11.人形昇天
なんか、おもらしの多い章になってしまいました。
お食事中の方、申し訳ありません。
って、そんな奴、いねーよ!
「ねえ、ラバ、やっぱりあたしって変だよね」
ここは家。部屋に帰った佑衣さんは着替えの最中。
机の上に置かれた僕に話しかけている。
小さくなった僕を人形だと信じ切っている。
で、でもね、佑衣さん、もう、僕は限界。
下腹部の痛みは限界。妙なプライドが最後の防波堤になっているだけ。
佑衣さんが目を離したら、何とかして、トイレに行きたい。
もう首のことなんかどうでもいい。とにかくトイレ。
でも、どういう訳か、佑衣さんは僕を離さない。
今だって、僕を正面から見つめながら囁いてくる。
「自分と友達を守りたいだけなのに、結局、その友達まで怖がらせてるなんて、あたし、何やってるんだろうね。だから、一人になっちゃうのかなあ。あたしって、何やっても駄目な子だよね・・・」
白い下着姿の佑衣さん。
くりっとした大きな瞳。愛らしい唇。可愛いな・・・・
僕に余裕があったら、いつまでもこうして見ていたい、そう思った。
でも、もう、ダメだ。イタイ・・・・・・
「なに、これ?」
佑衣さんが僕を手に取る。
ごめん、もう限界です・・・・
じわっと暖かいモノが下半身を濡らしてる。
佑衣さんの目に不審の影。
「あんた・・・・・人形じゃなくて、もしかしてホンモノ?」
佑衣さんの目がきつくなった。
「魔来子さん!」
佑衣さんの声に呼応するように、魔来子さんが現れる。
といっても、例の立体映像ってやつだ。半透明に光ってる。
「はい、お嬢様」
「ラバはどこよ?」
急な質問に面食らったようだ。取り繕った笑顔を浮かべる。
「え、ええっとお出かけかと思いますが・・・」
「すぐに来て、来なさい!」
「は、はい、お嬢様」
魔来子さんの映像が消える。
ああ、これがカガクなんだ。ホントの魔法なら、あそこからスッと現れるのに・・・・
パタパタっと音がして、魔来子さんが飛び込んできた。
「この人形、これ、何よ!」
「は、わ、私が作りました・・・」
「汗かいたり、おしっこ漏らしたりするように作ったの!?」
「は、はあ?」
佑衣さんの質問に魔来子さんも面食らっている。
「まさか、こいつ、本物のラバじゃないよね?」
「い、いえ、そのようなことは・・・」
もう、魔来子さんもしどろもどろ。
ぼくはもう佑衣さんのなすがまま。
「じゃあ、首引っこ抜いたって、いいわよね!」
佑衣さんがそう言い放って、僕の首に手をかけたのと、
魔来子さんがその手元に飛び込んできたのと、
僕が悲鳴を上げたのが、同時だったと思う。
そして、その直後、三人のど真ん中で魔法が解けた。
強烈な首の痛みでぼくは記憶がふっとんでいった・・・・・
☆ ☆ ☆
そうか、首の傷はそのときの・・・・
ドアにノックがあって、魔来子さんが入ってきた。
「お目覚めになられたのですね。よろしかったですわ」
手に持ってきたお茶とお菓子の用意を手早くおこなう。
「あの後、覚えがないでしょうけど、大変でしたのよ」
普通サイズに戻った僕は、佑衣さんにのしかかるように倒れ込んだそうだ。
もう、その時には首の輪っかは吹っ飛んでいたのだけれど、
瞬間的に首を締め付けられた僕は、気を失っていたらしい。
のしかかられた佑衣さんは、僕をはねのけようともがいていたけど、
すぐに自分の身体を濡らす生暖かい液体に気がついた。
「や、やだ、ラバ、い、いや、いやああーーーー!」
取り乱した彼女の悲鳴は最後には絶叫になっていたそうだ。
魔来子さんは気を失っている僕をシャワーできれいにして、
部屋に担ぎ込み、傷の手当てをしてくれたそうだ。
「お気に入りだったのに、この下着、気に入ってたのに・・・」
そのあいだ、放心状態の佑衣さんはそうつぶやいて座り込んでいたそうだ。
その佑衣さんをお風呂で必死にきれいにしたのだそうだ。
「もちろん、下着は全部処分になってしまいましたわ。
こんなことになった下着なんか、二度と見たくないとおっしゃいますので」
どうしてやろう、ラバの野郎、どうしてやろう、
佑衣さんはそう言っていたそうだ。
「お嬢様にはその後で、たっぷり謝っておきました。もう二度とこのようなことはいたしません。
ラバ様にもよく言い聞かせておきます。お嬢様のプライベートをのぞき見するようなことはさせません、と」
あ、あれ・・・?
なんか、僕が首謀者のようになっていませんか?
そ、そんな、それだと次、佑衣さんに会ったとき、僕は半殺し、いや地獄を見ることになるんじゃないですか?
「私、考えました」
な、何か、いい対策あるんですか?
「今度やるときは、是非おむつを着けていただければ、今回のような事態にはならずに・・・」
「絶対にやるもんかー!!」
せっかくの魔法の力をこんなことに二度と使わない!
こんな事のためにこっちの世界に来たんじゃない!
・・・佑衣さんの下着姿はちょっとうれしかったけど。
できることなら、もっとしっかり見ておきたかったな・・・・
えー、第2章の学園編、これにて。
有り難うございました。
引き続きまして、第3章「魔法力」をお送りいたします。
なにとぞ、引き続いてのご愛顧を。