょっ、ちょっと、魔来子さーん!あんた、やっぱり怖い人だーーー!!(泣))



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