16.「魔法おばさん」と呼ばないで
あはははは、とりあえず前半終わり。
いよいよ、次回、門突入から、あっちの世界へ。
書いてても楽しいけど、読み返してもおもしろい。
完璧に作者の趣味に走ってます。(大笑
そうだった。僕は佑衣さんに雇われた身だった。
でも、さっき、どっか行っちゃえって言われたような気もするけど・・・
「そうか、あたし、雇い主だったんだ。なら・・・・・うん、わかった!」
佑衣さんの顔が輝いた。瞳が強気に輝いている。
「魔来子さん、出発の用意して。食料、水、生活必需品、着替え。3人分よ。
もちろん、携帯用の武器も医薬品も。想定は何日ぐらい?」
「2日間。延長しても3日間でございます。
それ以上では資材も尽きてきますし出直しを検討すべきかと思います。
そもそも、この土日でないと佑衣様の学校に差し障りが出ます」
魔来子さんがてきぱきと答える。
「ではそれでお願いします」
かしこまりましたと魔来子さんは部屋を出る。
にこやかな微笑みを残して。
ちょ、ちょっと佑衣さん。
僕は佑衣さんを連れて行くのに反対・・・・
「うっさい、ラバ。もう決めたの。
たとえ足手まといでも、一人で残るなんてやなの。
そもそもあたしよりあんたの方が弱っちいじゃん。
足手まといはあたしじゃなくて、あんたじゃないの?あんたが残る?」
ぼ、僕のふるさとだ!
村に、あっちの世界に僕が行かないでどうする?
いや、それより佑衣さんの身を守ることが大切なことであって、それをどうするか・・・
「あんたよ」
は?
「ラバ、あんたがあたしを護るの。ご主人様を護るのが、雇われたあんたのお仕事。
これならどう?なんか文句ある?」
そう言うと、佑衣さんはニコッと微笑んだ。
カワイイ。
いや、猫かぶってるだけなんだ。本性はもっと凶暴で、わがままで、勝手気ままで、
自由奔放で、泣き虫で、甘えん坊で、友達思いで、強気で、勝ち気で・・・・
うわあ、何言ってるんだ、オレ。なんか誉めてないか?
佑衣さんは僕を堕としにかかっている。
連れてっちゃダメだ。万が一護りきれなかったら、一生後悔する。
僕がくたばるのはかまわない。でも彼女がそんなことになったら、僕はどうしたらいい?
「ね、ラバ。あたしのこと、命がけで護ってくれるよね?だから行ってもいいんだよね?」
両手をキュッて握られた。
柔らかくて、温かくて・・・・・
佑衣さんの甘い香りまで一緒になって、僕に迫ってきた。
「・・・ハイ」
墜ちた。
佑衣さんは甘くない。
そんなことはとっくに知っていたつもり。
で、でも、さっきまでの佑衣さんを見てたら、豹変するなんて夢にも・・・・
「ラバ、あたしの荷物は全部持ってよね。足が痛くなったら、おんぶかだっこよね。
まずはあたしの命令には絶対服従。反論は無し!わかったわよね!!」
両手を握ったままの格好で、ああ、その口調はないでしょう・・・・
でも、こっちこそ、佑衣さんらしくて、いいかな。
僕はこっちの佑衣さんの方が、好きなのかも・・・・・
もしかして、好きなのか?僕は、佑衣さんが好きなのか!?
「ご主人様の話、聞いてるー?」
僕の人差し指を握って、目一杯力をこめる。
反った指の骨がミシミシいって・・・・・
「い、痛っ!聞いてます、聞いてます、なんでもききますっ!!」
わき出した涙で、微笑む佑衣さんが滲んで見えた。
なんて残酷な微笑みなんだ・・・・
☆ ☆ ☆ ☆
「ひとりぼっちになってしまうという考えで、頭がパニックになってましたから、
ご自分のスタンスというものを思い出させてあげただけですわ」
魔来子さんは事も無げに言う。
魔来子さんの一言で、佑衣さんがすっかり元に戻ったことを聞いた返事。
「さすがは、小さい頃からのお付き合いですね」
「お嬢様がどうすれば機嫌が直るのか、それとも悪くなるのか、
とことん勉強させていただきましたから。はい」
僕たちの前には背負子が3つ。
水や食料や医薬品の袋。衣類や寝袋の袋。そして武器や弾薬の袋。
「行動時間を長くとるために、明朝、夜明け直前に”門”に突入したいと思います。
お嬢様、ラバ様、今夜は休養をたっぷり取ってくださいませ」
ブルッ。震えが来た。いよいよ門をくぐるんだ。村に帰るんだ。
村はどうなっているんだろう。村のみんなはどうしているんだろう。
こんなに早く帰る日が来るなんて、思ってもいなかった。
伝説の魔法少女だって、魔来子さんがなって・・・・・・・・魔法少女?
うーん、少女っていうより、魔法おばさ・・・・ヤバッ!
「お、お姉さんです!魔法使いのお姉さん!!」
氷の微笑を浮かべた魔来子さんが僕を見つめている。
「お嬢様、どうやって、ラバ様、いたぶればよろしいでしょうか?」
このバカという表情を浮かべて、佑衣さんは僕を見てる。
「あばらの3本も折れば、少しは身にしみるんじゃない?」
「全部へし折るというのは、如何なものでしょうか」
あ、あんたなら、やりかねない!
ぶ、無事帰ってきたら、何本でも折って下さい!!
それまでは、ご勘弁をー!!
もしかすると、幕間劇を挟むかもしれません。
ちょっと悩み中。
っていっても、明日には決めないと。