47.戴冠式
ああ、あんまり戴冠式じゃなかったなあ。
最初のイメージは王冠を頂く式典を書こうと思ったんだけど、
一体誰から王冠をいただくの?って考えたら、
あっさり、その後からになってしまいました。
魔来子さんの演説が長いですけど、勘弁してください。
書きたいのは、佑衣さんの心情ですから・・・
大広間は眩いばかりの輝きに満ちていた。
家臣たちも、南の国の施設たちも、村の人たちもいっぱい入っている。
入りきらない人たちは中庭に集まっている。
みんな、お目当ては新しい国王、王女さまだ。
奥の扉が開いて、魔来子さんが現れる。
白い長いドレス。
金色の髪の毛は形良く結わえられ、そのてっぺんには銀色のティアラ。
その姿に、会場は低いどよめきが沸く。
「私、アンジェリーヌ・エバ・フェルゼンシュタインは今宵、今は亡き伯爵の地位と権利、そして責任を引き継ぎ、国民の皆さんの期待と希望に対して、最大限の努力を払いますことを、誓います」
魔来子さんは微笑む。
その姿は国中に映し出されている。
その声とともにあるいは街角に、あるいは巨大化した空中に立って、
国の人すべてが見ることができるように、魔法が動員されている。
それは村でも同様。
「また東の国以外の国とも、共栄共存を図り、すべての皆さんが幸福と平和を感じることができるように努力する所存です。特に今回、大きな被害を被った村と南の国に対しては、最大の誠意を払いたいと思います。
私はこの国の出身ではございません。村の出身でございます」
また、おおという声が上がる。
「ですから、村が壊滅的な被害を被ったことに関しては、本当に心が痛みます。しかし、過去をどれだけ悔いても、また謝ったとしても前には進みません。これからの未来を、どのようにして二つの国が、その国民が築いていくか、それが大切だと考えております」
魔来子さんは周りを見渡す。
その視線は魔法を通じて、すべての人々に語りかけているかのようだ。
「それは南の国に対しても同様でございます。どうか、私を信頼してください。東の国、南の国、そして村の人々が仲良く、平和に暮らしていけること、それが私の何よりの願いでございます。
実は私は、こちらの世界ではなく、あちらの世界で苦労して育ちました」
三度目のどよめき。今度はあちこちで、魔法少女の言葉が飛び交う。
「村にいるときに伯爵に追われることにより、あちらの世界へ飛び込みました。あちらの世界では、人の怖さ、世間の恐ろしさを思い知りました。そして同時に、人の優しさ、ふれあいのすばらしさを知る経験を得ました。
こちらへ帰ってくる時に、帰る理由を考えました。逃げなければならなかった理由も知りとうございました。それ以上に私のような不幸な子供を作りたくない、そのような世の中を作ることができないでしょうか。そう思ってこちらへまいりました。こちらでは、伯爵が愛ゆえに私を追ったことを知りました。私は伯爵を許しました。そして、その希望どおりに妻を名乗る決意をいたしました」
魔来子さんは悲しげに微笑む。
「どうか、今回の戦いをお許し下さい。例え、伯爵の名を使った狼藉者の仕業であろうと、伯爵の目が行き届かなかった事は事実です。その妻の責任として、復興と、発展に心から努力いたします」
深々とお辞儀をする魔来子さん。
静まりかえっていた会場は次第に拍手に包まれていった。
僕も佑衣さんもクロエも拍手をしていた。
「有り難うございます。私は王女としてこの城にて執政を執り行います。その第一歩として、南の国との和平協定を調印いたしました。東の国の軍隊は復旧事業を行いつつ、ここに引き返してくることになりました。その土地の人たちと仲良く、深い信頼を得られるように命を出したところです」
魔来子さんの話は続いていた。
でも、僕は佑衣さんの様子が気になりだしていた。
さっきまで明るく微笑んでいた佑衣さんが、なぜか不安げな表情を浮かべていたからだ。
(なにか、気になることでも?敵か?)
僕は魔法の感覚を伸ばしてみる。
いや、敵はいない。生き残った村の人たちが幾重にも魔法の感覚で取り囲んでいるし、衛兵たちもいる。どこにも入り込めるような余地がない。
(じゃあ、あっちに帰ることでも考えているのかな?学校が不安なのかな?)
僕は佑衣さんの不安を全然見当違いに考えていた。
「村の出身であるが故に、村の全責任も私が負います。村の執政代理に我が弟、ヤーコブ・ラバ・オッフェンバッフを指名いたします。今回の騒動でも、村の命を受けて、あちらの世界に飛び込み、魔法少女を連れて帰るなど、その勇敢さを行動にて証明しております」
クロエは僕を見て、ニッコリ微笑んだ。
僕もクロエに微笑みを返す。
「・・・そんなの、そんなのって・・・・・」
佑衣さんのつぶやきに慌てて振り向く。
佑衣さんは真っ青になっていた。
「佑衣さん!どうしたの?」
僕の問いかけに、一瞬僕の顔を見た佑衣さんは、すぐに踵を返すと小走りで会場を後にする。
僕は慌てて佑衣さんの後を追った。
一体彼女に何があったんだろう?
その途中で、壇上の魔来子さんと目があった。
なぜか、一瞬、魔来子さんは悲しそうな表情を浮かべたような気がした。
「佑衣さん、佑衣さん、待ってよ!」
僕は走りながら佑衣さんに呼びかける。
前を走る佑衣さんの長い黒髪が揺れている。
周りの人たちは彼女を避ける。
あの娘が魔法少女だ、とのつぶやきと共に。
ようやく、佑衣さんに追いついた僕は肩に手をかけて振り向かせた。
「佑衣さん、どうしたの?せっかくの魔来子さんの話の途中・・・・」
そこまで言いかけたとき、僕の言葉は止まった。
佑衣さんは、大粒の涙をこぼしていた。
さて、次回の予告。
佑衣さん、どうしたっていうの!?それはね・・・・
次回: 第9章 宴 第48話 決意
刮目して待てっ!
(サブタイトルは変更する可能性があります。ご容赦下さい)