32.虜囚
佑衣さん・・・
あんた、魔来子さんから骨の髄まで、自立をたたき込まれたんだろうねえ・・・
強い。
でも、そんな強い子が、ラバには、ふと素顔を見せるんだよねえ・・
かわいい。書いてて楽しい娘です。佑衣は・・・
”皆さんを助けることが出来ない。”
魔来子さんのその発言に、みんなは押し黙った。
あまりに意外な発言だったのだ。
・・・魔法少女であるにもかかわらず、我々の救世主でない・・・?
「どうして・・・・助けに来てくれたのではないのですか?」
「本当に、魔法少女なのですか?あなた達は!?」
みんなは口々に叫ぶ。
僕は両手をあげて、みんなに黙ってもらった。
「彼女たちは本当に魔法少女です。それはこの僕が保証します。でも、いくら魔法少女でも、その力にはもちろん限界があるのです。それをこれから説明します」
魔来子さんが説明を始める。
「私たちは、あちらの世界から、カガクという魔法を持ってこちらへ参りました。それは恐るべき力で、東の国の”竜”空中軍を壊滅させました。また、”獅子”地上軍一個中隊も撃破しました。魔法少女の力を、東の国の兵士達は骨の髄にまで、とことん思い知らされたのです」
みんなはおおっと歓声を上げる。
「しかし、この魔法もそれで尽きてしまいました。今、私たちが持っている魔法は、残りほんのわずかでしかありません。皆さんとあまり大差がない状態なのです」
みんなは下を向いた。
ようやく、僕たちの状況が分かってきたのだ。
「でも、でも、何か希望はないのですか?」
母さまの発言・・・
「あります!」
僕は断言した。みんなの目が一斉に僕を見る。
「目に見えるような力はもうないかも知れません。でも、彼女たちは魔法少女です。希望はあります。奇跡を起こす力があるはずなのです。皆さんの協力があれば、きっと奇跡が起きます。起こせます!」
☆ ☆ ☆ ☆
ここが一番大切なところということで、三人の意見は一致した。
昨日の夜、クロエが寝入った後で、僕たちは相談をした。
「どうやって、村の人たちを説得しましょうか?」
魔来子さんの悩みは切実な物だった。
武器も弾薬もなくした僕たちは、もはや何もないのと同じだった。
あるのは護身用の多少の武器と、僕と魔来子さんの魔法ぐらい。
それすら、お城に行けば取り上げられるだろうし、
僕や魔来子さんの魔法はオネクターブより強いかどうかわからない。
そんな僕たちがいくら、魔法少女と声たかだかに言ってみたところで、信用されるだろうか。
どうやって、村人の信頼を得て、彼らの脱出に結びつけるのか。
「ウソやハッタリでは、すぐにばれてしまいます。そうなったら、絶対に信頼を得ることはできません」
僕たちは肯いた。
「正直に現状を説明し、尚かつ希望を持たせる。皆さんのお力をお借りして、全員で脱出する。これしかありません。この希望を持たせることが出来るのは、村の人の仲間である、ラバ様だけです。よそ者の私たちではできません。ですから、ラバ様、皆様の説得をお願いします」
☆ ☆ ☆ ☆
みんなは僕の話を聞いても、不安そうに囁きあっている。
魔来子さんが話し始める。
「これから私たちはこの城の秘密を暴きに行って参ります。私の直感は、この城には、何か、秘密があると言っております。
どういう訳か、伯爵は私たちに興味をお持ちのようです。これを利用できれば、この城の謎を解明することができると思います。その秘密や相手の隙をつくことが出来れば、ヤーコブ様の言う奇跡を起こすことが出来ると考えております。
どうか、皆さんのお力をお貸しください。一人一人が相手の隙をつく、なにかしら武器を用意する、そして時には闘う。そういう努力をして、みんなで力を合わせて脱出する、これしかありません。私たちの努力に皆さんのお力を、どうぞ、お貸し下さい。お願いします」
魔来子さんの発言を聞いても、みんなは押し黙っている。
仕方がないか、信頼を得るには時間がかかるものなのか・・・・・そう思った時だった。
今まで黙っていた佑衣さんが、すくっと立ち上がった。
「やるの、やらないの?」
単純な質問に、みんなが佑衣さんを見る。
「ここでこのまま死ぬの?それとも頑張って村に帰るの?」
みんなは顔を見合わせている。
「あたし、こういう他力本願な人たちって大嫌い。自分のしたいことは自分が努力して得るものじゃないの?あんた達、助けてっていうだけで、何か努力してる?神様が助けてくれるのは、精一杯努力した後でしかないのよ。
ラバ、こんな連中、助けたって、何にもなりゃしない。さっさとあっちの世界に帰った方がいいみたいだわ!」
「なんて事を!」
「やるしかないじゃないか」
「そうだ、こんな娘っ子にバカにされて黙ってられるか!」
みんなは口々に言い始めた。
クロエの父さまが出てくる。
「みんなの気持ちは決まった。脱出できるよう俺たちも頑張る。あんた達も頑張ってくれ。これでいいか、佑衣・・・魔法少女、佑衣」
佑衣さんはニコッと笑うと、父さまと握手、そして僕にウインクした。
佑衣さん、あんた、ハッタリと駆け引きは天才的じゃないか?
魔来子さんがどうやって、教え込んだのか、聞きたいよ。
もう、僕は諦めかけていたんだから・・・・
さて、次回の予告。
一度でいい、こんな豪勢な食事をしてみたい!そう思うのは作者だけか?
次回: 第6章 城 第33話 晩餐
刮目して待てっ!
(サブタイトルは変更の可能性があります。ご了承下さい)




