「ひまわりの妖精たち」
ひまわり
「日葵畑の妖精たち」
「ヨウ、私はここよ!」ここは全国でも有名な向日葵畑であった。
向日葵畑で声がした。
「ヨウ、ここよ――ヨウ――」こうなってはどうしようもない。向日葵畑はどれだけ広いと思っているんだ!
ヨウとミウは、同じ会社、同じ部署、同じグループで働いていた。社内恋愛みたいなもの、この部署では皆が知っていた。部長としては、はらだだしいことであった、最近の若い者は無神経さにあきれていた。はっきり言って不愉快、嫌いな若者たちだ。ここは会社だぞ、イチャイチャにもほどがある。
市原恵一は、この会社の部長である。社内の風潮を乱す者たちを警戒している。社内恋愛など不愉快そのものだった。
ヨウは市原恵一の養子だ。なおさら腹が立つ。
さとみは、恵一の妻で、逆らうことのできない存在であり、市原家の女王様である。いつも神経をとがらせていた。
それは、この市原家の使命であったのである。
子供のいない、市原家では、代々養子を迎えるのが当たり前のようになっていた。そう、子供が作れない、作らないといったほうがいいのだろう、頭の上がらない恵一はさとみの奴隷みたいなものだった。さとみの言葉は、市原家の最も重要な神の言葉であり、主であり、市原の家系はいつの時代も妻が全体を管理する役割を持っていた。
たったひとりの養子であるヨウは、三歳の時にこの市原家に迎え入れられた。
ヨウのイチャイチャぶりはほんとにはらだたしくハラハラすることだった。このことはさとみに内緒であった。優秀な社員で通してある。今彼はこの会社の創設者の市原家の跡取りとなる存在だ。
「は~どうしたものか腹が立つ!」
「こんな男どうにもならんだろ」
これがヨウの存在であった。ヨウはそんなことどうでもよかった。何が市原家だ、何が社長だ、両親だとしても他人ではないか。
ヨウの仕事ぶりは最悪であった。仕事は一応係長なのだが、全く仕事をしない部下へ仕事は投げていた。最低の男である。確かに自分は悩んでいた。これからの決まっている将来。市原家という存在。本当の自分の親は何処にいるのか。もうこの世界に生きている意味などあるのか。生きすぎている。これからの将来はもう存在したくない。
ヨウにとってこれが本当の気持ちだった。
恋人のミウのことや・・・・
ヨウには秘密があった。
毎晩あなたたちのことは・・・
ヨウは、毎晩妖精たちと寝ていた。
夢の中の存在ではない、確かにこの目で見ている妖精たち。夢遊病?幻覚?
「俺は病気なのか?」ヨウは真剣に悩んでいた。とんでもないことであった。
養子が精神病なんて最悪ではないか。
妖精たちは美しかった。神からの天使なのか、それともこの市原家にとりついているお化け?
ヨウは夜がまちどうしかった。とても楽しい時間。嬉しい楽しい不思議な時間。夢だとしても、とてもリアルすぎる。
広い庭で踊り、空に向かって飛んで妖精たちと星に座り、流星に乗りそのスピードを楽しんだ。
ヨウが自分の部屋で眠る頃にはもう妖精たちは部屋の中で飛び跳ねている。
ヨウにだけ見えることらしいことは分かっていた。誰にもこの事は言っていない。もちろん市原家にも恋人ミウにも言っていない。おかしい、狂ったと思われるではないか。
ヨウは向日葵畑に来ていた。
陽が傾き夕陽の時間だ。大きな太陽が西の地上に沈みかけている。素晴らしい夕陽となった。夕陽はだんだんと黄色、オレンジ色、赤く染まっていった。
「向日葵たちは黄色い花びらを赤く染めている」
「ああ・・・妖精たち」ひとつひとつのたくさんの妖精が向日葵となって黄色い花びらを赤く染めていた。
「なんてことだ!」
「とても美しい・・・」
「ヨウ、私たちがあなたの心の向日葵よ」
「さあ、ここに来て」
ヨウは妖精たちのところへ飛んでいくと、そこに沈んだ。
妖精たち




