26.大魔法使い・・・か?
少女の名前、クロエ・レ・フィユ。
クロエは『ダフニスとクロエ』から。
一応、オッフェンバッハと関係のある名曲。
レ・フィユはフランス語で少女かな?自信なし。
第二外国語はドイツ語だったんで・・・(汗)
朝が来た。
僕たちは交代で、少女の看護、入り口の見張り、睡眠を取った。
でも、僕はよく眠れなかった。
昨夜の魔来子さんの質問が頭にこびりついている。
「これからどのようになさいますか?
当初の目標、村の確認と村人の確認は最低限果たしました。村は消えてしまいました。この娘以外の村人も不明。門はたぶん、敵兵に押さえられているでしょう。私ならそうします。つまり、帰る道もないということです。武器、弾薬は底をつきました。食料も残り少ないです。補給がありません。時間がたてば立つだけ、こっちが不利になります。
さらに、どこに行くにしても、さらにあの娘というけが人も付いてきます。まさか、ここに残しておく気はないでしょう。我々は、これだけの不利な状況の中、逆転のための目標を見つけなければなりません」
佑衣さんが少女の横で目を覚ました。
寝ているときでさえ、手を握ったままにしている。
「看護の甲斐があって傷口はほとんど塞がっていますわ。今日一日あれば、元通りになると思います」
魔来子さんが傷を調べて言った。
佑衣さんは本当にうれしそうな笑顔だ。
そしてその子も目を覚ました。
不思議そうな顔で僕たちを見ている。
「お腹すいた・・・・」
最後の食料をガツガツ食っている。
仕方ございません、と魔来子さんは苦笑。
満足して落ち着いた彼女に、僕たちは話を聞いた。
その子の名前はクロエ。
やっぱり村の子だった。
軍勢が来たとき、たまたま山の方に来ていたらしい。
村に戻ろうとしたけど、怖くなって洞窟まで逃げてきたそうだ。
「でも村の近くまでは行ったんです。何人か捕まって、連れて行かれるのを見たら、怖くなって・・・」
ま、待って!連れて行かれたのを見た?
「生き残っている村人たちがいるんだ!」
「はい、もちろん殺されたりした人もいっぱい見たのですが、捕まったりして連れて行かれた人も見ました。連れて行かれた人がまだ生きているかどうかわかりませんが・・・」
いや、それでも、生きている人がいるのなら、助けたい。
「いったいどこへ連れて行かれたのだろう」
「城と行っていたような気がします。どこの城かはわかりませんが・・・」
フェルゼンシュタイン伯爵の城。
きっとそうだ。東の国の領主。この軍勢のボス。そして、あのオネクターブの親分。
そこにみんなが捕まっている。
そこへ乗り込んでいって・・・・ダメだ。
カガクという魔法はもうネタ切れなんだ。武器も弾薬もない。
どうやって、乗り込んで、尚かつ勝利すればいいんだろう?
「あ、あの・・・・皆さんはどういう人なんですか?」
「あ、そういえばこっちの紹介をしてませんでしたね」
こちらは魔来子さん、すごくよく切れるメイドさん。
何でも良く知っていますから、聞いてください。
「いえ、そんな。知ってることしか知りませんから。ほほほ」
こっちが佑衣さん。ちょっと年上かな。お姉さんですね。
「ごめんね。あたしが傷つけちゃって・・・」
でも、一晩中看護してたのは佑衣さんですから。許してあげてください。
「はい、佑衣お姉さん。宜しくお願いします」
「かわいい!」
佑衣さんはぎゅうって抱きしめてる。
そして、僕は村の住民の、ヤーコブ・ラバ・オッフェンバッフです。
彼女の瞳が輝いた。
「オッフェンバッフの方なんですか!大魔法使いとお近づきになれるなんて・・・・光栄です」
え、あ、いやあ・・・・大魔法使いだなんて・・・・照れるなあ。
佑衣さんがグイッと僕の手を引っ張る。
「クロエ、ダメよ。騙されちゃあ。こいつは落ちこぼれ。学校へ行ってもろくに勉強しないで遊んでて、ろくな魔法も覚えてないバカよ」
クロエが僕の反対の手を引く。
「そんなことないです。オッフェンバッフの方はみんな、大魔法使いなんですから。もう、名門中の名門なんです。そんな方が魔法を使えないとかバカとかのはずないです」
クロエの瞳はもうキラキラ。
これって、もしかして、とても嬉しいけど、とても困ってしまう状況という事なんでしょうか?
魔来子さん、笑ってないで、何とかしてください!
予告編というのは、ふりだけすごくて、中身がなくていいんでしょ?(笑)
さて、次回の予告。
クロエが加わり賑やかな一行。しかしラバの胸には不安がよぎる!
次回:第27話 魔法の国の女子会
刮目して待てっ!
(サブタイトルは変更の可能性があります。ご了承下さい)
誰が待つもんかい・・・・