48.決意
50話使ってきて、結局書きたかったのはここからの3話分ですね。
まあ、どんな話しでもクライマックスとエンディングを見れば、
だいたい内容は分かりますから、当たり前の話ですけど。
そう言うわけで、あと、3話です。よろしくです!
「ラバは、ラバは魔来子さんの話を聞いて、何にも思わなかったの?」
「え・・・・みんなのための平和な国作りという、すばらしい展望としか思わなかったけど・・・」
「こんなこと言っちゃいけないのはわかってる。自分でも、子供だって思う。けど、言わないでいられない。あたしはこれからはひとりぼっちになっちゃうんだよ!」
佑衣さんは泣きながら訴える。
え、あ・・・・そうか。
僕と魔来子さんは古里に戻ることになるけど、佑衣さんは違う。
そして、その時は佑衣さんは一人になってしまう。
「ラバの嘘つき。魔法少女になったら願い事が叶うって言ったじゃない。それは確かに、そんなこと本当になるなんて信じていなかったわよ。でも、もし、叶うのなら、パパとママに戻ってきて欲しいって、最初は思ったの。
でも今は違う。戦いが終わって、平和な村が戻ってきたら、魔来子さんとラバとあたし、三人であっちに戻っていって、あの家で、前みたいに暮らせたらいいな。それぐらいなら叶うだろうなって、思ってたの。三人で楽しく毎日を送りたいって・・・
でも、魔来子さんは東の国の王女様、ラバは村の執政者ですって!?それじゃあ、一緒に帰っていけないじゃない!このままこっちにいるってこと?あたしは一人で帰っていけっていうの?
でも帰っていった先ではあたし一人なのよ。たった一人で生活することになるの。起きて、学校へ行って、ご飯食べて、寝る生活をたった一人でするのよ。あの、一人だけの犬小屋で・・・・」
あ、だから佑衣さんはあの立派な家を犬小屋って言ってたのか。
どんなに立派な犬小屋でも、たいてい犬は一匹で暮らしているからだ。
「どうしていつもあたしはひとりぼっちになっちゃうの?小さな時からそうだった。パパもママもみんなして、あたしを無視するの。気がつけばいつもひとりぼっち」
僕の目の前にいるのは小さな女の子。
お人形を引き裂きながら泣いじゃくっている女の子だ。
・・・どうして、誰もいないの?パパやママはどこへいったの?どうして会いに来てくれないの?
「教えてよ、ラバ。どうしてみんなの願いは叶うのに、あたしの願いは叶えられないの?どうしようもない魔法しか使えないから?結局、魔法少女じゃなかったから?魔法少女だなんて、大嫌い!もう、言わないで!ほっといて!あたし、ひとりで生きてくしかないんだから!!」
☆ ☆ ☆ ☆
佑衣さんはひとしきり泣きじゃくった。
「わかってるわよ。こんなの、あたしのわがままだってこと。魔来子さんもラバもあたしなんかより、この国のことや村のことの方が大切だもん。それはわかっているけど、でも、寂しくて悲しい。とっても・・・・」
僕は佑衣さんを抱きしめた。
「ちょ、ちょっとラバ・・・・」
いつもなら、言葉より先に手か足が飛んでくるのに・・・・
そう思いながら、僕はさらに強く抱きしめる。
「佑衣さん、僕は約束したよね。佑衣さんを護るって。今でもその約束は有効だよ。僕は佑衣さんを護る。護りたい」
「ラバ・・・・」
そう言うと、佑衣さんは僕にしがみつく。
「ラバは、間抜けだけど、ほんとに優しいんだよね・・・よかった。ラバと知り合えて、ほんと、よかったと思う。ありがとう、ラバ・・・」
「佑衣さん、僕は君のそばにいる。これからもずっとそばにいる。村のことなんかどうでもいい。佑衣さんの方が大切だ。村は僕じゃなくても誰かがやれる。でも、佑衣さんは僕が支えないとダメなんだ」
佑衣さんは僕の言葉で一層強くしがみつく。
「あたしはもっと大人にならないといけないんだ。そのための試練なんだと思うよ。うん、きっとそう。だから、あたし、頑張る。ラバ、本当に有り難う」
佑衣さんは僕から離れる。
「戻ろう。魔来子さんにもラバにもきっちり言わなきゃいけないことがある」
僕や姉さんに言わなければいけない言葉?
僕は首を傾げながらも、佑衣さんについて、会場に戻る。
☆ ☆ ☆ ☆
魔来子さんの就任宣言が終わって、祝賀パーティに映っていた。
魔来子さんは盟主の椅子に腰掛けて、いろんな人たちからの挨拶を受けている。
僕と佑衣さんが魔来子さんに近づいていくと、自然と人並みが左右に分かれる。
・・・あれが魔法少女の佑衣様だ・・・
そんなつぶやきが聞こえてくる。
「どちらへいらしていたのですか?佑衣様」
「ラバと・・ヤーコブといろいろ話して、励ましてくれたから、魔来子さんに言わなくちゃって」
「はい、それは何でございましょう?」
佑衣さんは大きく息を吸い込んだ。
「多那香 魔来子さん。私、阿坂居 佑衣はあなたをクビにします!」
それを聞いて、魔来子さんはあっけにとられた顔をした。
佑衣さんは僕の方を向いて、さらに叫ぶ。
「ヤーコブ・ラバ・オッフェンバッフ!あなたもクビにします!お二人とも、これからはご自分の好きなことをしてください!村でもどこへでもお好きなところへ出かけていってください。私のことは気にしなくていいから。これが私からお二人に言いたかったことです!」
さて、次回の予告。
ああ、トリオもいよいよ終わりですか。寂しいなあ・・・
次回: 第9章 宴 第49話 別れ
刮目して待てっ!
(サブタイトルは変更する可能性があります。ご容赦下さい)