1.「ダニは殺す」
初めて章管理というものを使ってみました。どこを書き込むと、どう反映されるのか、実際使ってみないとわからないものです。はは~、こうなるのかあ。
僕は倒れ込んでいた。もう、残された力はほとんどない。
最後の力は、残しておかなればならない。そこまで使ってしまったら、本当にもうおしまいだ。
後ろを振り向く。追っ手が来ている様子はない。
なんとか、門は塞がっているようだ。
でも完全に閉めることは出来ない。完全に閉めてしまったら、もう二度と開くことが出来なくなる。
いつかはまたこの門を使って、あっちの世界に帰っていかなければならない。
それに門に少し隙間があることで、あっちの世界の力が、ぼくに少しずつだけど、力を与えてくれている。
この力を蓄えていけば、一気に解放することが出来れば、もしかすると追っ手をやっつけることも出来るかも知れない。
でも今は、まず逃げること。
この近くで、身を隠して、そして最後の力を与えることが出来る少女を見つけることが出来れば・・・
ぼくはゆっくり立ち上がると、芝生を横切った。
これはたしか、”公園”と呼んでいる施設のようだ。
ちょうどいい具合に、門は茂みの影になって、人目に付かない位置になっていた。
有り難い。騒がれなくて済む。
もともと門は簡単に言えば、力場の環だ。
それなりの力の持ち主が見れば、光って見えるけれど、その力がなければ、風景のちょっとした歪みでしかない。まず気付かれることはない。
公園には人影はなかった。柱の上にあった時計を見る。短い針は11を差している。
あっちの世界とそんなに時差はないようだ。そうすると、今はお昼前というところだろう。
「あの子・・・」
やっと一人、長いすに腰掛けている少女を見つけた。
長い黒髪、白い服装。短めのスカート。
たしか、学生という階級に属している服装だったと思う。
僕に気が付いたのか、こっちを向いた。大きな瞳。無関心そうな様子。
さっと隠したのは何だろう。この刺激的な臭い・・・たしか、煙草とかいうものか。
このまま騒ぎ立てないで、僕の話を聞いてくれればいい。
そして力に同意してくれれば・・・
「あ、あの・・」
これだけしか言えなかった。次の瞬間、彼女は消えた。
いや、素早い動きに僕は全く付いていけなかった。
のど元に彼女の手が入る。そのまま、後ろに押し倒されて、芝生にたたきつけられた。
何が起きたのか、わからない。
ただ咳き込んでいるだけの僕を、彼女は踏みつけた。
「げ、っご、ごふっ」
腹をめいっぱい踏みつけられて悶絶する。
彼女は攻撃の手を休めない。右足の靴が僕ののど元にはいった。
両手で彼女の右足を掴むけど、力を込められて、首の骨が軋む。
「や、止めて・・・」
そう呻く、僕の耳に彼女の声が入った。
「ダニは殺す」
ダ、ダニ・・・・って、僕のことですか?
僕は彼女を見上げた。
すらりと伸びた右足の遙か上方で、相変わらず冷たい無表情な瞳で僕を見下ろしている。
思わず起きあがろうとした。
彼女の右足に力が入る。い、息ができない。
「お前、何者だ?」
僕の正体を、こっちの世界の住民ではないことを一目で見破るなんて、彼女こそ何者なんだ。
「な、なぜわかったんだ!?」
「そんなこと、誰だってわかるわよ。イヌともウサギともハムスターともつかない格好と大きさ、それでなおかつ日本語を操る動物なんて、絶対にいるはずないわ」
え?だって日本語じゃないと、通じないんでしょ?ここは。
それに愛玩動物の代表としてその三つから特徴的なポイントを合体させた、絶対の自信作なんですけど。
可愛らしい部分だけ持ってきて、合成させれば、ほら、すごく・・・・・・・
「・・・ね、かわいいでしょ?」
いきなり、彼女の脚が僕を蹴りつける。
「ぶふぐ!」
「バカは死ねばいいわ!」
彼女の脚がぼくの胃を直撃した。
「いくら可愛い部分って言ったって、合体すれば気持ち悪いだけよ!日本語しゃべっていいのは、人間だけ!
そんなこともわからないのなら、現代社会を生きてく資格ないわよ!」
彼女は思う存分、僕を蹴りつけた。
「もう一回聞くわよ。お前は何者?」
彼女はいつの間にか、右手にナイフを持っていた。それを僕の顔の前に突き出す。目が笑っていない。
「返事が気に入らない場合、即座にこれを突き立てるわよ。覚悟はいいわね?」
・・・いいわけないんですけど。
☆ ☆ ☆
あっちの世界から、たった今来たこと。
こっちの世界の情報が少なくて、愛玩動物の姿になっていれば怪しまれないで済むと思っていたこと。
いくつかの特徴を取り入れれば、もっといいんじゃないかなって・・(「バカ!」と一言だけ)
日本語は魔術道具の力で話せること。
こっちの世界では、魔法と呼ばれるような力があること。
でも、その力は今はほとんど使い果たしていること。
僕は彼女に説明した。
説明に納得したかどうかはよくわからないけれど、とりあえずナイフは刺さってこなかった。
「その姿になったっていったわね。他の姿にも変えられるの?」
「で、できます。けど、その力を使ったら、もう、本当に残りの力がなくなります。
そしたら、当分魔法は使えないし、その力を授けてやってもらうことも・・・・」
アワワ。まだそこまでしゃべるのは早いかも・・・・
「どうも変なこと、考えているみたいね。まあ、いいわ。とにかく、その変な姿を変えなさい。
人間の姿になって。日本語をしゃべる以上はそうしてよ。このままじゃ人目につくわ」
それは・・・彼女の言うとおりだと思った。僕は呟くように呪文を唱える。
身体に付けてある、いくつかの魔法道具が呪文に同調して、力を発揮する。
黄色い光がうっすらと全身を包む。その光が消えると、ぼくは普通の人間の姿になった。
「・・・あんた、ショタコン?それともコナン君好き?」
言われて、慌てて自分を見る。・・・これ、小学生?
身長も彼女より小さい。服装もそれに合わせたような半袖、半ズボン。・・・魔力が足りない!
もう本当にすっからかんだったんだ。普通サイズになるような呪文だったのに、力がそこまで及ばなかったんだ。
「まあいいわよ。さっきよりはまともよ。
じゃあ、ベンチででも座って、あんたの話、もう少し聞かせてくれる?」
ほっとして彼女の後ろを付いていこうとした。
「ぶっ!」
不意に彼女の右肘が僕の腹部に入った。苦い液体が口の中一杯になる。
「急にあたしの後ろに立たないで。反射的に防衛するから」
・・・そ、そうなんですか。って、あんたこそ、一体何者なんですか!?
ひょいと閃いた話がどんどん展開してしまうことがあります。これもそんな経緯でできてきたお話。閃きだけに最後までいけるかどうかわかりませんが、頑張ります。頑張らないと、佑衣に張っ倒される・・・
えっと、ダニ君(笑)の考えとしゃべりがごっちゃでわかりにくいとのご意見がありまして、ちょっと修正入れました。これでどうでしょうか。ご意見、感謝申し上げます。