29.お城へ行こう!
今回のお話し。
口先とハッタリと魔法でどこまで通じるのか。
これだけだと、どっかの政治と同じような気がする?
ハッタリで政治できるものなら、やってくださいよ。
・・・・
た、楽しんでください!(汗)
先頭のクロエが持っているのは、太い枝に白い布を付けた旗。
その後ろに魔来子さんがついている。
さらにその後ろに佑衣さんと僕。
なんか、佑衣さんは言いたげなんだけど、僕が話しかけようとするとそっぽを向く。
なんなんだ?
「ね、魔来子様。この白い旗って何の意味なんですか?」
「あっちの世界ではね、これで降伏の合図なんですよ」
「へえー、ヤーコブ様、こっちでの降伏の合図って、何ですか?」
「あー・・・・・・何だろうねえ?」
僕は頭をかく。
「ラバは何にも知らないんだから」
佑衣さん、ねえ、本当に僕はなにかしましたか?
何を怒っているんですか?
○ ○ ○
敵の部隊は村のあった場所にあることは、丘の上から見てわかっている。
そこに向かって四人はどんどん坂を下っていった。
昨日の激戦地には、まだくすぶっている残骸も、銃弾の薬莢も転がっていた。
焦げくさい臭い。かすみ網の破片。全部が戦いの余韻だ。
そこでのっそりと現れたのが敵の兵士。
土を掘る鍬に似た道具を抱えている。
これから穴を掘って残骸を片づけるつもりなのか。
「おい、そこのお前!」
立ち止まった佑衣さんが声をあげた。
声をかけられた兵士は辺りをキョロキョロ見回している。
まるで声をかけられたのが自分でないことを確認したいみたいだ。
「そこの、キョロキョロしてる、お前だ!」
ふたたび声をあげる佑衣さん。
その兵士は諦めたように、こっちを向く。
「お、オラに声をかけたのは、お前か?」
「他に誰がいる。耳が遠いのか、それとも頭が悪いのか?」
佑衣さんがにらみつけている。
「あー、両方とも悪いだよ。ついでに、顔も悪いだよ」
「それは認める・・・じゃない!おのれ、私を魔法少女と知っての狼藉か!!」
「ま、魔法少女・・・・知ってる。でも、そんな小娘なのか?」
「見せてやる。今、ここで魔法少女の力、見せてやる!雷、落ちろ!!」
何も起きない、起こるはずがない。
ゴン!
思いっきり、足を踏まれた。魔来子さんが睨んでる。
あ、ごめん。僕が悪いのか・・
佑衣さんが急に言うから、タイミング、外しちゃったよ。
お願い、もう一回やってくれない?
「あー、ちょっと呪文間違えたから、もう一回ね。・・・・雷よ、落ちろ!」
その声にあわせて僕はこっそり魔法を発動する。
巨大な雷が、背後の大木に落ちる。
轟音と、木の裂ける音に思わず兵士は身をすくめる。
「す、すげえな・・・やっぱ、魔法少女なんだな・・・で、その魔法少女がオラに何の用なんだ?」
「降伏してやるから、フェルゼンシュタインのお城に連れて行け!」
あ、あの、佑衣さん。それって降伏した者の言い方とは違うような気がするんですけど・・・
「いいんですか?これで・・・」
「いいじゃありませんか。おもしろそうだから、これでやってみましょうよ」
小声で魔来子さんが答える。くすくす笑いながら。
魔来子さんて、物事をおもしろいの物差しで決める人だったんだ。
あ・・・もしかして、あの人形の件も、おもしろそうだってことでやったんですか!?
「今まで、そうやって決めてきたんですか?」
「あら、今頃お気づきになったんですの?おっほほほほほ」
勝てない。魔来子さんには絶対に勝てない。
佑衣さんの方も勝負がつきそうだった。
「どっちだ!連れて行くのか、行かないのか!?」
「じょ、上司に相談するから、待ってくれ・・」
「ダメだ、お前が決めろ!すぐ決めろ!今すぐ決断しろ!!」
「もう、わめかないでくれ・・わかったよ。言うとおりにするよ・・」
なんと、佑衣さんの言うとおりになっていた。
竜が用意されて、それに載ってお城に行くことになりそうだ。
「いい、降伏してあげるんだから、丁寧に扱いなさい!粗相があったら、降伏しないわよ!わかった!?」
「わかった。わかったからおとなしく、こいつの背に載ってくれ。後は城までちゃんと案内するから」
完全に腰が引けている相手。
どうでもいいから、早く消えてくれ、そんな感じが伝わってくる。
丁寧に僕と佑衣さん、クロエと魔来子さんがそれぞれ竜の背中にのせられる。
そして竜は一気に大空へ舞い上がった。
目の下には、一面の森の緑。その中でどんどん遠ざかる茶色い村。
また必ずここに帰ってくるから、そう僕は誓う。
強い風で佑衣さんの長い髪の毛が舞う。
甘い香りが僕の腕の中の佑衣さんから漂ってくる。
(いい匂いだな・・・・・)
佑衣さんが僕にもたれかかってくる。
「ラバ・・・ちょっと疲れた。休んでいい?」
「うん。佑衣さん頑張ってるから、お城に着くまで僕が護ってるよ」
「ダメよ、それじゃあ・・・お城についても、その後も、ちゃんと護ってよね」
「うん」
なんか今、佑衣さん、気になるようなこと言ったような・・・気のせいかな・・?
佑衣さんは静かな寝息をたて始めた。
あっちの竜の背中じゃあ、ぎゃあぎゃあ騒がしい。
「なんで、クロエがヤーコブ様と一緒ではないんですか?あっちがいい!」
「まあまあ、クロエ様は私がお嫌いですか?」
「そんなことないけど・・・・やっぱりヤーコブ様~!」
ぼ、僕は・・・ヤーコブよりラバの方が慣れちゃったのかなあ。
不謹慎みたいだけど、ずっとこのまま佑衣さんを腕の中に置いておきたいな。
ごめんね、クロエ・・・
さて、次回の予告。
フェルゼンシュタイン伯爵の城へ乗り込む一行。さあ、そこで見るものは!?
次回: 第6章 城 第30話 謁見
刮目して待てっ!
(サブタイトルは変更の可能性があります。ご了承下さい)
予告編・・なんかおもしろいぞ。(笑)