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魔法少女と呼ばないで  作者: どり
第9章 宴
49/50

49.別れ

 「別れてないじゃない!」

 はい、ふりです。(いや、その・・・・)

 こっちの世界との別れとか・・・・

 まあ、とにかく、ハッピーエンドを。(汗)

「今まで私を育ててくれてありがとう。わがままな娘で大変だったと思うけど、とっても感謝しています。これからはこちらの国と人を育てていってください。魔来子さん、あなたならきっとやり遂げることができます」


 佑衣さんはペコンと頭を下げる。

上げた顔に張り付いている笑みはぎこちない。


「ラバ。とても短かったけど、すごく楽しかった。生きているって実感を感じさせてくれたこと、お礼言います。あっちの世界だとそんな感じは全然ないと思うけど、それでもいい思い出として、大切にしていきます。これからは姉さんを支えて、村を、みんなを復興してください。

 ありがとう、魔来子さん、ありがとう、ラバ。そして、そして・・・・・・」

 無理していた佑衣さんがとうとう泣き始める。


「さよなら、ラバ。魔来子さん。好きでした。大好きでした」


「待ってよ!佑衣さん。僕は佑衣さんを護る。佑衣さんについていく。村のことは村の人に任せる。僕は村の人を信頼してる。でも、佑衣さんのことは放置できない。だから、姉さん、悪いけど、村には帰らない!」

 僕は叫んだ。


「ラバ、そんなのダメだよ・・・」


「うるさい、佑衣さん。僕は決めたんだ。だから、黙ってて」


 佑衣さんは口を閉じると、僕の手を握った。

僕も握り返す。

魔来子さんが何か言いかけたとき、人混みの中から女性が出てくる。


「はいはい、こういう時は年長の者の言うことを聞くものよ」


 ・・母さま。

こうして見ると、姉さまと母さまは似ている。

柔らかそうな金髪。すべてを見通していそうな澄んだ瞳。

そして、とおりのよい高い声。


「ヤーコブ、あなたの気持ちはわかりました。この娘、佑衣様の手をしっかりと握っていなさいね。決して離すんじゃありませんよ」

 そう言うと、にっこり微笑む。


「父さまと同じで、優柔不断でなかなかはっきり言わない子だから。佑衣様のこと、好きなんでしょう?」

 な、なんてことを!?

顔がいきなり熱くなるのがわかる。


「え、い、いや、あの、好きとかじゃなくて、護りたいって思うだけで、契約だし・・」


「契約はさっき解除したわ!」

 佑衣さんは僕を睨んでる。


「それでも、ラバ、あたしを護りたいって、言ってくれたじゃない。どうして護りたいって言ったの?ウソなの?」


 いえ、ウソじゃないです。その気持ちは本当です。でも、それは・・・


「ほら、言わないでしょう?父さまもなかなか言わない人でね。言わせるまでに苦労しましたわ。変なとこだけ強情で。女の子にとっては、一番大切な言葉なのにねえ」


「言いなさいよ、ラバ、言うの。あたしを護りたい理由を聞かせなさい。でなきゃ、護らせてあげない」


 ああ、そうきますか。笑顔が見たい、そばにいたい・・・・でもそれって、やっぱり・・・・


「父さまそっくりの優柔不断男は放置して、我が娘、アンジェリーヌ。魔来子様っていったほうがいいかしら。すごく突っ張っててどうしてかしらって思ってたんですけど、伯爵様にそうしろって言われたのかしら」


「い、いえ。そのようなことは全くありません・・」


「そうね。ようやくその理由がわかったわ。あなたも娘と別れるのが辛くて仕方がないのね」

 魔来子さんがうろたえるのがわかった。


「このままだと佑衣様と別れなきゃいけないことがわかっているから、自分の気持ちを殺して、為政者に徹しようってことなんでしょう?

 でもね、魔来子様。自分の娘の母も勤まらないような人が、国の母なんて勤まるかしら?あなたもまだまだ修行が足りないようですね。佑衣様が十分大きくなるまで、あちらでご一緒に修行に励んではいかがですか?」


「母さま・・・・」


「それまでの間、こちらのことはこちらの人にお任せしてはどうですか?あなた一人が頑張るものではないでしょう?それに、もう”門”は逃亡者の逃げ道ではなくなったのですよ。あちらとこちらの往来になったのですから、いつでも自由に通過できるのではないですか?」


「そうよ、魔来子さん!」

 佑衣さんが明るい声。


「お昼間だけ、こっちに仕事に来て、他の時間はあっちで生活してもいいじゃないの!」


「さ、魔来子様、あなたの可愛い娘さんがこんなに呼んでいるのですよ。あなたが本当にしたいことはなんですの?亡き旦那様の後を継いで、王国を発展させることですか?それとも、かわいい娘さんたちと暮らすことですか?」

 母さまと魔来子さんは微笑みあう。


「魔来子さん、魔来子さん!!」


 その中に佑衣さんが飛び込む。

魔来子さんにしがみついている。きっと昔からそうしていたんだろう。

魔来子さんも抱きしめている。


「答えは出ましたわ。母さま、有り難うございます」


「さて、優柔不断さんの返事はあったのかしら?」


「ラバ!いい加減にしてよね!どうしても口に出来ないっていうのなら、半殺しがいい?ぶん殴られるのがいい?それとも蹴り?さあ、どれか選びなさいよ!!」


 ・・・神様、僕はどれを選んだらいいんでしょうか?



さて、次回の予告。


 長らくご愛顧いただきましたお話、とうとう最終回となります。

 次回: 第9章 宴 第50話 後日談

 刮目して待てっ!

 (サブタイトルは変更する可能性があります。ご容赦下さい)



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